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「苦情銀行」

03/05/06
別冊サンデー毎日読物専科(昭和44年12月号)
 ある夫婦がことあるごとにケンカするようになってしまった。こりゃマズイと思った亭主は、仲直りするためにある
温泉にふたりで旅行へ行く。そしてそこで変わった形の人形を買うのだったが・・・。何かムシャクシャするごとにそ
の人形に文句を吹きこむとスーっとしてしまうというのは痛快。でもだんだん貯まってゆく「怒りのエネルギー」の大
きさは、はかりしれないものになるだろうなあ。そしてその人形を大量生産して、国民ひとりひとりに配ればきっと
政府に対する不満もなくなるだろう・・・という政府側の安直さ。ここいら辺の風刺もあいまって大人漫画の異色作と
して位置してる作品ですね〜。この作品のラストは、なんだかこの国の行く末を暗示しているようで、何となくですけ
どゾーっとしてしまいます。
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「暗い窓の女」

03/05/22
プレイコミック(昭和44年7月10日号)
 外山義治・由紀子の兄妹は禁断の恋をしていた。由紀子が会社に行っている間、彼女のことが気になってしかた
がない義治は、由紀子が秘書を勤める会社の専務・栗原の様子がおかしいことに気づき、ついに会社に乗り込ん
でいくのだが・・・。「近親相姦」という一般的にタブーとされているテーマを描くのは『奇子』を連想させるが、このエ
ピソードは最初から最後まで全編にわたって悲壮感が漂っている。義治は、友人の医師に「妹と結ばれる方法は?
」と質問している。何気ないことなのかもしれないけど、身内の人間と結ばれることに関してタブーとされているのは
確かに人間だけだ。このような問題を提起する作品を手塚先生はいくつも残している。これはいったい何を示して
いるのだろう?それは彼の心の中の闇の一部分なのかもしれない・・・と思ってしまった(笑)。
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「グランド・メサの決闘」

03/05/20
プレイコミック(昭和44年3月10日号)
 ある西部の町。スティーブは父親の仇で、倒した者の親指を二度と拳銃が持てないように吹き飛ばしてしまうエー
ル・マクラウドという拳銃使いに決闘を申し込んだ。グランド・メサという場所を決闘の場所に選んだふたりの勝負は
マクラウドに軍配が上がり、スティーブは両親指を吹き飛ばされてしまった。なんとかして拳銃以外の方法でマクラ
ウドに復讐しようとしたスティーブは法律家の道を選び、法律で復讐することを誓う。しかしいざ法律家となると今ま
で見えてこなかったものが見えてくるようになり、彼はついに意外な真実を知ることとなる。マクラウドを法律の力で
死刑にしようとしたスティーブは、皮肉にも自分の母親の愚かさと、父の死の裏に隠された秘密を知る。雨降って地
固まる・・・にしては両親指というあまりにも大きい代償になってしまったが、とりあえずめでたし。
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「クレーターの男」

03/07/01
「ザ・クレーター」シリーズ 少年チャンピオン(昭和45年4月1日号)
 アポロ18号の宇宙飛行士・ウイリアム・フロスト・ウイリーは、死の星とされる月で「月の活火山」と呼ばれる山を調
査していた。ところが機械の故障でその山から転落し、断崖に吊るされるように引っかかってしまった。通信装置も
壊れてしまい、死を覚悟したウイリーが襲ってくる死の恐怖と苦痛に耐えていたその時、調査中だった活火山が活
動を始め、蒸気がウイリーの身体を覆った。すると不思議なことにウイリーは酸素が切れた中でも死なず、何年も
何年も死をまぬがれたのだった。とほうもない年月が経ったある日、ウイリーは月に来た宇宙船を発見する。そし
てその乗組員たちの話を聞いたウイリーは・・・。地球上は今や核の恐怖に覆われている。これからもどんどん増え
てゆくかもしれない。そしてそんな今日の地球の行く末がこの物語のラストのようにならないよう、願いたくなる・・・。

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