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「イエローダスト」

03/05/13
ヤングコミック(昭和47年7月12日号)
 沖縄のある米軍キャンプ地で米軍子弟の子どもたちが乗ったバスがある集団に襲われた。犯人グループはある
建物に立てこもり、別の基地から大量の食料と水を奪っていたため、長期戦も辞さない構えだった。犯人グループ
はベトナム戦争へ駆り出された男たちだったのだ。そして米軍子弟を狙ったのは、自分たちをベトナムへ送った上
官に対する復讐のためだった。ところが彼らが奪い取った大量の食料には、ある薬品が含まれていたのだが・・・。
まったくもって狂気の世界。戦争に対して厭戦ぎみになった兵士を戦場に駆り出すために脳を一時的に刺激する薬
が含まれていた食料のために、子供たちは悪魔へと変身する。何とも後味の悪い終わり方をする作品だが、戦争へ
の恐怖と愚かさを訴えているような気がする。そして日米関係への疑問も・・・。
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「生けにえ」

03/06/30
「ザ・クレーター」シリーズ 少年チャンピオン(昭和45年3月18日号)
 「ザ・クレーター」シリーズの中での最高傑作!(←だとボクは思います(笑))2000年前のメキシコでは今まさにあ
る少女が生けにえとして首を切られようとしていた。その時「あたしはあと10年生きたい。そして平凡な普通の人と結
婚して子供をつくり幸せな家庭をもって、それから死にたい」と強く念じた彼女の思いが通じたのか、どこからともな
く神様の声がして、そののぞみをかなえてくれると言った。ただし10年経ったら再びこの場所へ戻ってきて首を切ら
れるという約束をして・・・。時空を超えた彼女は記憶をなくして現代の海を漂流していた。そして辿り着いた島で隆
一という少年と出逢い・・・。彼女は隆一と恋に落ち、結婚して子供を産み、幸せな家庭を築く。今の日本では当たり
前のようなことでも、生きることを許されなかった少女にとってはそれは至福のひとときだった。胸に刺さる作品。
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「いないいないばあ」

03/04/17
月刊少年ジャンプ(昭和56年1月号)
 ある温泉の古びた旅館が火事になった。新婚旅行でこの旅館に泊まっていた主人公の青年は、トランクや自分の
荷物が燃えることなど省みず、ただ古びた畳を一畳持って逃げ出してきたのだった。それには深い訳が・・・。彼は
受験生の頃、勉強に身を入れるためその旅館にやってきたことがあった。ところがその明治20年に作られたという
旅館のある部屋には、夜な夜な幽霊がでてくるという噂があり・・・。人間は古きよきものを懐かしがるという素晴らし
い感覚を持っています。でもいざそのよきものがなくなる瞬間というのはあまり気づかないっていうのが人間の欠点
だと思います。なくなってから大切なものだったと気づく・・・こんな風に思われている古きよきものはいったいいくつ
あるのでしょう?このお話に登場する”座敷わらし”もある意味「古きよきもの」なのです。でも人間達の便利さの追
求のために彼もまた失われてゆくのです。ヒジョーに複雑な思いがしますね。

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