鐘が鳴って水原先生が教室を出ていくと、夢彦は自分の席についた。 はじめに出会った、あのボインの子の隣だった。 香川という名札を胸につけていた。 夢彦は鞄のなかから教科書を取り出しながら、そっと横目でボインの子を伺った。 ボインの子がちらりと夢彦を見た。 夢彦は慌てて視線を外した。 それから夢彦はまたそっと胸を伺った。 セーラー服を着てはいたが、胸元ははっきりとわかるほど、豊かに盛り上がっていた。 「次、なんだかわかってる?」 ボインの子はいきなり顔を向けた。 「え、うん」 「国語じゃないよ。数学だよ」 「あ、うん」 ボインの子はくすっと笑った。 「これで二度目ね」 「そうだね」 「さっきはありがとう。わたし、別のクラスの人だと思っていたの」 「ぼくもだよ」 ボインの子は微笑んで、 「源氏から来たんだって? 遠いところから引っ越してきたのね。お父さんの仕事の都合 かなにか?」 「うん、まあ」 夢彦は言葉を濁して、逆に尋ねた。 「部活なにやってるの」 「わたし? 占い研究部」 「占い? 当たるの?」 「結構当たるのよ。文化祭のときやって好評なんだから」 「ふうん。それって、なんでも占えるの」 「なんでもってわけじゃないけど、だいたいは」 彼女の胸のサイズは占えるのだろうか、と夢彦は思った。 タロットのようなカード占いならできないかもしれないが、ダウジングならできるかも しれない。 ふと夢彦は、にやにやと笑っていたあの二人がボインの子の後ろから近づいてくるのに 気づいた。 一人は亀藤というらしい。身長は百六十五ぐらいだが、横にでかくて、体重は百キロぐ らいありそうな体格だ。饅頭を潰したような顔をしていて、顔中にニキビが吹き出ている。