131.「シェリー」
 「”シェリー”って曲を作ってるときに、僕が考えていた(学校などに束縛されない)
その安らぎというのは、たとえれば胎内回帰していく安らぎというか、結局あり得ない
安らぎじゃないか。それがわかったんです。学校を辞めて幸せになれると思ってた
んだけど、実はまた新たな壁を見つけて歩き出さなければならない。ならばそういう
自分を気取ったりせずストレートに出したら僕にとっては意味があると、そう思って。
だから学校を辞めて社会人になっていく間の、節目みたいな曲、そういう曲を書き
たかったわけです」
「ロッキング・オン」(1985/5月号) 19歳 06/05/18
 大人でも子供でもない、一番中途半端な世代がこの18〜19歳だと思います。”多
感な時期”とはよく言ったもので、おそらく一生のうちに最もあらゆることを考えとら
える力がある時期なんじゃないかな。子供のころには思いつきもしない、大人にな
ってからでは「今さらそんなこと・・・」と思ってしまうようなことを、ただひたすら考え
て思いっきり滅入ってしまう・・・ボクの10代最後もそんな感じで過ぎていったと、今
そう感じますね。”シェリー”って曲には何の気取りも取り繕いもない、素直で臆病
な彼の表情がよくて出てると思うし、だからこそ心の底に伝わってくるんだろうな。
 
96.「時差」
 「スポーツクラブに行っている人とか、そういう人たちって心の中の葛藤を肉体的
な疲労で精神的にバランスをとってるんんだと思う。そうすると(心の中に葛藤を持
ったままの人との)時差がどんどんできていくような気がする。同じように生き、同じ
ようにバランスはとってるはずなんだけども、自己の葛藤を続けていってる人たち
のほうが、精神的にどんどん成長の度合いが速くなってる気がするのね。そのぶ
んだけ、もの恥ずかしさとか、てらいが出てくるような気がする」
「GB」(1991/1月号) 25歳 04/06/22
 彼がここで言おうとしていたのは、自分の心の中の葛藤をたとえば汗をかくとか
そういうことに置き換えて流してしまう人よりも、目の前の壁をどう越えようかとい
うことに真正面からぶつかってゆく人の方が、その分精神的に成長するのが早い
ってことなんじゃないかな。ただボクが思うのは時にはそういう悩みから離れて、
まったく別のことをすることで、真正面からでは考えつかなかった答えに巡り逢え
るって可能性もあるんじゃないかなって思う。なあんてかくいうボクも、かなり真正
面からぶつかって、思いっきりその場で悩んじゃうタイプなんですけどね(笑)。
 
34.「自分自身」
 「最近は、これがボクです!っていうものを露骨にやっていきたいな、って思って
る。コンサートのテーマもそれだと思う。ある意味じゃ、まじめなことばっかりやってい
る人間じゃありません、みたいなのをちゃんと出したかったし、出したくてもどう出し
ていいか解らなかった。けど”これがボクです!”っていうのが、いちばん手っ取り早
いというか、ホントなんじゃないかと思ってる」
「パチ・パチ」(1985/11/9) 19歳 02/05/28
 彼のコメントは時と場合によって、今までとは180℃違った意見を言ってる場合も
あるんですけど、そんな混沌とした意見も彼なんだと思います。表現者は、いつも
言ってることが統一してなくてはならないって感じもするけど、彼に限ってはなぜか
言うことが二転三転しても、「ああ、彼だから」と妙に納得できてしまうから不思議
(笑)。でもそれも彼自身の個性なんだよなあ。彼はいつも迷ってたような感じがす
るコメントが多い。
 
