2005/04/17 更新

そこが知りたい! 医療心理師(仮称)国家資格のQ&A

Q1:なぜ国家資格が必要なのですか?
Q2:医療心理師の受験資格がどうして大学院卒ではなく学部卒なのですか?
Q3:なぜ医師の「指導」ではなく「指示」なのですか?
Q4:「医療心理師」は「医療心理士」とは違うのですか。
Q5:大学院から臨床心理を勉強した者は受験資格が無いのでしょうか。
Q6:医師の権限を保つために学部卒という受験資格にしたのではないですか。
Q7:すでに学部や大学院を出た人は、もう一度医療・保健関係の科目を履修しなくてはならないのですか。
Q8:なぜ医療心理師の師は「士」でなく「師」なのですか。
Q9:日本臨床心理士会や日本心理臨床学会が言っているように「臨床心理士」が国家資格になれば良いと思いますが、国家資格にはならないのですか。
Q10:臨床心理士でスクールカウンセラーをしていますが、医療心理師の国家資格ができるときに受験資格はあるのでしょうか?
Q11:医療心理師の資格は、医者によって作られた医者にとって使いやすい資格だと思いますが。
Q12:全心協設立経過を教えてください。
Q13:全心協の活動内容を教えてください。
Q14:医療心理師国家資格制度推進協議会について教えてください。



Q1:なぜ国家資格が必要なのですか?

A:国民の生活に重大な影響がある職種に対して国の責任で認定を行うのが、国家資格です。医療の領域では、医療専門職として法的に位置づけられている職種のすべてが、国家の責任の下に試験を行ない一定の基準をクリアすることを求められています。
医療現場の心理職は、法的には各種の助手(例えば看護助手)さんと同列の、まさに逐一医師の直接的・具体的指示の元でしか活動できない存在であるのが現実の姿なのです。これではチーム医療の一員として求められる機能を十分に発揮することが出来ません。こうしたことで民間資格ではなく国家資格として、他の医療職と同じ土俵に上がる必要があるのです。

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Q2:医療心理師の受験資格がどうして大学院卒ではなく学部卒なのですか?

A:まずいくつかの前提を確認する必要があります。日本の医事法体制は6年養成の医師と、その「指示下」の医療関係資格によって構成されてきたという事実があります。そして医療に関係する国家資格の中で医師・歯科医師・薬剤師以外は必ずしも大学卒業を要せず、高校卒業後の養成となってきたという事実です。この枠組みの中で医療心理師養成は論議されてきましたが、全心協は心理学専攻者とは4年制大学で心理学を学ぶという現実を主張してきました。
また、現在の大学院入試制度は必ずしも心理学部・学科を卒業せずに、例えば国文科・英文科・数学科などを卒業しても入学できます。その場合2年間の大学院だけでの教育では基礎心理学を習得したとはいえません。心理の仕事として現場で様々な対象者と関わる時には、心理としての心理統計法や学習理論といった科学的な視点も大切になります。そのためにはまず学部で心理学をしっかりと勉強することが必要となり、その基盤に立った大学院教育でなくてはなりません。他方、資格の現実的な成立要件から考えると、現状では医療関係国家資格の中で、受験資格が大学院卒を受験資格としているものは現在のところありません。そのため医療心理師のみいきなり大学院卒を求めことには無理があります。
心理学の基礎を学部でしっかりと教育することが出来れば、卒後研修で資質の向上を図ることが可能と考えられます。

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※参考:医療・福祉関係の資格・免許名、業務内容、受験資格など

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Q3:なぜ医師の「指導」ではなく「指示」なのですか?

