アニメには、いな、フィクションには、日常生活では絶対に使わない言葉がある。
たとえば。
「あれは4年前のことだった――」。
回想シーンの決まり文句。
登場人物が昔のことを思い出すときに、必ずこの言葉で始まる。
けどさ。
みんな、日常生活で使ったことある? たとえば二十歳以上になって、中学時代のことを話すとき。
「あれは中学のときだった。わたしのパパはサラリーマンで……」
なんて言う?
絶対使わねえええ!
これって、元々小説のなかで、主人公が自分の過去を「語る」ときに使う決まった言い回しだよね。「台詞」じゃなくて「語り」。地の文に近いわけよ。それを「台詞」で使っちゃうのって、安易というかいい加減というか、無神経すぎないか? 小説の言語でしゃべるやつなんかいねえぞ。いたら、そいつは絶対に頭がおかしい。
他にも使わない言葉はある。
たとえば、主役が絶体絶命の危機に陥ったとき。だめかと思われたその刹那、
愛のパワーで復活、
光とともに大変身を遂げる! すると、悪役が戦き、顔を覆いながら言う。
「なんだ、この光は」。
あのさ、めちゃめちゃ眩しいわけでしょ?
眩しいのに、「なんだ、この光は!」なんて言う? ずいぶん落ち着いてないか? すげえ分析的。
普通さ、眩しいときって「うわっ、まぶしい」しか言わないよ。それか「うわっ」。それ以外何も言えない。たとえば実際の例考えてみようか。夜にうちで電気消しててさ、目が闇になれちゃってるとき。いきなり
蛍光灯つけたらどうする? 「わっ……まぶしい」でしょ?
「なんだ、この光は」なんて言ったら間違いなく
爆笑よ。
日常生活で決して使われない「台詞」。
19世紀の小説でやるのならまだいいけど、20世紀も尻になって、さんざんフィクションで使い古された
カビの生えた言葉使うのって、
ケツ青いぜ。手垢のついた表現どころか、もう腐ってる。そんなの使ってるから、レベルが低いって言われるんだよ。
もっとまともに会話書こうぜ。