◆前回の復習〜電卓片手にゲームの規模を
前回の復習だ。テーマを決めたあとにすることはなんだ。
――ゲームの規模を考える。
そうだ。そのときに考えることは。
――CGの総枚数、キャラクターの数、CGの配分。
よくできた。この3つは常にシナリオライターが意識していなければならないことだ。
◆シナリオのテーマ、ゲームの規模の次は?
では、その次にすることはなんだ?
――話を書く。
まだ書くな!
――わかった。ガッチャマンの敵だ!
それはギャラクターだ! 二十代の人間が引くようなことを言うな!
――だって、ぼく、ケンとジュンのファンなんだもん(※ケンは『ガッチャマン』の主人公、ジュンはそのヒロイン)。
おれは破裏拳ポリマーが好きだ。ヤッターマンのOVA第一巻は面白かったな。ポリマーとジュンがケンを殴りまくって……って違うだろ!
◆物語の基礎にキャラクターあり
思い切り話を変えよう。
コミックもアニメも美少女ゲームも、すべて売れているものに共通していることがひとつある。
何かわかるか。
――筋肉?
違う!
──お腹の脂肪?
キャラクターだ、1にも2にもキャラクターだ! 売れてるものでキャラが立っていないものはな〜〜い!
──ガ〜ン! そ、そうだったのか……
観察力のないやつめ。
よいか。
キャラクターをきっちりと創出できれば、話はキャラに引きずられて生まれてくる。物語の基礎にキャラクターあり!
──うおおっ!
それにな。
作業の順番からいっても、さっさとキャラクターを考えて、原画家さんにキャラクターを起こしてもらわんと、開発期間が足りなくなっちゃうのよ。
ヒロインを決めよう
◆はじめにヒロインありき
エディターを開け。キャラ設定の文書を作成するのだ。
──ファイル名は何てすればいい?
一目で見てわかるものがいい。おれの場合は、ゲームのタイトルに登場人物とつけて「●●登場人物.txt」としておるな。
――じゃあ、ぼくちんはchara.txtにしよう。……作ったよ。
よし。ゲームタイトルを書いて、キャラクター設定と書け。
――書いた。
では、ヒロインの設定から行こうか。
●キャラクターを決める基本要素(1) キャラクターのタイプ(雰囲気)
まず、メインヒロインにする子の雰囲気を決めよう。どんな子をヒロインにするんだ。
――すんごいデ……。
だれがデブだ?
――う、うそです。
キャラクターを決めるときには、大まかにタイプを決めると楽だ。たとえば、タカビー、ロリー、無口とかな。
――おばさんかな。
却下! 幼なじみで行こう、な! 幼なじみは美少女ゲームの王道だからなあ。
――押し切られた。グスン。
●キャラクターを決める基本要素(2) 性格
どんな性格にするんだ。
――性格?
性格を決めないと、名前は決められないぞ。
――名前なんかどうだっていいじゃん。
馬鹿者! 名は体を表す! タカビーな性格のくせに、山田花子では全然イメージが合わんだろうが! ギャグを取りたいのなら別だが。
――あ、そうか。
では、王道で優等生の性格にしよう。勉強熱心で部活は……。
――柔道部!
汗くさ〜〜〜い! でも、笑えるからオッケーにしよう。
●キャラクターを決める基本要素(3) 名前
名前を考えてみろ。
――高峰冴子。
おい、それではタカビー女だろう。
――松本くるみ。
それでは年下の女の子だ。精神年齢が低く思える。
――神崎かおる。
なんか喧嘩っぱやそうに思えんか。ボーイッシュな感じだよな。
――高野美紀。
それならよさそうだな。ということで、ヒロインの名前は高野美紀に決定〜〜っ!
●キャラクターを決める基本要素(4) 体格
ボディデータも決めるぞ。
――身長は157センチ。体重は100キロ。
バッキ〜〜ッ!
