『 巨乳学園 』



 六時間目が終わると、夢彦はひとりで三年D組の教室を出た。

 肩から鞄をぶら下げながら、校舎を出た夢彦は西の空を見てため息をついた。

 ボインの子は、結局あれからまったく口を利いてくれなかった。

 夢彦のほうも見なかったし、目も合わそうとはしなかった。

 嫌われたのかもしれないなと夢彦は思った。

 ふと、ボインをつかんだときの、あのやわらかい感触が蘇った。

 結構弾力があって手のひらを押し返してきて気持ちよかったなあ。少しこりこりしてて

。あんなの、好きなようにもみもみできたら、気持ちいいだろうなあ。

 夢彦は首を振った。

 いやいや、そんなことを考えるのはよそう。あれがもとであの子とは気まずくなってし

まったのだ。明日会ったら謝ろう。

 そのときだった。

 ふいにだれかが背中に指を突き立てた。

「手を上げろ、撃つぞ」

 かわいらいし女の子の声がした。

 夢彦は手を上げて振り向いた。

 そこに、顎の線で短く髪を切りそろえた女の子が人指し指を向けて立っていた。

 あどけない童顔と裏腹に、セーラー服の胸が豊かに迫り出していた。

 ゆいだった。

 夢彦の叔父の娘で、一つ年下だ。

「びっくりしたでしょう」

 ゆいはにこにこしながら言った。

「だれかと思ったよ」

「だれだって思った?」

「んん……」

 夢彦は返事を濁して歩きだした。ゆいはすぐ横に並んだ。

「どうだった、はじめての日は」

「まあ、こんなものかな」

「こんなものかな、なんてえらそうなこと言っちゃって」

 夢彦は笑った。

「おもしろかった?」

「校長の話はつまらなかった」

「あの人、いつでもつまらないもん。全校集会のときだっていつも長話するし」

「ふうん」

「かわいい子はいた?」

「まあ、いたかな」

 夢彦は香川ゆり子のことを思い浮かべた。

「胸のおっきい子ばかりだから、夢ちゃんうれしいでしょう」

「ばか」

「うれしくないの?」

「聞かなくたってわかってるだろう」

 ゆいは笑って体をくっつけた。

「よせよ、おまえ誤解されるだろう」

「いいもん、誤解されたって。それに、どうせ夢ちゃんもてるようになるし」

「おれが?」

「うん。夢ちゃんみたいな優男はいないから」

「向こうじゃ全然もてなかったけどな」

「海陵の子って、みんな源氏の子に憧れてるところあるの」

「そんなものなのか」

「そんなものなのよ。だから、こうやってみんなをうらやましがらせてやるの」

 ゆいは腕をとってぴったりくっついた。

「よせよ、こんなとこ見られたらみんなにからかわれるよ」

「いいじゃない、話題の人になれて」

「おまえはいいかもしれないけど」

「いとこだって言えばおしまいでしょう」

「そりゃそうだけど」

「それとも、恋人だって言っちゃう?」

「ばか」

「でも、こうして歩くのはいやじゃないでしょう?」

 ゆいは夢彦に体を押しつけた。

 はりつめた胸のふくらみがぎゅっと腕に押しつけられた。

 背筋を撫でるような快感がこみ上げ、夢彦は思わずすくみ上がった。

 凄い、と夢彦は思った。

 でかい。

 いったいどのくらいあるというのだろう。小学生のときはまだふくらみはじめたという

ところだったのに、知らないうちにこんなに成長するなんて。

 夢彦はゆいの胸元を伺った。

 その視線がゆいの視線とぶつかった。

 ゆいはくすっと笑った。

 いたずらっぽい笑みを浮かべて、肩にしなだれかかった。

 だが、夢彦は、もうよせよとは言わなかった。

(以下、つづく)


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