60.「サイン」
 「サインなんてアイドルやロック歌手みたいでイヤなんだ。スター性も自分にはな
いと思う。だって、ふだんの僕にとっても、僕が歌ってるなんて信じられないもの」
「GB」(1984/9月号) 18歳 04/05/17
 ステージから離れ、たとえば街中なんかでこういう風にサインを求められると、
いかにも「職業歌手」のような感じがしてしまったのかもしれませんね。まあ歌っ
て稼いでいるのだから、それは間違いじゃないのだけれど。でもボクなんかも
職場とかではいつもと違う自分であるような気がしますね。すべてを斜め読みし
てるというか、先の先まで無理矢理読もうとしていたり・・・まあ当然ボクの職業
と彼の職業を比べられはしないし、比べる方がおかしいよね(笑)。
 
90.「探しているモノ」
 「(自分の息子を)見守ってあげるという意味では”ああ、自分もそういう年になっ
たんだな”って感覚で僕なんかは受け止めたりすると思う。やっぱり話したいなっ
て思うことは、子どもが一つ一つ覚えていく姿っていうのを見ていると、自分が探し
ているモノと似てるような気がしたんです。だから人間ってもしかしたら本当はこん
なにも大らかなのかなって思ったりして」
「GB」(1990/12月号) 24歳 04/06/16
 彼は世の中に転がってるいろんなものをひとつずつ解き明かしていこうとする
時、もがき苦しんで探してきた感があったんだけど、自分の子供がたとえば初め
て言葉を発したり、何かを使えるようになったりする場面に遭遇した時、実は自
分が苦しまなくてはわからないと思っていたことは実はそんなに難しいことじゃな
くて、子供が言葉をひとつひとつ覚えてゆくこととそう変わりないんじゃないかって
思ったのかもしれませんね。なんかすごく人間的でステキなコメントだと感じます。
 
47.「作品との距離」
 「僕自身の中でも、自分が語ったりしたことのようにはうまく生活が送れていな
いというのは事実としてあったりするんですよ。で、それに対して、でもなおかつ
僕はそういったものを目指していきたいと・・・それから、伝えられた自分と、僕
自身の共通点みたいなものをね・・・簡単にはクリアーできる問題じゃないとは
思いますよね」
「パチ・パチ」(1987/10/9) 21歳 04/05/04
 そりゃあそうだ(笑)。基本的に商業的に発信される歌っていうのは、確かに
自分の身の上をあますどころなくノンフィクションで描いているものもあるけれど
ほとんどがフィクションだったりする。だけど彼の場合、自分の書いた歌に対し
て自分自身がその曲で歌った通りでないと、聴衆に対して申し訳がないし、自
分が納得しない・・・というとても律儀な人なのだ。人はどこかで緊張したら、別
のどこかで空気を抜いてはじめて精神のバランスがとれる生き物だと思います。
だけど彼はその空気を抜こうとはしなかった。正直なところが彼の魅力だった
けど、それが彼自身を苦しめていく原因にもなったことを考えれば、なんとも複
雑な気持ちになってしまいますね。
 
39.「サラリーマン」
 「反発する人間っていうのは、ある意味では違う方向で同じ位置に入るって
ことでしょ?相手よりやっぱり先に行かなきゃっていって、アイツが言ってたこと
はどういうことだったんだろうということを、自分自身で答えを出したいと思った
わけじゃない?常にそうだと思う」
「パチ・パチ」(1986/1/9) 20歳 04/04/26
 彼は「BOW ! !」という曲の中で”あいつは言っていたね サラリーマンにはなりた
かねえ”っていうフレーズを歌ったことで、友人から「なってみなけりゃわからない」
「お前がそう言うならなってみたいね」と、自分とは逆の意見をいわれ、それがう
れしかったそうです。それを受けてのこの発言。ボクも「その曲嫌い」って人よりも
むしろ「その曲には全然関心がない」って言われた方がきっとつらいですね。「嫌
い」ってことは少なくとも一回はその曲に触れて意識しているわけだから。自分自
身で答えを出すっていうのは、きっと自分の身をもって体験することなんだろうし
だからこそ説得力があるんだよな。
 
11.「3枚のアルバム」
 「3枚目までは、わき目もふらずガツガツ作っていっていいと思うんだ。周りの
評価とか売れる売れないってことを気にしている余裕もないし。そのあと、もっと
ゆったりした気持ちで曲が聴けてそこから誰か聴いた人がインスパイアされる。
そんな歌がいちばん必要だと思う」
「パチ・パチ」(1985/5/9) 19歳 02/05/05
 ボクは歌には大きく分けて2通りあると思うんだ。ひとつはその歌の詞に自分の心
を投影して「共感できる」音楽、もうひとつは耳から流れてくる心地よいメロディーに
よって、心を癒される音楽。ボクはどちらの音楽も好きなんですけど(笑)、でも最終
的に人の心に残るのは、彼が言うような音楽なんじゃないかな、って思います。

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