59.「苦手なもの」
 「ボク、この世で蝶がいちばん嫌いなんです。子供の頃、原っぱにいたら草むら
の中から一羽の蝶がフッと飛び出したんです。アッと思ったその瞬間、一羽の蝶
に続いて十羽くらいの蝶が一列に線を描くように連なって出てきたんです。それ
を見て背スジがなぜかゾクッとして怖かった。以来、怖いんです。だから夜桜もダ
メ。なんか蝶がいっぱい木にとまっているような気がするから」
「GB」(1984/8月号) 18歳 04/05/16
 蝶が嫌いっていうのもなんだか変わってますねえ。ただどんな人にも他人とは違
う苦手なものっていうのがありますよね。しかも自分でもなんでこんなに苦手なん
だろう?っていう理由もわからないものが。ただ一匹の蝶がたくさん集まったら、も
しかしたらボクもゾクっとしちゃうかもしれない。なんだか芸術家みたいなコメントで
すが、彼らしいっちゃ、彼らしいコメントのような気もしますね。
 
56.「20年後の自分」
 「作品本位でいれば、それは可能だと思う。作品が僕をつないでいくと思います」
「パチ・パチ」(1988/9/9) 22歳 04/05/13
 インタビュアーに「20年後に歌っている尾崎豊像について」と聞かれ、彼はこう答
えています。確かに18の時には18なりの、19の時には19なりの歌を作って歌って
きました。その瞬間、その瞬間の自分を歌で表現してきたんですよね。だとしたら
きっと20年後の自分も、その歳の自分をきっと表現できてるだろうっていう確信を
持っていたんでしょう。・・・42歳の彼の歌を聴くことはできませんでしたが・・・。
 
41.「日常の自分」
 「日頃の自分っていうのは、180度違う人間を出していきたいわけ。つまり自暴自
棄になったピエロみたいな、自分のおかしい部分を出そうとしていた時期があって
周りからは結局は軽いヤツなんだって思われて、すごく悩んだこともあった」
「パチ・パチ」(1986/1/9) 20歳 04/04/28
 う〜ん、これは気持ちがよくわかります(笑)。いつも頑なに真面目一辺倒ってよ
りも、いつもふざけたり、アホなこといってる人間がマトモなことを言うと、なんだか
いつも真面目なことを言ってる人が言うより言葉が説得力を持つんです。あ、だか
らといってそのアホな部分は作ってるんではなくて、それもその人の素顔の一部
には変わりありません。尾崎さんはそこら辺を周りから相当誤解を受けたみたい
ですね。やっぱりそれは紙一重ってことなのかなあ。その不器用さも彼を好きな
理由なんですけどね(笑)。
 
129.「2枚組」
 「僕の考え方は、たとえば”十七歳の地図”という曲があれば、まったく逆の”十
七歳の地図”が入ってなければ嘘だというものなんです。自分のなかのいろいろ
な葛藤をちゃんと出したいんです。そうすると2枚組になっちゃうんですけど、レ
コード会社がなんて言うかな(笑)」
「ロッキング・オン」(1984/8月号) 18歳 06/05/16
 やっぱりレコード会社にはその声は届かなかったんですね(笑)。それとも彼の
気が変わっちゃったんでしょうか?ともあれ「まったく逆の”十七歳の地図”」って
いうのは、21.「YES NO」のところで発言していたようなことなのかもね。たとえば
この曲では両親の背中を見て涙する彼が描かれているけど、そんな彼も両親の
期待を裏切って学校を辞めてしまった。片側ではこう思うけどその反対側ではそ
れは違うんだっていう、そんな”十七歳の地図”では描かれなかった彼のあの歌
の裏側の心情みたいなものも歌わなければ、それは嘘だってことなんだろうな。
 
64.「二面性」
 「乗ってもらいたいってそこまではっきりとは考えないけど、ただ”どんなヤツな
んだ?”とジーっと見られているっていうのは・・・。半分醒めている部分と、完璧
に自分の世界に入ってる部分と、半々もってるっていうのかな、いつも僕自身が。
その醒めてる部分のほうで、ジーっと見ているお客さんの目っていうのを感じるん
ですね。それでもし自分がジーっと見ている人間だったら、こういう風にやってる
人間をどう思うんだろう・・・みたいに考えちゃって、そうするとなんかすごく寂しい
気持ちになりますね。だから逆に自分だけの世界にもっと入り込もうという作業に
なって、無性に動くんだと思うんですけど」
「GB」(1985/4月号) 19歳 04/05/21
 ステージ上の彼はとにかくものすごくよく動き回ります。時には理性を失った野
性動物のように・・・。まさかその裏にこんな思いがあったなんて驚きですね。確か
に彼がステージ上で放つメッセージっていうのは、まともに聞いたら「堅い」とか「
クサイ」とか思われてしまうかもしれないんですけど、実は彼自身もそれをわかっ
ていて、だから自分だけの世界に入りこもうとしていたんですね。歌いたい歌を歌
うっていう、これほどシンプルなことをやり遂げるには、実はすごく凄まじい覚悟と
これほどまでに自分をとことん孤立させる集中力が必要だったとは・・・圧巻です。

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