A:医師の指示だとすべて医師の命令の下で働くことになると言われます。確かにそうした時代もありました。また、Q1にありますように、法律上は資格のない今現在の方が業務に関して逐一医師の指示を受けなければ仕事を行えない状況なのです。
チーム医療が主になっている現在は「医師の指示」となっていますが、実際の現場では他職種と連携しながら包括的な指示の下に仕事をしている場合が多いはずです。国家資格制度を創設し業務に対する責任を明確にすることによってのみ、医師の指示を具体的で逐一の指示から、合法的に包括的指示を含むものにすることが可能となるのです。
また、指示を拒否したら法律違反になるのではとの心配もよく聞かれます。違反に該当するようなエビデンスを立証しない限り"拒否"イコール法律違反とはなりません。更に現在の医事法制上は、診療報酬を得る時にはどうしても「医師の指示」が必須になっています。現状の医事法制を変えない限り「医師の指示」は切り離せないものです。

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Q4:「医療心理師」は「医療心理士」とは違うのですか。

A:「医療心理士」は全心協が10年あまりの歳月をかけ推進してきた医療心理師(仮称)とは全くの別の物です。日本医療心理士学会と称する団体が突如として「日本医療心理士学会認定医療心理士」の認定を始めましたが、最近「日本医療心理学会(http://www.geocities.jp/jmpa_2003/INDEX.HTM)」と名称を変更しています。学会と名乗っていますが、学術団体として日本学術会議への登録もないので、本来の学術団体ではありません。社団法人日本心身医学会(http://www.interq.or.jp/japan/shinshin/)が同名の学会資格認定を開始しましたが、これとも全く別のものです。

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Q5:大学院から臨床心理を勉強した者は受験資格が無いのでしょうか。

A:法律ができないと正確にはお答えできませんが、精神保健福祉士や言語聴覚士が国家資格化された時には、5年以上の臨床経験のある人に対しては、現任者講習を受講することで受験資格を得ることができる経過措置がありました。
 その例から考えると、心理学を専門に学び実務に就いている方は大学・大学院を問わず、一定の臨床経験年数を勘案して現任者講習を受けた上で受験資格が発生するような移行措置がもうけられるようにしたいと全心協は考えています。現場で働いている方々の現状を踏まえて関係機関に強く働きかけていきます。

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Q6:医師の権限を保つために学部卒という受験資格にしたのではないですか。

A:一部ではこの様な流言飛語が飛び交っていると聞きますが、これまでの国家資格化推進の経過の中で医療の側からはそのような発言は一切ありませんでした。それよりもQ2でお答えしたとおり学部でしっかりと心理学の基礎を学んでもらうことこそ、的確な専門教育につながると考えるからです。

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Q7:すでに学部や大学院を出た人は、もう一度医療・保健関係の科目を履修しなくてはならないのですか。

A:Q5でお答えしたとおり、一定の現場での臨床経験がある人については経過措置として、現任者研修を受講することで受験資格を得られるように、全心協では関係機関に強く働きかけていきます。

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Q8:なぜ医療心理師の師は「士」でなく「師」なのですか。

A:一般に「士」は訓読みでは「おとこ」となります。そのために男女平等の立場から男を表す「士」ではなく訓読みで「せんせい」の「師」を使うようになってきています。医療の分野でも男女平等の観点から保健婦助産婦看護婦法の改正で、保健師・助産師・看護師に名称が変更されたように、最近の法律では「師」を使っています。そのために医療心理師も「士」ではなく「師」を使うことになったのです。

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Q9:日本臨床心理士会や日本心理臨床学会が言っているように「臨床心理士」が国家資格になれば良いと思いますが、国家資格にはならないのですか。

A:臨床心理士がそのまま国家資格になって、すでに「臨床心理士」を持っている人はスライトできれば良いと思っている方は多いと思います。しかし心理の民間認定の資格が多くある中で、特定の民間資格がそのまま国家資格になると法の下の平等に反することになります。残念ですが、受験資格要件を満たし国家試験を受験するしか無いと考えます。この問題に関しては、日本臨床心理士資格認定協会のお考えを、直接お尋ねになるのがよろしいかと思います

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Q10:臨床心理士でスクールカウンセラーをしていますが、医療心理師の国家資格ができるときに受験資格はあるのでしょうか?