貴様、ユーザーを裏切る気か!
──ひぃぃっ! じょ、冗談です。……48キロ。
よし。スリーサイズは。
――B83、W58、H82。下着の色はレースの黒。
ドガッ!
だれが黒だ! くだらぬところでユーザーの幻想を裏切るな! 黒と紫は、年上の魅力プンプンの女性が着ることになっておるのだ!
――理不尽だ。
美少女ゲームの無言の掟だ。ブラのカップは。
――Cカップ。
よかろう。極端すぎると、その手が好きな人しか来なくなるからな。
――『Fresh!』のゆずか、Fカップだったよ。
やかましい! あれはわざと古典的なヒロイン像から外したのだ!
――ボクチンも外したい。
初心者がやるな! ピカソだってはじめはまともな絵を描いていたのだ! 初めは普通のスタイルから始めるのだ!
●キャラクターを決める基本要素(5) 服装
さて、服装は。
――ボディコン。
バキッ!
それはタカビーの服だろう! 優等生が、ンなもん着るか!
――じゃあ、上はニット。下はキュロットパンツ。
スカートにしろ、スカートに! パンティが見えん!
――ぐっ、理不尽だ……。
それが美少女ゲームのさだめなのだ。
主人公とヒロインは対にして決める
◆主人公とヒロインはペアにして考える
ヒロインが出来たから主人公を決めようか。
――え〜〜っ、ぼく他の子を決めたい。
待てぃ。
ヒロインというのは必ず主人公と関係を持っておるよな。つまり、一種の対の存在なのだ。ヒロインの裏に主人公あり、主人公の裏にヒロインあり。
だから、主人公はヒロインとペアにして決めるのがいいのだ。
――なるほど。デブも納得。
◆主人公の名前は平凡すぎず奇抜すぎず
では、整理するぞ。
ヒロインは柔道部にいる勉強熱心な女の子。優等生だ。名前は高野美紀。主人公とは幼なじみだ。
さて、主人公はどうする。
――ボクチン。
バキッ!
今のは風のささやきだな、な、そうだな!
――そうです。グスッ。
名前を考えてみろ。
――鏡裕之。
だれがおれの名前を言えと言った!
――うひぃ! じゃあ、五味助平。
おまえ、そんな名前でユーザーが気持ちいいと思うのか? ギャグもの作ってるんじゃないんだぞ! 恋愛物だぞ!
――じゃあ、マイケル吉岡。
日本人名にしろ!
――吉岡一郎。
平凡すぎる。
――ユーザーに決めさせるってのはだめ?
それはいいが、デフォルトの名前はどうする。
──むむむ。
主人公の名前は、奇を衒いすぎず、平凡すぎずというのがいいな。
――じゃあ、佐野洋平。
いい感じだ。
◆主人公との具体的な人間関係を作る
で、佐野洋平は部に通っているのか?
――帰宅部で、いつも美紀からなにかやりなさいよと言われている。
おう、なかなかいいぞ。そうやって主人公との具体的な人間関係を作っていくと話が出来ていく。
他に主人公には何かないのか。
――性格が悪い。
感情移入できんぞ。
――じゃあ、完全無欠の性格。
そんなスーパーマンは好かれん。短所と長所がバランスよくあるのがいい。
──自分は極端な主人公ばっかり作ってるくせに、ぶつぶつ……。
わはは、言うは易し、行うは難しなのだ。
──反面教師にしてやる。
ぐさっ! ……で、主人公の性格はどうする。
――凄い自分に自信がなくて、女の子に話しかけられない。
それはいかんな。ユーザーに近すぎる設定というのもまた嫌われる。
――『リエゾン』の主人公はそうだったよ。
あれは変則だ。主人公が男としてたくましくなっていく過程を楽しんでもらえればと敢えてゲーム開始当初は弱くしたのだ。ちゃんとあとで強くなっとる。
――『VIPER V6』の悪魔カレラとできちゃう主人公も弱いよ。
あれは、弱い主人公が悪魔と仲良くなれちゃう快感が狙いだからよいのだ。たなぼた話が主眼だからな。
――じゃあ、特別な目的がない限りは女の子とは気さくに話せるほうがいいの。
恋愛ものでは特にそうなるな。
――じゃあ、こうする。主人公は帰宅部。幼なじみから、何かやりなさいよと言われているけど、なんとなく学園生活を過ごしている。彼女と付き合った経験はないが、女友達はいたほう。自分の適性も、自分の未来もわからない宙づりの学生。
なかなかいい設定だ。そいつをしっかり叩き込んでおけ! シナリオを書くというのは凄い長丁場の仕事だ。最初に設定を立てておいても、書いているうちに忘れてしまうのだ。
――あ〜い。
18禁の配慮をしよう
◆18才未満であることを匂わせるものは排除せよ!
