剃髪



【読み】 ていはつ


 髪を剃ること。
 平たく言えば、丸坊主にすることである。男なら坊主になるとき、女なら尼さんになるときに「剃髪」をする。
 でも、普通の人たちは出家なんかしないので、真面目な意味で「剃髪する」「頭を丸める」なんて言葉を使ったりはしない。 勝負への意気込みとして「負けたら頭を丸める」なんて使い方をすることのほうが多い。
 某テレビ番組では、定岡が「勝負に負けたら頭を剃る」、なんて賭けをやって、みごと敗北。マルガリータとなった。
 ちなみに女の世界では「負けたら頭丸める」なんて言い方はない。
 なお、よく似たやつに「眉毛を剃る」というのがあるが、仏門とは関係ない。ただ、仏門も不良も、ともに共同体(=社会)の内部にありながら共同体の外部にある、という意味でよく似ている。
 脱線するけど、ちとかみ砕いて言おう。

 たとえば、坊さんの場合。
 坊さんって、世俗を断ち切ってるって言われてるのよね。だから、頭丸めたりしてるわけよ。あれは、俗塵(世間)とはきっぱり縁を切りましたって証拠なわけよ。
 大雑把に言えば、世間って共同体のことだからさ、坊さんって共同体の外にいるわけ。
 でも。
 坊さん、町んなかに住んでるよね。住職なんて呼ばれて墓といっしょに寺んなかに。住所もちゃんとあるし。
 町も、共同体だからさ、共同体の内部にちゃんといるのよ。
 これ、まとめて坊さんは共同体の内部にあり、かつ外部にあるって言うのよ。いやあ、アンビバレントなところが入っているのがいかにも哲学的ィ!

 で、不良の場合。
 あの人たちって、学校にいるのよね。学校って共同体のことだからさ、不良って共同体の内部にいるわけよ。
 でも、規則守らない。
 授業ふける。
 規則ってだれのルールかって言えば、学校っていう共同体のルールなんだよね。それを破るってことは、共同体から飛び出すことなんだよね。実際学校さぼってどっか行くのなんか、文字通り共同体の外に行ってるわけだし。
 だから、不良も共同体の内部にあり、かつ外部にあるって言えちゃうわけ。

 さて、社会学の話。
 共同体の内部に属しながら共同体の外部にあるって人のこと、社会学では「異人」っていうんだよね。「マージナル・マン」なんて言ったりもする。実はスーパーマンとちと関係あったりして。ヒーローって、ある意味異人だから。偉人ではないよ。
 もっと突っ込んで知りたい人は、赤坂憲雄の『異人論序説』(ちくま学芸文庫、980円)をどうぞ。


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