二時間目の社会――。 夢彦はぼうっとしながら授業を聞いていた。 科目は公民で、ちょうど憲法のところだった。 三権分立だの、議会制民主主義だの、教師は退屈なことばかりしゃべっていた。 夢彦は欠伸を押さえながら隣を見た。 ゆり子はまっすぐ黒板を見ていた。 真面目な顔でシャーペンを握り、ときどきノートに書きつけたりしている。 頭のいい子なんだろうな、と夢彦は思った。 きっと優等生なんだろう。 ふいにゆり子は夢彦のほうを向いた。 目が合った。 ゆり子はにこりと微笑んでみせた。 夢彦も微笑み返した。 やっぱりかわいいなあ、と夢彦は思った。 あの目、鼻、そして唇――とにかく、すべてがかわいいんだ。いたずらっぽくて、それ でいて潔癖で、でも、凄く魅力的で。 なんといったって、凄いボインだもんな。 夢彦はこっそりと横目でゆり子の胸を伺った。 セーラー服の胸は、今日もたっぷりとふくらみ、大きく迫り出していた。 いったい、どのくらいあるのだろう。 夢彦は思った。 弥生ちゃんよりも大きいよな。園田さんで八十六のDカップあったんだから、八十八の Eカップぐらいはあるんじゃないだろうか。きっと、大きいんだろうな。手にあまるぐら いあるんだろうな。一度、そんなのをさわってみたこいよな。この手でぎゅうっと揉んで 揉んで、あのかわいい顔が乱れるのを見たいよなあ。喘いだら、きっとかわいい声を出す に違いない。ああ、もう一度――一度でなくとも何度でも――ゆり子ちゃんのおっぱいを さわりたい……。 夢彦は次第にむずむずしてきた。 欲望が太腿の間でどんどんと張り詰め、たまらなくなってきた。 セックスのこと、オッパイのこと、アソコのことが次々と頭のなかをパノラマのよう駆 けめぐり、激しく流れた。 「鏡、三権分立はだれが唱えたかわかるか」 教師に当てられて、はじかれたように夢彦は立ち上がった。 「フランスの有名な人なんだがな、知らないか」 夢彦は天井を仰いだ。 どこかで聞いたような記憶はあった。 いつもなら思い出せそうな気もした。 だが、夢彦は三権分立を唱えた十九世紀の偉大なフランス人のことを考えてはいなかっ た。 白衣の下にやわらかい乳房を持った美しい校医のことを、夢彦は考えていた。