◆旧古河庭園 99.10.20



 行って参りました、駒込。

 駒込というと、例の六義園?

 NOOOOH! あんなジョウログモだらけのところなんて、いや〜ん!

 二度にわたってお邪魔してきたのは、旧古河庭園で〜す。

 ほんまに広いんですよ。ならしてしまえは余裕でサッカーできる。野球もできる。真ん中に池があって、橋が3本ぐらい架かってるのかな? 松の向こうは高層ビルディングなのに、そこだけは圧倒的な緑

 土の薫りがいたします。

 木の薫りがいたします。

 滝壺から少し離れた高地、木々に取り囲まれた庵で生まれて初めて抹茶もいただいてきました。う〜ん、まろやか。マイルド&クリーミー。

 高級抹茶アイスクリームもすっ飛ぶなめらかさ。絶品です。

 茶室もなかなかのもの。

 あっま〜い砂糖菓子を御馳走になった後、お碗を口許に運びながら外を見やると、黄緑色に近い明るい鮮やかな緑が欄間の下から広がって、思わず目を瞠ります。庭石とカフェオレ色の土、そして緑の、鮮麗なコントラスト。奥行きのある木々の空間が、緑鮮やかな色彩とともに目を楽しませてくれます。

 将来は茶室もほしいなあ、などと思ってしまいました。


 さて。

 本館です。

 大正二年着手。六年建造。

 その時代の建築物としては、きわめて歴史的だそうです。五大財閥の一つだった古河財閥が作らせただけに、屋根瓦には銅がふんだんに使われています。オリンピックでもらうメダルとしてはあまりうれしくありませんが、屋根瓦としてはきわめて高価だとか。さすが足尾銅山で財を成しただけあります。 

 実はこの旧古河邸。

 日本政府の威信をかけて建設した
鹿鳴館と関係があるのです。

 鹿鳴館を設計した英国人ジョサイア・コンドル博士が手がけているんですねえ。庭は、英国風の洋館と薔薇の咲く洋式庭園だけですが。残りの日本庭園は京都の庭師、小川治兵衛。ちなみにここの蚊はきついです。ズボンの上からでも刺します。おのれ、こわっぱめ。

 
 525円を払って見学コースに参加すると、邸内を見せてくれます。

 しかも、きれいなショートカットのお姉さんのガイドつき。

 まずは一階からです。

 ホールからビリアード、書斎、そして客室へ。どの部屋のマントルピースもでかいです。マントルピース上の鏡も、大正時代のものが使われているのもあったりして驚かされます。エッジが入っているんですよ、あの頃のは。金額は普段の倍するらしいです。

 窓ガラスにも、大正時代のが残ってたりします。なぜか、ガラスの向こうを見ると像が曲がって見える。でも、それがブルジョアジーなんですねえ。参加者の大半を占める年輩の人とともにうなずいちゃったりします。

 小食堂を抜けて大食堂にやってまいりました。

 俄然、腰壁が高いです。首丈まであります。

 この部屋、広さが40畳あるんですよ。80年前は長〜いテーブルを置いて、狭い方の両端にすわって飯を食ったらしいのです。だから、大声で呼ばなくてもいいように、ちゃんと声が反響するよう、他の部屋より腰壁を高くしてるんですね。カカオ色の腰壁の上には紅いワインレッドのクロスが張られています。いささか濃い感じの壁ですね。

 ところが、天井は真っ白。

 うって変わった淡白さ、シンプルさです。円が3つ掘ってありますが、縁取りはザクロなどのフルーツなんですね。職人さんが天井に向かって直接掘ったそうな。贅沢です。目に見えないところでめちゃめちゃ贅沢してます。

 でも、もっとも贅沢なのは料理の受け取り口です。別に受取口があることが贅沢なんじゃないですよ。

 奥行きが40〜50センチ。

 使用人とお客様が顔を合わせないですむようにという配慮なのですが、なんと、この厚さが邸の壁の厚さなのです。

 4、50センチですよ、4、50センチ。

 大震災でもびくともしなかったというのがうなずけます。なんというごつい壁。これこそ贅沢のなかの贅沢です。

 しかも、天井までの高さ4メートル。

 馬鹿高いです。

 バレーの選手がジャンプしたって届きません。ソトマヨルも無理です。唯一越えられるのは、棒高跳びの選手です。

 窓も、ほぼ4メートルの高さから足元まで開いています。カーテンも4メートル近くあります。教会の中みたいに、はるか頭上から光が注ぎ込んでくるのです。

 あとでダージリンとフルーツケーキを摂りましたが、紅い椅子がふかふかで、ちょっと身を動かすだけで撥ねます。頭上から降り注ぐ光も心地よいです。

 オススメはマントルピースを背にしたテーブルです。

 窓の向こうにテーブルを置いたテラスが見えます。奥行きがあって実にグー。デートついでにここで喫茶というのも悪くありません。雰囲気出ます。

 
 二階に上りましょう。

 着物のご婦人用にゆるやかなスロープにしたという階段をあがります。

 最初に案内されたのが、仏壇の間。
 ここでブルジョアジーの究極の技を見ることが出来ます。襖が金箔なんですよ。

 残念ながら削れません。

 ただ、唖然。ただ、圧倒されるだけです。

 お客用の寝室は、邸玄関の上にあります。ここで窓の説明。使用人は多いときで50名ほどいたそうです。窓を閉めて鍵をかける、窓係なんてのもいたそうです。ドアボーイならぬウインドウガールです。

 スリッパを脱いで二十七畳の和室に入りましょう。

 真の間というそうです。

 和室のなかでは最高の格式だそうな。証拠に長押が3つあります。2つあるのが、次のランクの行の間だとか。のちのち夫妻の和室で拝むことができます。

 スリッパを履き直し、廊下を通って夫妻の寝室へ。

 ちょうど薔薇園を見下ろすことができます。当時からベッドを使っていたそうですが、夜中に起き上がってバトルロイヤルすることはあったのでしょうか。更衣室がすぐ隣接してますが、広いです。

 最後はトイレとバスルームです。

 思い切り笑いましょう。洋式なのに、その真ん中にで〜んと鎮座しているのは、まんまるい五右衛門風呂

 なぜだ〜っ! なぜなんだ〜っ! だれか教えてくれ〜〜〜っ!

 大理石というのがさらに笑いと悲しみを誘います。

 いくら主人が洋式のバスタブをいやがったからといっても……。こいつは芸術の破壊だ。冒涜だ。墓石にウンチするようなものだ。

 それでも、旧古河庭園はうっとりさせてくれます。

 ああ、おれも本館みたいな邸に住みたい! 五右衛門風呂はいやだけど(笑)。

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