A:現時点では経過措置などが決まっていないためお答えはできません。それは経過措置の中で現任者をどのように定義するかで違って来るからです。
現任者を例えば「医療機関に勤務している者」となるとスクールカウンセラーの実績では難しいと思います。現在、日本臨床心理士会が医療心理師の資格に反対している中では、残念ですがスクールカウンセラーの実績だけで経過措置の対象者になる可能性は少ないと思います。

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Q11:医療心理師の資格は、医者によって作られた医者にとって使いやすい資格だと思いますが。

A:これも資格に反対する方々からはよく言われます。しかし、無資格の現在の状態の方が質問にあるようなことが実際に起こる可能性があるといえます。Q6にもありますが、この資格の当事者はあくまで心理職で、医師の側から出てきた話ではありません。
これまでも全心協が主体的に活動し、チーム医療の一員として対象となる人へより良いサービス提供ができるようにするためには資格が必要と医療側に訴えてきた結果として、現在多くの賛同が得られるようになったのです。また、国家資格ができれば職務内容等は法律で保護されますから、質問にあるようなことはありません。

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Q12:全心協設立経過を教えてください。

A:全心協設立のきっかけは1984年の宇都宮事件にさかのぼることができます。宇都宮事件は日本の精神科医療を根底から揺るがす事件で、この事件以後わが国の精神障害者に対する取り組みは大きく変わり、精神科医療の方向性を、収容から治療へ、人権尊重へと変化させることとなりました。
「精神衛生法」が「精神保健法」そして「精神保健福祉法」へと変わる過程の中で、国の精神障害者に対する治療と人権への取り組みは大きく変わり、こうした流れの中で当時の厚生省は精神科医療の担い手であった精神科ソーシャルワーカーと臨床心理技術者の国家資格化を検討し始めました。
 1990年に始まった厚生省臨床心理技術者業務資格制度検討会に参加していた心理職代表を中心としたメンバーは、医療の充実とチーム医療の推進のために必要な職種として臨床心理技術者を位置づけ、資格制度検討会の検討内容を詳細に伝える会として「国家資格を知る会」を組織し、全国行脚を続けながら、保健・医療・福祉領域の臨床心理技術者の職能団体設立のための活動を始めました。
設立準備会を重ね、2年後の1993年6月東京都庁のホールにて100名弱の有志で設立されました。設立メンバーの大半は臨床心理士でもありました。

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Q13:全心協の活動内容を教えてください。

A:心理の国家資格を作ることを目的にした、保健・医療・福祉領域で働く心理職の職能団体です。国家資格を作るために、1993年創設以来一貫して心理職の国家資格を創設する活動をしてきました。全心協は日本臨床心理士資格認定協会の求める横断的資格の考え方を否定するわけではありません。しかし心理職の国家資格を検討してきたのは唯一医療分野だけでした。全心協はその意図を理解し、現実的な判断から保健・医療領域での国家資格の実現を推進してきました。
全心協は設立以来十数年にわたり、厚生労働省や関係学会、関連団体、関係する衆参両議院の議員の方々などに直接お会いして、全心協の考えをご理解していただく活動を続けてきました。
また、年間を通じて以下の活動も続けてきました。
@ニュースレターを発行して、国家資格創設の実現に向けた情報を具体的に速やかに会員に伝える。
A国家資格の研究班に全心協から代表が参加し、現場の声を資格に反映させる。
B保健・医療・福祉領域の臨床心理技術者に必要な業務指針、倫理綱領、養成カリキュラムを作成する。
C必要な教育、研修、情報宣伝活動を行う。
D国家資格創設を行政や立法機関に働きかけを行う。
E国家資格に必要な医療・保健・福祉の教科書作りを行う。
F国家資格創設のために関連領域の機関、組織、学会等との緊密な連携を図る。

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Q14:医療心理師国家資格制度推進協議会について教えてください。

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