『 巨乳学園 』



 保健室にはだれもいなかった。

 真っ白のベッドが並んでいるだけで、校医の姿はなかった。

「ちぇっ、せっかく夢彦に会わせてやろうと思ってたのに。肝心なときにいないんだから

困るよなあ」

 と俊樹は言った。

「美人なのか?」

「え? へへ、それは会ってからのお楽しみ」

 笑いながら俊樹は救急箱の解体をはじめた。オキシドールや赤チン、絆創膏、ガーゼを

取り出して、すりむいた頬にオキシドールをしみ込ませた綿を当てた。

「慣れないことをすると、怪我するわよ」

 突然、大人の女の声が響いた。

 保健室のドアが開いて、若い白衣の女の人が立っていた。

 目が大きく、睫毛が長く伸びていた。

 少し大きめの艶のいい唇が微笑んでいた。

 額の真ん中で髪を分けていた。

 その髪が、目と目の間にふたつ、垂れかかっていた。

 きれいな人だな、と夢彦は思って視線を下げたとたん、心を踊らせた。

 白衣の胸の部分はゆるやかに盛り上がっていたのだ。しかも、白衣の胸元は大きくはだ

けていて、そこから黒いシャツが覗いていた。

「真紀先生……」

 俊樹はピンセットで綿をつまんだまま白衣の先生を見上げた。

「なにしてるの、室町君」

「いや、友達が怪我をしたんで、その、治療をと思いまして」

「そう、偉いわねえ。でも、先生散らかしてほしいって頼んだ覚えはないんだけど」

 俊樹は救急箱の回りを見た。

 胃薬や頭痛の鎮静剤、湿布が乱暴に放ったままになっている。

「やっぱり薬にも散歩させてやらなきゃかわいそうだと思いまして」

「それはそれはご苦労さん。でも、もうなにもしなくてもいいわよ。あとは先生がするか

ら。もう朝のショートホームルームも始まっちゃうし。それに、ほんとうのところ、どう

すればいいのかわからないんでしょう?」

「へへ、正直なところ、皆目。オキシドールだけでもつけときゃなんとかなるかなって感

じです」

「消毒だけしても意味がないのよ。ほら、早く教室に行った行った」

「じゃあ、先生お願いします」

 俊樹は夢彦に片目をつぶってみせると、ドアを閉めていった。

「さてと」

 白衣の先生は夢彦のほうを振り返った。

「見慣れない顔ね。どうしたの」

「いえ、少し」

「少しじゃわからないわよ。喧嘩でもしたの?」

「そんなところです」

「いけない子ね」

 真紀先生はオキシドールを頬の傷口にあてがった。

「担任の先生にわかったら、怒られるわよ。だれなの、先生」

「水原先生です」

「じゃあ、D組? ひょっとして、あなた新しく来たって子?」

「そうです」

「どうりで見慣れないと思ったのね。うちの学校にこんなかわいい子いないものね」

 真紀先生は微笑んだ。

「名前、なんていうの」

「鏡です」

「鏡なに?」

「夢彦です」

「かわいい名前ね。先生は平仮名で、のぞみっていうの」

 と真紀先生はオキシドールをしまいながら言った。

「それで、どこを怪我したの?」

「お腹と頭です」

「蹴られたの?」

「ええ」

「さては嶋田君かだれかとやったな」

「そうです」

「本気で嶋田君と喧嘩したの?」

 夢彦はうなずいた。

「よくする気になったわね。あの子、強いって噂なのよ」

「でも、気に入らないことを言ったんです」

「いいじゃない、放っておけば。あの子、一番のワルなんだから、一々反応してると損す

るわよ。ほら、お腹出して」

 夢彦は制服を脱ごうとしたが、思わずうめき声を上げた。

「なに声出してるの、男の子でしょう」

 真紀先生は笑いながら制服を脱がした。

 それからさらにTシャツも脱がした。

「べつに赤くはなっていないみたいだけど、こうすると痛い?」

 夢彦はうなずいた。

「ずいぶん蹴られたのね」

「膝を入れられたから」

「じゃあ、湿布ね。脇腹は痛くない?」

「痛いです」

「そっちのほうはあとね」

 真紀先生が湿布を貼っている間、夢彦はずっと白衣の間から覗く胸の谷間に視線をはわ

せていた。

 真紀先生は白衣のボタンを上から三つほど外していた。胸元の大きく開いた黒いシャツ

の下からは、白い肌とY字の深い胸の谷間が覗いていた。

 夢彦は首を伸ばして胸の谷間を覗き込んだ。

 おっきそうだな、と夢彦は思った。

 入ってきたときもそうだったけど、白衣を着ているのにふくらみがわかるもんな。ふつ

うはわからないもんなあ。

 夢彦は、少しでもいいからさわれたらなあと思った。あの胸の谷間に手を滑り込ませる

ることができたら、あのふくらみを両手に揉みしだくことができたら、どれほど気持ちい

いことだろう。

 夢彦は想像のなかで真紀先生の胸の谷間に手を忍び込ませた。真紀先生がうふんと体を

くねらせた。だめよ、鏡君。構わず夢彦は手をくねくねと動かした。すべすべとした質感

が広がった。すばらしく官能的にはりつめた乳房の感触が手に広がった。夢中で夢彦は真

紀先生のおっぱいをさわった。真紀先生は甘い喘ぎ声をあげた。夢彦はもう片方の手をス

カートのなかに滑らせた……。

 そのとたん、ズボンのなかがピンと動いた。

 ばか、と夢彦が思ったときには遅かった。

 ロケットの発射ボタンはすでに押されていた。

 ロケットは勢いよく跳ね上がり、ズボンを突き上げた。

「あら、元気ねえ」

 真紀先生は一瞬驚いたものの、すぐに笑顔を見せた。

「なに考えてたの」

「すみません」

「どうして謝るの? 男の子じゃない、当たり前のことでしょう? でも、覗くのなら、

もっとうまく覗かなきゃ、ねえ、鏡君。おじいさんに笑われるわよ」

 おじいさんだって?

 夢彦は真紀先生の顔を見た。

 おじいさんを知っているのだろうか。

「でも、手当てをしてもらっているのに、変なところを見るなんて、よくないことよねえ

。どうしようかしら」

 真紀先生はうれしそうに夢彦を見つめた。

「そのままじゃあ、すぐにも教室には戻れないしねえ」

 ショート・ホームルームの終わりを告げるベルが鳴った。

「授業も始まっちゃうし。いっそのこと、一時間目はお休みにしない?」

 夢彦は驚いて真紀先生を見た。

「その代わり、先生と、ね?」

 その瞳は大人の色をたたえて妖しげに輝いていた。

(以下、つづく)


次の頁に進む
前の頁に戻る
学園一覧に戻る
トップページに戻る