防壁



 エヴァンゲリオン的に言うならば、「ATフィールド」。
 『装甲騎兵ボトムズ』に登場する人型兵器AT(アーマード・トルーパー。装甲騎兵の英訳)とはなんの関係もない。
 アニメギャルから熱狂的な支持を集めたカヲルくんの言葉を借りれば、「ATフィールド」とは、「心の壁」である。
 個人の自我は、他人の存在によって傷つけられ、つねに脅威にさらされている。『エヴァンゲリオン』の主人公シンジにとっては、アスカがその典型的な存在だ。彼女は常にシンジを個人的なスケープゴートにしようとする。

 言葉は、肉体ではなく精神を攻撃する

 言葉による精神的ダメージ、自我への攻撃を避けるために、人は半自動的・本能的に心に壁を作る。それがATフィールドである。ATフィールドは、自我の防衛本脳を増幅しているに過ぎない。
 ただ、エヴァの搭乗者が思春期の少年少女たちに限られているのは、思春期が自我の防衛本能が強まる時期だからだ、と結論づけるのは短絡的だ。恐らく一番の理由は、思春期に設定することで、小学生〜高校生を視聴者(ターゲット)として狙った、ということだからだ。エヴァのビデオ・CD・LDの発売元であるキングレコードのプロデューサーであり、TV局を説得して庵野の起用を実現させたエヴァの仕掛け人である、大月俊倫氏はこう言っている。
「一番うまく伝えたかったところにうまく伝わらなかった。僕達は小学校高学年の子供達に人生を考えさせるきっかけを与えたかったのですが、実際に熱心なファンになった人は、もっと年齢が高い。反抗期を過ぎてなおひねくれ続けている連中を更に増長させる結果にしかならなかったんじゃないか」
武田徹『流行人類学クロニクル』386頁)



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