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「ヤジとボク」

03/06/08
月刊少年ジャンプ(昭和50年3月号)
 ヤジローは知能の遅れた少年だった。ヤジローはしきりに彼の兄タロを苦手としていた。タロは少しでもヤジロー
に知能がつくように、愛情を持ってある秘薬を研究していたが、いつも自分に注射針を向けるタロをヤジローは避
けていた。そんなある日、タロの弁当を届けに大学へ行ったヤジローはそこで秘薬の実験対象となっていたネズミ
の202号を可哀相に思い逃がしてしまう。そのネズミを「ヤジ」と名づけたヤジローは、ヤジを自分の部屋でかくまい
ながら、いろんなことを教えてゆく。秘薬を飲んでいるヤジは驚異的なスピードで頭脳を蓄積してゆき、やがて・・・。
この物語は本当にボクの涙腺をとめどなくゆるくしてくれました。知恵遅れだからこそ、純粋に友情を感じれるのか
もしれない。それがたとえ人間以外のものにであっても。ヤジとヤジローの友情はいつまでも不滅です・・・。
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「山太郎かえる」

03/04/29
月刊少年ジャンプ(昭和55年1月号)
 流氷に乗って海をさまよっていたクマの親子が漁船と衝突し、親はスクリューに絡まって死んでしまった。残され
た子グマは「山太郎」と名づけられ、おみやげ屋のマスコットとして育てられた。SLのおじさん「しい六」に教わりな
がら徐々にクマとして目覚めていく山太郎。しかしひとつだけ普通のクマと違うのはSLの汽笛のまねをすることだ
った。山太郎としい六のふれあい、そして野生化した山太郎としい六の悲しい再会。なんだかすごく人間って生き
物が余計な存在に思えてくるんですよね、このエピソードを読むと。このクマの親子が流氷に乗ったのも猟師から
逃れるためだし、何だかんだいっても人間中心でこの惑星は周っているような感じがするんですけど「人間はそん
なに偉いもんなのか?」という疑問が浮かび上がる、動物ものの傑作ですね。
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「山の彼方の空紅く」

03/07/17
ジャストコミック(昭和57年5月号)
 小原正造は少年の時に父親に連れられ、乱伐により死にかかっていたこの山へ来た。そして一本一本木を植え
父と二代にわたってこの山を再生してきた。しかし、国によって今この場所は工場建設地にされようとしている。他
住人たちは立ち退いたが、正造一家だけはテコとしてそこを離れなかった。国は立ち退きを要求してもそこをどか
ない正造一家に対して、大砲を撃ったり恐喝を行うなどしたが、正造一家の意志は固く、国は困り果てた。そしてつ
いに国は正造一家に対し武力行使することを決断、ついにその時刻が来た時・・・!今の日本では考えられないこ
とですが、しかし全国では行政の勝手な計画によって自然を破壊されたり壊さなくてもいいものまで壊されている。
そして壊されようとしている。このお話は決して絵空事ではなく、明日にも起こりうるべき恐ろしいことだと痛感した。
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「野郎と断崖」

03/05/19
プレイコミック(昭和43年11月25日号)
 その脱獄囚は、道端である夫婦と赤ん坊の乗った車を脅して止めた。しかし道の前後方を警官隊に阻まれた
と思った脱獄囚は、彼らを連れて断崖を降りていく。しかしはずみで夫婦を殺してしまった脱獄囚は、残された赤
ん坊と二人きりになるが、だんだんやせ細ってゆく赤ん坊を哀れに感じた彼は、せめて赤ん坊だけでも助けてや
ってくれと警官隊に懇願する。ついに自分はどうでもいいから赤ん坊の命を救いたいと思った彼は、落石で頭を
負傷しながらも断崖を登りきったのだったが・・・。ある絶壁の断崖にまつわる不思議な話である。音っていうのは
人体に大きな影響を及ぼし、ついにはこんな風に人間を不思議な世界へと導くものなんだなあ。極悪非道の脱獄
囚も赤ん坊の無垢な笑顔にはかなわなかったというのが、悲しいながら、なんか読んでてうれしかった。

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