補講第8回 「効率よく勉強してプロになる方法は?」
 

続いての質問は、仮想敵国さんです。

プロのシナリオライターになるために効率のよい勉強方法というかコツがあったら教えてください。


効率を捨てよ

◆効率という考え方をするな
 厳しい言葉を言います。
 効率という言葉を捨てなさい。それができないのなら──効率よくということを追求されるのなら──別の職業を選んでください。自分が出した企画も必ず通り、自分が出した文章も必ず通り、決して没になることがない世界へ行ってください。
 物書きを目指すということは、効率を追求することではありません。逆に効率を捨てるということです。ものをつくるという仕事は、常にゼロクリアーの世界と隣り合わせです。せっかく書いたものも没にしてしまわなればならない。そこから再スタートを切って、新しいものを積み重ねてゆかなければならない。「せっかく書いたから消すのいやです」なんて言っていられません。リテイクは当たり前。直して当たり前。自分が積み上げたものを壊して当たり前。つまらないのならすぐ削除する。その上でまたつくり直していく。そうやって伸びていく世界です。そういう世界で、「効率」なんてものは存在しません。むしろ、あるのは「非効率」ばかりです。ひとつの物語が生まれるのに、どれだけ没や無駄があることか。非効率の上に非効率を累(かさ)ね、無駄の上に無駄を累ねていく──それが物書きという仕事なんです。
 プロになるというのも同じことです。
 志望者の人は、まず効率という言葉を捨てなさい。プロになるということは、タイムアタックを競うことじゃないんです。できるだけ早く敵を倒して記録を更新することじゃないんです。いかに寄り道をして無駄と馬鹿を累ねて最終的なスタートラインにたどりつくかということなんです(ゴールじゃないですよ、スタートラインです)。
 受験の世界なら、最初にこの教科書を読み込んで、次にこの問題集をくり返して、本番前にこの問題集で肩慣らしをする、というれっきとしたシステムが出来上がっています。相手がテストであるということ、減点法であることからそういうシステムが確立できたのだと思いますが、エンタテインメントの世界にそんなものはありません。最初にどれを読んで次に何をやってそして本番前にこういうことをすればデビューできる、なんてものは存在しません。
 読んで、書いて、読んでもらって、意見を聞いて、また書いて、読んでもらって意見を聞いてまた書いて、読んでもらう。<読む><書く><読んでもらう><意見を聞く>この偏執的繰り返しです。一発で書いてOKなんてのは、三島由紀夫じゃない限りありえないんです。<読む><書く><読んでもらう><意見を聞く>、そういう際限なき反復を粘着質と思えるほどくり返してやっとプロのレベルに近づけるんです。効率なんてものは存在しないんです。
 だから繰り返し言います。とにかく効率という考え方を捨てること。物書きへの道も、人生も、無駄の積み重ねなのです。 

 

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