37

「聖女懐妊」

03/05/27
プレイコミック(昭和45年1月10日号)
 地球から遥か離れた星でひとり観測をしている観測員・南川ヒロシは、一緒に来ているアンドロイド・ロボットであ
るマリアに好意を抱き、その惑星に来て7年目の元旦に彼女と結婚した。マリアはヒロシの子を宿したいと望むが、
マリアはロボットであるためそれは無理な話だった。しかしふたりの幸せな生活も長くは続かなかった。フォボス特
殊刑務所から脱走してきた脱獄囚たちが観測所を襲い、ヒロシは殺されてしまうのだった。残ったマリアは脱獄囚
たちにこき使われ続けるのだが、そのうちに不思議なことにマリアのお腹がふくれてきたのだった・・・。人間に対し
て危害を加えられないようにプログラムされていたマリアだったがある日・・・。生理的にロボットが人間の子供を生
むことは不可能だ。でも不可能を可能にしてしまう想像を超える不思議な力が、宇宙にはあるのかも?
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「聖なる広場の物語」

03/07/07
月刊少年マガジン(昭和52年1月号)
 遠い遠い山奥の森の中に高い高い木があった。そこでは小鳥がたくさんいて、みな仲良く暮らしていた。しかしい
つからか大きなくちばしの乱暴者の鳥が住みついた。しかも二羽も!西の枝のゴーズ、東の枝のガバ・ガバだ。ニ
羽とも現れるたびに変身してくるのだが、それは「聖なる広場」といわれる場所に行って、「聖なる砂」というものを浴
びるからだった。しかしそこに行くまでに何度も死の危険が伴なうため本当に強い鳥にしか行けないとされていた。
枝の住人を守るといっていたゴーズも、身体の変化のために卵を差し出せと小鳥たちに要求してきたのだった。こ
のままではいけないと立ち上がったあるヒワは、ゴーズに「自分も聖なる砂を浴びたい」と申し出るのだが・・・。聖な
る広場・・・そこは人間が置き去りにした自然破壊の象徴だった。人間への警鐘以上のものをこの話には感じる。
3

「ゼフィルス」

03/04/12
週刊少年サンデー(昭和46年5月23日号)
 昭和20年・・・毎日のようにB-29の爆撃を受けていた日本列島。主人公は昆虫大好きな中学生の少年です。戦争
の最中、彼の唯一の楽しみは昆虫採集をすることでした。中でも蝶、しかも「ゼフィルス」というちいさな妖精のような
蝶を採ることを生きがいにしていた彼は、ある日蝶を追って入った芋畑で、芋泥棒の濡れ衣を着せられてしまいま
す。意地に賭けても真犯人を見つけ出そうとした彼は、深夜までその芋畑に張りこんで、ついに真犯人を見つけ出
します。が、その犯人は彼とそんなに年の違わない少年だったのですが・・・。このお話に出てくる特別高等警察(特
高)の刑事の目がギョロっと飛び出てるのが印象的。誰もをまずは疑うかのような彼の目も戦争の産物なのかも。
そしてその戦争は少年の生きがいである蝶の住む森も、そして寄り添い合う二人の愛をも焼き尽くしてしまいます。
森に隠れ住んでいたあの二人はあのあといったいどうなったのだろう・・・?
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「0次元の丘」

03/05/09
週刊少年サンデー(昭和44年3月30日号)
 ある日山岡少年が家に帰ると、弟の利男があるレコードを聴きながら泣いていた。そして自分はここに家の子じゃ
ないと言い出した。学校の先生に相談し、弟に再びレコードを聴かせてみると、意味不明なことをしゃべり出した。自
分はベトナムのリエンタ村に住む女性だと言う。しかもベルヌという世界的指揮者が指揮した「トゥオネラの白鳥」と
いうレコードだけに弟は反応したのだった。弟をなんとか救いたいと決意した山岡少年は、弟と同じ症状の子どもが
世界中に5人いることをつきとめる。さっそくベトナムへ飛んだ彼らは・・・。戦争の傷跡がむしょうに胸に突き刺さって
くる。自分の生まれた場所を守った家族の魂が彼らに宿っていたとは・・・。前世と現世とのはざまを描いたミステリ
ー。人は生まれる前にある丘を越えてくるという・・・ホントに不思議なお話です・・・。
4

「1985への出発」

03/04/16
月刊少年ジャンプ(昭和60年7月号)
 終戦後の1945年の日本。戦争孤児として収容所へ連れていかれた少年カズオは、そこで少女キミコ、6歳児のテ
ツと出会い脱走する。カズオの住みかだった洞窟に戻ってきた3人は、そこである老人に出会い介護する。次の日
外国人兵に洞窟を追い出された3人は昨日助けた老人と再会し、占い師だった老人は助けてくれたお礼に3人を占
うことに・・・そして出た占いはなんと3人は40年後に大金をつかむというものだった!そんなことを信じられない3人
はその占い師によって未来を見せてもらうことになる。そして異空間をさまよった3人が気がつくと、そこはなんと・・・
40年後の1985年だった!のだが・・・。戦後の少年たちが現代にタイムスリップしてきたらどんなことを感じるのか?
自分の父や母を殺した兵器がおもちゃとして売られているその現象。「戦争」をあまりにも遠い出来事とされてしま
いかねない現代に警鐘を鳴らす問題作だと思います。

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