86.「良いモノ」
 「僕の価値観として、常に良いモノであり続けたいんです。良いモノになろうとする
なら、一生懸命悪いモノを削っていかなくちゃいけないわけでしょ?でも削っていく
と何もできない状況になったりすることもある。たとえば騙されることも平気でいられ
る人間でいるか、それとも騙されたことに立ち向かう人間になるかってことだよね」
「GB」(1990/12月号) 24歳 04/06/12
 自分の中から悪いモノを取り除いてしまったら、もしかしたら健全な社会生活
ってのはできなくなってしまうかもしれない。人は生きてゆくうちに清濁飲みこん
で、「これが正しい」という道以外に別の道をたどらなくてはいけない状況も出て
くる。「必要悪」とされることだ。そういうバランスをとりながら生きてゆくのがほと
んどの人たちの生き方なんだろうと思う。そう考えると彼がやろうとしていたこと
生き方はある意味バランスがとれなくなる、ヒジョーに難しい生き方だ。だけど
彼は本気でそれをやろうとしていた。誰もができないようなことに挑戦した彼だ
からこそ、若者からの支持を得られたんだろうなあって感じますね。
 
16.「欲望(1)」
「やっぱりボクの場合、表面じゃない。内面に迫るものがあるのをやっていきたい。
いい車に乗りたいとかそういう欲望っていうか、煩悩があるからボクだって歌書ける
んだもの。みんなが精進料理食って生きてる人間だったら、誰もボクの歌なんか聴
かないよ。みんな屈折しながら、それでもなんか輝いていたいたからだと思うんです
よね。
「パチ・パチ」(1985/6/9) 19歳 02/05/10
 すごく的を得てると思うんですよね、このコメント。アーティストだって人間。うまい
ものを食べたいだろうし、いい車に乗りたいだろうし。リスナーの側に立って音楽
を作らなければ、いや作れなければ、リスナーに共感させうる音楽ってできないと
思います(決して「コビを売る」という意味ではなくてね)。なんだかとても彼を近く
に感じる一言ですね。たとえばお金持ちだとか、貧しいとか、そういう物質的なこと
じゃなくて、人間誰もが一度は精神的に屈折してるはず。そのことに気づけない人
は、もしかしたら悲しい人なんじゃないのかなあ。
 
97.「欲望(2)」
 「君のためにすべてを捧げてあげるよって言われたら、誰しもがそれに向かって
すがりついたりするわけでしょ?でもそれが欲望になり、愛になったりやさしさにな
ったりする。でもそれはすべてが真実なんだということ」
「GB」(1991/1月号) 25歳 04/06/23
 君のためにすべてを捧げる・・・でも人間って最初はそういう風に謙虚であっても
そのうちどんどん自分の内の方から欲望があふれだしてくるものなのかもしれま
せん。もしそれがなかったとしたら、その人は本当の聖者です(笑)。最初の出発
点は同じように純粋な想いでも、人の心はやがて自分の本心に忠実に向かって
いってしまう・・・でもそれが真実なんだと彼は言っているのかもしれませんね。

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