93.「自分と社会」
 「自分の形跡みたいなモノが、いつも作品に出てくる。ずっと昔からそうだったん
だけど、たとえば友だちのことを歌おうとしたとき、周りがみんな学生だったりすると
どうしてもそういう人物の出てくる歌になる。でも、今はもうみんな働いていて、そし
て僕も音楽を作って働いている人間だという意味では、より社会とかそういったモノ
に目を向けて考えるべきだと思うんです」
「GB」(1990/12月号) 24歳 04/06/19
 この年齢の彼は一シンガーソングライターとして、世間一般のいろんな世代の人
々が共感してくれるような楽曲を作ろうとしていたような気がするんです。だから自
分個人のことを歌うよりは、もっとこう社会的なことに目を向けていきたいと語って
るんだと思うんですけど、ファンとしてはもっともっと彼個人のことを歌にしてほしか
ったなってのはあるんですけどね(笑)。『COOKIE』あたりにその思いがにじみ出て
る気がしますね。・・・でも考えてみればほとんど彼自身のことを歌ってるなあ(笑)。
 
24.「使命感」
 「まだ未熟なんですね、ボクが。自分を押さえることが出来ないなんてね。自分自
身の問題なんです。歌を歌うことに対する使命感とかにどう対処していくかってこと
で、いろいろ自分の中で追いつめられていって・・・。もっと志を高く持たなきゃっ
て・・・」
「パチ・パチ」(1985/8/9) 19歳 02/05/18
 彼はステージで時折荒れることがあった。他人から見ればそれはただ単にワガ
ママなヤツに映ったかもしれない。しかし楽曲のイメージから「歌っていくことへの
使命感」を突きつけられた彼の葛藤が、そうさせていたんじゃないかな。考えてみ
ればいくらアーティストだからとはいえ、ティーンエイジャーの気持ちを全て背負わ
されれば、フツーの大人だってそのプレッシャーは相当なもののはずだ。彼はま
だこの時19歳。荒れてもおかしくはないよなあ・・・って思いましたね。
 
7.「15の夜(1)」
 「煙草をふかしてたのは確かにいいことじゃなかったと思う。だからって無理矢理
髪切られるのは間違ってる。ボクらがそれに対して自分の思った正しい道へ進もう
としたってことは大切なことだったんじゃないかって、今でも思ってる」
「パチ・パチ」(1984/6/30) 18歳 02/05/01
 彼が中3のとき、煙草が原因で教師に無理矢理バリカンで髪の毛をギザギザ
に切られたその夜、その仲間10人で家出し、バイクを乗りまわし、寝る場所が
なくなって車のスクラップ置き場にいたところを補導されている。ボクは学校にい
る時ほど、何が正しくて何が悪いのかがわかりやすかった時代はなかった。
それはテストで正解を答えれば正しいし、誤った解答を書けばペケにされて返っ
てくるのが大部分の原因だと思う。ところが社会に出てみると、学校では確実
にペケだった解答が○になることが多々あるんですよね。彼らはそのペケに疑
問を抱き、家出した。15歳という年齢の限界を、そこで知ったのだろうなあ。この
エピソードは、彼のデビュー曲「15の夜」に深く刻まれています・・・。
 
58.「15の夜(2)」
 「盗んだことをいいことだとは思わない。でも10人の友達が、あの車の中でどんな
夢を見たか知らないけれど、無理やり髪を切られるのは間違ってるって、自分の思
った正しい道へ進もうとしたことは、大切なことじゃないかって今でも思ってる。そう
いうあいつらの気持ちを大切にしていかなきゃいけないと思ってます」
「GB」(1984/6月号) 18歳 04/05/15
 新宿ルイードで行われたデビューライブの本編最後に歌われた彼のデビュー
曲『15の夜』の直前でのMC。自分が正しいと思う道・・・特に15歳とか、それぐら
いの時に思ったことって、たいがい大人たちには反対されるんですよね。大人か
らしたら「ガキが何言ってるんだ」って思うのかもしれないけれど、自分が正しい
と信じる目っていうのは、実はこの年齢の時が一番輝いているのかもしれない。
 
27.「10代最後のアルバム(1)」
 「自分の中ではそれほど20歳になるからどーのこーのってわけじゃないけどね。ボ
クが今まで10代のなかで伝えたことばって、歳とっていくにしたがって青臭くて平気で
言えなくなってくるでしょ?そういう意味も込めて20代の前に出したいし」
「パチ・パチ」(1985/11/9) 19歳 02/05/21
 10代最後の3rdアルバム『壊れた扉から』は、彼の20歳の誕生日である85年11月
29日の前日である11月28日にリリースされている。本などを読むと、彼はこの作品
を作るのに七転八倒したそうだ。楽曲も期限ギリギリに完成したし、10曲の予定が
9曲しか入っていない。残りの一曲をぜひ聴いてみたかったなあ。彼の最後のステ
ージは91年10月に行われたんだけど、25歳の彼が10代の頃の楽曲を歌っていて
もすごく自然に感じましたけどね〜。やはり彼は「永遠の少年」なのかも(笑)。
 