では、整理してみろ。
――高野美紀。年齢14歳……。
ドガッ! バキッ!
だれが十四歳だ! 美少女ゲームは18禁だ! マニュアルだろうと設定だろうとゲーム本編だろうとなんだろうと、エッチする子が十八歳未満であってはならんのだ!
――なんだ、つまんないの。
バキ〜〜〜ッ!
美少女ゲームは、一個人がオナニーするものじゃな〜〜〜い! 高校生って表現もだめだ! もちろん、高校生とわかるものもだめだ! 生徒会も「高校以下の学校機関」を連想させるから、だめ!
女子高なんてもってのほかだぞ。児童ポルノ法案もあることだし、とにかく美少女ゲームを作る以上、ソフ倫規定を遵守せねばならぬのだ。
――わかったよう。高野美紀。森川学園3年。主人公の幼なじみ。柔道部。勉強熱心で活動的。帰宅部の主人公をふがいなく思っている。
よかろう。
――あ、ひとつ忘れてた。
なんだ?
――得意課目、算数。
だれが算数じゃ! それでは小学生やと言われるやろ!
――じょ、冗談です。得意課目エッチ。
ヒロインは処女のはずだぞ。なぜ得意なんだ。
――あははは。でも、結構美少女ゲームの女の子って、初めてなのにフェラとかパイズリしてくれるよ。
それはポルノのさだめじゃ。エッチするときはそうでも、プロフィールに書く必要はない。それ書いたら淫乱女の設定だろうが。
――あはは。じゃあ、削除します。
キャラ設定のフォーマット(あくまで一例)
では、整理するぞ。自分の場合、こんなフォーマットで書いている。本当はもっと細かいんだけどね。
(1)高野美紀(たかの・みき)
森川学園3年。主人公の幼なじみ。柔道部。
勉強熱心で活動的。帰宅部の主人公をふがいなく思っている。恋人はなし。
【性格】真面目。優等生的な性格。
【体格】身長157、体重48キロ。B83(Cカップ)W57H82
【服装】
・冬の私服 上着、ニット。下、チェックのスカート。
・夏の私服 キャミソール。
――(1)ってなに?
キャラクターの番号だ。何人いるのかわかるようにわざと番号を振ってるのだ。
――なるほど。
まあ、はじめはこんな感じだな。あとで手入れするが、ひとまずはこれでいいだろう。
キャラクターを決めるときは、キャラクターのタイプ→性格→名前→体格→服装の順番に決めると、輪郭が決まりやすい。
──この順番にやらなきゃだめ?
おまえは馬鹿か。何をマニュアル少年しておる。自分の頭はどこに行った。それは飾りか?
──飾りじゃありません。偉い人にはそれがわからんのです。
ガンダムの真似するな!
──えへへ。
もちろん、個人差はある。最初は定石通りに進めて、自分のスタイルを確立していけばいいのだ。
──ラジャー!
あとキャラ設定でひとつ。名前は性格(とキャラクターの雰囲気)を反映させるようにつけること。
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