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「荒野の七ひき」

03/05/04
月刊少年ジャンプ(昭和47年7月号)
 汎地球防衛警察同盟の決死隊、潮と味島は、ある星で敵の宇宙人連合軍の生き残りを捕虜にした。味島の不
注意で乗ってきた乗り物が爆発してしまった彼らは、二十日間もかけて砂漠を歩くハメになるのだが・・・。宇宙人
たちの身を挺した行動が、人間のエゴイズムをよりクローズアップさせる。ある惑星の者は自分の身を切り刻ん
で相手に食べさせることが正しい行動だとして実行し、またある惑星の者は自分の体の中に含まれている水分を
相手に吸わせることで助けようとする。自分の身はどうなっても、相手を助けるっていうこの精神が、その惑星の
人間の間では自然なことなのだ。ところが地球人だけが自分のことだけを考えて行動してしまう。それでも最後の
潮の判断が、やっぱり地球人もすばらしいんだってことを感じさせてくれて救ってくれてる。
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「虎人境」

03/06/15
週刊少年キング(昭和44年8月3日号)
 AWCテレビのディレクター・井袋五郎は世界じゅうからありとあらゆるビックリ人間を集めては視聴率を稼いでい
た。吹き矢の名人・キンタプ少年から、東南アジアのある場所にからだじゅうに虎のような刺青をし、病気の人間と
獣の魂を入れかえて治すという不思議な治療法を持つ民族がいることを聞く。彼はキンタプ少年やテレビクルー、
友人の黒川と共に、現地の愛国者同盟の邪魔に遭いながらもその民族の元へと向かうのだが・・・。これだけ近代
化された世界でも、まだどこかに未開の民族がいるに違いない。そこではきっと、文明人には予想もつかないさま
ざまな風習が残されているんだろうなあ。このお話のラストは想像を絶する恐怖に身を包まれるんですが、何でも
かんでも解き明かすという現在の風潮の方が実は間違っているのかもしれない・・・と感じた一編でもありました。
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「ゴッドファーザーの息子」

03/04/09
別冊少年ジャンプ(昭和48年1月号)
 再び彼の自伝です。戦時下の兵庫県。手塚少年の通ってる学校には明石という番長がいました。ヤクザの息子
で見るからに暴れん坊な彼は、女子といちゃついてる男子生徒がいれば粛清し、他校とのラグビーの試合の応援
に参加しない者には容赦なく暴力をふるうまさに番長を絵にかいたような少年でした。そんな明石とふとしたことか
ら仲良くなった手塚少年は、明石に頼まれ等身大の女の子の絵を書いてやります。やはり明石も年頃の少年だっ
たのですが周りに対するメンツから、これはふたりだけの秘密となります。そしてマラソン大会当日運動の苦手だ
った手塚少年は、明石の協力によって生涯初めて10位という入賞を果たします。そこで明石との友情の強さを知
る手塚少年・・・が、その友情も「戦争」のニ文字によって引き裂かれてしまいます。このように引き裂かれた友情
っていうのは、この時代にいったいいくつあったのか?最後の余韻が胸を締め付けますね。
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「ころすけの橋」

03/06/01
週刊少年サンデー(昭和53年2月19日号)
 山奥に父親とふたりで住んでいる少年は、「キヨモリ」と呼ばれるカモシカのボスをライバル視していた。少年の
父親は本業の仕事がうまくゆかず、母親と大喧嘩して母親は出ていってしまった。そんな淋しさを抱えていた少年
だったが、ある日カモシカの行列がつり橋に差しかかったとき、一匹の子供のカモシカがつり橋の木と木の間に
足を挟んで動けなくなってしまった。いくら引っ張ってもビクともしないそのカモシカを少年は「ころすけ」と名づけ、
雨風やころすけを襲おうとする野鳥や獣たちから、キヨモリと一緒に守ったのだった。そのときから少年ところすけ
とキヨモリの間に何かが芽生え・・・。エピソード後半では、人間と野生動物の共存が言葉では簡単に言えたとして
も、実はいかに大変かを思い知らされる。キヨモリところすけの尊い命の犠牲が、読み手に何かを考えさせる。

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