30.「10代最後のアルバム(2)」
 「ボクが誕生日の一日前に出すってことを、同世代の人間は、とてもコマーシャリ
ズムに乗ったような気がすると思う。それを大きな意味で言えば、他人にこうしろっ
て言われると、なんでこうしなきゃいけないのって疑問を持つよね。だけどこうしろっ
てヤツの気持ちを理解しようとするわけ。そうしたとき10代に出してほしいっていう
人間には何か願いに近いものがあると思うわけ。今回”イヤだ!”って言えなかった
のは、スタッフの裏側の気持ちが痛いほどボクに伝わってきたからって気がしてる」
「パチ・パチ」(1985/11/9) 19歳 02/05/24
 ファーストやセカンドを出した頃の彼とは、確実に違ってきている、というのが、こ
のコメントから受け取れます。本人は10代のうちに3枚のアルバムを出す、という
ことにさほどこだわってはいなかったようですが、プロデューサーの須藤晃氏をは
じめとするスタッフは、やっぱり10代のうちに出してほしいと願っていたようです。後
年、彼が出した3枚のアルバムは、10代3部作と言われ、彼をリアルタイムに感じら
れなかった数多くのリスナーの胸に響き渡ったことでしょう。
 
116.「浄化」
 「いつかやがて、誰もが親離れしていくだろうし、そのことを皆に聞かせたい。そし
て社会というものに対してどういうふうにしていったらいいのか伝えたい。きっとそれ
は誰もが悩んでる部分であり、そこで立ち止まっちゃいけないんだってことを歌うこ
とが僕の9年間のブランクに自分がしてきた罪や自分の弱さをもすべて浄化させる
こと。今はその年じゃないかと思ってる。それは今回のコンセプトであって、次回の
コンセプトはそれを作り終わった瞬間にまた始まるんじゃないかって気がしますね」
「GB」(1992/5月号) 26歳 04/07/12
 もしかしたら人は自分はひとりだと自覚した時から、社会との対峙が始まるの
かもしれないなって、このコメントを読んで思いました。彼は自分がデビューして
からこの時までのことを「9年間のブランク」と表現していますが、その間に自分
はシンガーソングライターとしては成長していたかもしれないけど、人間としては
成長が止まったまんまだった・・・と言いたかったのかもしれない。だけどこの時
点でこういうコメントができるということは、それだけ人間として成長してきたって
ことなんじゃないかなあって個人的には思います。浄化させるってのはキレイさ
っぱり消すって意味じゃなくて、それを次につなげるって意味だったんだろうな。
 
150.「新宿」
 「何しろ僕らにとってはニューヨークなんですよ、そのころは。すっごく緊張感が
ありましたね。いや、つっぱって背広とか着て行きたいんだけど、金取られないか
ってビクビクしてたりとか(笑)。交番からディスコの入り口までビシューって走って
行ったりして。なんでああいうふうだったのか今考えるとわからないですね、死ぬこ
とに対して本当に無頓着でしたからね」
「ロッキング・オン」(1986/2月号) 20歳 06/06/06
 彼の少年時代って、不良少年に憧れてたんでしょうね、きっと。確かに新宿とい
う街はとてもきらびやかなんだけど、渋谷とは違って裏側に行くとものすごく暗黒
の世界が広がっているというか、こんな平和な国なのに踏み入れちゃいけない危
険な場所があるって感じがしてしまいます(笑)。死ぬということに無頓着っていう
のは、若さからの発言なんだろうなあ。確かに若いときって自分が死ぬなんてこ
とこれっぽっちも頭になかった気がするな。それよりもこの状況をどうやって切り
抜けようってことばっかり考えてた気がする。ボクの方は暗い青春ですね(笑)。

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