非実在青少年論、6月15発売
ブラバスター(1)
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●鏡裕之『非実在青少年論〜オタクと資本主義〜』、愛育社より6月15日発売!!●

先生のオッパイ、吸う?
■カバー表紙原案
 美少女ゲームメーカー、waffleさんのご厚意により、『巨乳ファンタジー』の ヒロインのCGを使わせていただけることになりました。
 この場を借りて、改めてwaffleさんにお礼を申し上げます。
 なお、この表紙画像は原案です。
 完成版の画像ではありません。
 ぼくがイメージ原案として出版社に送ったものです。


■内容紹介(帯文から)

オタクの問題と婚活の問題はつながっている!
自由化した恋愛市場と資本主義が、オタクと婚活の問題を準備した――。男らしさの確立に悩む男の子、女らしさの受容に苦しむ女の子。エッチな漫画を読む人たちはどういう人なのか。エッチな漫画やBL小説は、資本主義的な理由から批判されている……!? 日本で最も巨乳フェチな作家が、性の世界と表現規制の理由を大解剖! 規制される側の気鋭のポルノクリエイターによる、性的文化論。

漫画のヒーローとヒロインが取り締まられる!
『1Q84』も映像化されたらアウト?/第28期東京都青少年問題協議会の差別発言/すでに表現の萎縮は広がっている/性的逸脱は反国家的・反社会的?/百年前の性的倒錯/推理小説は犯罪の温床?/SとMの真実/なぜオッパイが好きなのか?/ダメンズとヤリマン/中学生好きの女性の心理/隠語好きとアヘ顔好き/ポルノ小説でオジサンの元気度がわかる/キャバクラが流行る理由/恋愛的にはハードランディングの日本/メガネ男子が好かれる理由/ボンドガールは萌えない/『コードギアス』と『機動戦士ガンダム00』の違い/ウロボロス消費/レイプレイ事件/日本は児童ポルノ大国?/世界で最も空気を読む日本人/ポルノはほとんど危険性がない/規制者の方がいやらしい?/なぜアニメ絵は目が大きいのか?/陵辱ポルノの効用/性表現規制と資本主義/BLは禁止すべきか?/少女に性はだめなのか?/21世紀の魔女狩り/ポルノは有効な統治ツール ほか
 

■『非実在青少年論〜オタクと資本主義〜』目次
序章 非実在青少年論
第1章 性の多様性
第2章 SとMの真実
第3章 性的嗜好とメンタリティ
第4章 傷つく男らしさ
第5章 オタクと資本主義
第6章 21世紀の魔女狩り


■刊行にあたって〜著者・鏡裕之〜
 
2010年3月、激震が走りました。東京都が18歳未満の青少年に対して、性表現規制を行なうと発表したのです。18歳未満の登場人物のセックスが描かれていたら――それがエッチなニュアンスだったら――自主規制しなさい、と。
 ニュースやWEBでも伝えられている、東京都青少年保護条例改正案です。児童を性的な誤謬から守るため、というのがお題目です。
 児童とは、この世界で実際に社会生活を営んでいる18歳未満の青少年のことです。東京都は、フィクションの世界に住む18歳未満の青少年に対して、「非実在青少年」という名前をつけました。そして、その「非実在青少年」のセックスを、実在する青少年(児童)から遠ざけようとしています。
 自主規制という形を取ったことにより、すでに影響が出ています。別にポルノではないのに、子供が警官を射つシーンを差し替えましょうと言われた……。真面目な歴史雑誌で、低年齢でセックスしたのがバレてしまうから女性の生没年を伏せてくださいと言われた……。エンターテインメントが、どんどんつまらない方向へ追いやられようとしています。表現の萎縮とは、面白さの減少のことなのです。
 現在、アニメや漫画は、日本の重要な基幹産業へと変わりつつあります。世界でも注目されるコンテンツ産業です。そのアニメや漫画が、東京都の行政によって大打撃を受けようとしています。下手をすると、再起不能まで潰されてしまうかもしれません。その時、元気を失っていく日本経済の中で、ぼくたちはますます日本の斜陽を痛感していくことになるかもしれません。それを最も味わうのは、東京都が守ると主張している子供たちなのです。
 多くの著名な漫画家たちが反対の声をあげています。東京都に寄せられたパブリックコメントでも、反対は95%近くに達していたと言われています。にもかかわらず、行政は条例をあきらめようとしていません。非実在青少年を性的対象として描いた作品を自主規制させようと躍起になっています。東京都は子供を守るためと称していますが、真の狙いは、オタクの子が読むエロマンガや腐女子が読むBL小説やBLコミックに打撃を与えることだと言われています。
 なぜ、非実在青少年は規制されるのでしょうか? なぜ、アニメや漫画は性表現規制を受けるのでしょうか? なぜ、オタクや腐女子は叩かれるのでしょうか?
 そこには、性と資本主義の問題が横たわっています。性表現規制の裏側には、性への無理解と性的なフィクションに対する無理解があります。その誤解の下に、行政側は、快楽を称賛する性的フィクション、すなわちポルノ的フィクションを危険視し、オタクに対して性的犯罪者の予備軍という差別的ラベルを貼り付けています。その裏側には、実は資本主義が絡んでいます。健全と不健全を分けるものは、実は資本主義と近代国家の論理なのです。そしてオタクに差別的ラベルを貼り付けるのもまた、資本主義と近代国家の論理なのです。
 本書は、東京都青少年保護条例に対してまるごと1冊使って解説するのではなく、なぜ非実在青少年が規制されるのか、つまり性表現規制が行なわれるのかに力点を当てて解説してあります。
東京都青少年保護条例とは何なのかを簡潔に知ることができるだけでなく、なぜそういう問題が起きるのか、なぜそれが問題なのか、深くえぐってあります。その結果、より広い視点、より高い視点から、東京都青少年保護条例改正案について、そして性表現規制(創作物規制)に対して、理解ができるようになっています。そして同時に、秋葉系文化やオタク、腐女子についても、ポルノに見られる性的嗜好についても理解が深められるようになっています。東浩紀のデータベース消費に代わるモデルも説明されています。オタクや秋葉系文化について知らなければ、あるいは1985年から起こった社会変化を知らなければ、性表現規制の理由を理解することはできません。性表現規制に興味のない人でも、本書はひとつの文化論として読めるようになっています。
 枚数は330頁オーバー。定価は1000円台、2000円未満におさまるだろうと思います。
  現在、非実在青少年を取り締まろうという動きは、日本中に広がろうとしています。本書がこの動きを止めるひとつの力となることを、著者として強く願っています。

背景:『BOIN SAGA ブラバスター(1)』(絵・兼処敬士、著・鏡裕之、青心社)より