補講第16回 「応募の時には?」
 

続いての質問はTAKAさんです。

応募作品とはどの程度まで、どんな風に作るのがいいのでしょうか?
教室の講義を読んでいると、何気ない会話のシーンでも色んな記号(A000とか)が使われていて、正直なところ、かなり尻込みしてしまいます。
あと、特に悩むのがプロットの書き方なんですが、これは講義のなかのような書き方で良いのでしょうか?
また、各メーカーごとに細かい指示がありますが、大体共通して、企画、プロット、シナリオがセットになっています。
できるだけ端的にまとめようと、A4用紙4枚前後を目安にしていますが、なにか違う目安のほうがいいのでしょうか?
長々となってしまい申し訳ありません。これらのことについてぜひ教えてください。どうかよろしくお願いします。


万全を期すのではなく、覚悟せよ

◆覚悟の問題
 悔いを残すよりは悔いを残さない方が人生はよろしい。
 しかし、TAKAさんの覚悟については個人的な疑問があります。ラカンの言うイマジナリーの段階にあるというか、思い込みと憧れの世界のなかにいるような感じを受けます。
 鏡がエロゲー業界に飛び込んだ10年前には、ハウツーなんてものはありませんでした。インターネットも一般化されていなかったから、作家さんに質問するなんてこともできませんでした。
 だから、自分なりにエロゲーに近いスタイルとして戯曲やテレビドラマの脚本の書き方を勉強して、こうかな? と思いながら書いて5、6カ所に送りました。
 シナリオライターを募集していないところにも電話をかけて、「シナリオライターの募集はやってますか?」と聞きまくりました。やってませんとそっけなく返事されたのは1回や2回ではありません。
 それでもそういうことをしたのは、自分がエロゲー業界に入れるのかどうかを試すしかなかったから、試せるだけ試さないと後悔が残ってダメダメな人間になってしまいそうだったからです。つまり、本気だったんです。だから、自分で調べたし、それが本当かどうかわからなくても、調べるだけ調べたからそれでいくしかないと腹を括って突き進んだんです。
 クリエイティブな世界なんて、不安定な世界です。
 ずっこけることもあれば、成功することだってある。保証なんてないんです。
 そういう世界に飛び込もうとしているのに、TAKAさんは石橋を叩こうとしているというか、万全を期そうとしている。覚悟が足りないな、という感じがします。 
 自分でこう思ったのなら、こう突き進めばよろしい。
 A100なんてファイル名の記述に尻込みするくらいなら、おやめになればよろしい。ゲーム制作なんて、面倒臭いの極致です。今の段階で尻込みするぐらいなら──美味しいとこだけ欲しくてまずいところはいやというのなら──諦めた方がよろしい。業界に入れば間違いなくペーペーです。ユーザー葉書の打ち込みやら広報やら、関係ないことをやらされます。
 それでもいい、面倒臭くてもやりたい、ペーペーでもやってやる、雑用からでもいろんなことを学びとってやるんだと思うのなら、またシナリオ講座を読み直して、自分なりに覚悟を決めて書けばよろしい。他人の手を借りて女の子に告白しようとしてはいけません。
 ものを作るというのは、答えのない世界に飛び込むことです。
 ゲームのガイドブックや受験参考書のようなハウツーは確立されていないし、答えだってない。シナリオを書いていて、一々「ここでヒロイン、こうさせていいかな?」なんて聞いていられません。クリエイティブというのは、自分でもがいて答えを見つけるということです。一歩歩くたびに、どこへ行けばいいのかわからなくなる。それを、えいやっと覚悟を決めて、必死に自分でもがきながら歩いていくことなんです。
 自分でもがいて、答えを見つけて、覚悟を決めてください。


 

 

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