ある温泉の古びた旅館が火事になった。新婚旅行でこの旅館に泊まっていた主人公の青年は、トランクや自分の |
荷物が燃えることなど省みず、ただ古びた畳を一畳持って逃げ出してきたのだった。それには深い訳が・・・。彼は |
受験生の頃、勉強に身を入れるためその旅館にやってきたことがあった。ところがその明治20年に作られたという |
旅館のある部屋には、夜な夜な幽霊がでてくるという噂があり・・・。人間は古きよきものを懐かしがるという素晴らし |
い感覚を持っています。でもいざそのよきものがなくなる瞬間というのはあまり気づかないっていうのが人間の欠点 |
だと思います。なくなってから大切なものだったと気づく・・・こんな風に思われている古きよきものはいったいいくつ |
あるのでしょう?このお話に登場する”座敷わらし”もある意味「古きよきもの」なのです。でも人間達の便利さの追 |
求のために彼もまた失われてゆくのです。ヒジョーに複雑な思いがしますね。 |