この小説はフィクションです。
このサイトは引っ越しました。新しいアドレスは
http://crystal.cside21.com/
です!last up date2/14
転載禁止、著作権保持 produced by 藍 美麗 of 301project
プロローグ僕は、マイヤーズのロックをもう一口飲んだ。もう五杯目のロックだ。いい加減酒浸りの生活とはおさらばしたいとは思うのだが、人生なかなか思うようには行かないものだ。
メールソフトを起動し、新着メールのチェックをする。何も考えなくても勝手に身体が動いてMacを操作してくれる。身体と頭がばらばらになったかのような錯覚すら覚えてしまう。この身体に僕の頭は必要ないのだろう。
e-メールではない現実の郵便物も山のように届くが、見る気が起きない。
現実世界の出来事は、今の僕にはあまりにリアルすぎて直視できないというのがその理由だ。インターネットのヴァーチャルな空間、その程度のリアルさしか今の僕の神経には耐えられない。
いつの間にこんなに弱くなってしまったんだろう。
サーバからメールのDL(ダウンロード)が終わったので、サブジェクトの一覧が表示される。
珍しくアッシュからDM(ダイレクトメール)がきていた。ずいぶん久しぶりのような気がする。
『やあ、久しぶり、元気でやってるかい?
まさかとは思うがまだ落ち込んでるんじゃないだろうな?
#わかってるよ。おまえはおセンチだからな、自分がいけないなんてまだ自己批判してるんだろう。
でもな、いつまでも悩んでるなよ、過去のことは過去のこととしていつまでも引きずるなよ。
おまえが落ち込んでるとろくなことになんないからな。
いいな、いまこの瞬間を生きるんだぜ。
ところで本題なんだが、今度何人かで新しいサイトを立ち上げようかと思ってな。
藍にも手伝ってもらおうかと思ってるんだよ。
今度ゆっくり話したいなと思ってるんだが、時間とれるか?
又連絡するよ、元気出せよ。』
*********************
あ い:つまんないねえこのごろ。
じゅん:MLのメールも少なくなったしね。
皆何してるのかなあ、忙しいのかなあ。
なんか皆元気ないよねこの頃、あいはどう?
離婚のショックから立ち直った?
あ い:まだつらいよ。今まさにどん底状態。
じゅん:又オフ会やって飲みに行こうか?
あ い:うん行きたい。何か楽しい事したいよ。
じゅん:じゃ、MLにメールだしとくね。オフ会やりましょうって。
あ い:さんきゅ。
じゅん:じゃね。
あ い:おやすみー。
いま、午前11時半。
僕は空になったグラスをもってキッチンへ行った。
妻のいなくなった家の中はがらんとしていて、さみしい。心の半分が空洞になってしまったようだ。
結婚して4年目、何かがうまく行かなくなりはじめ、2人の仲はあれよという間に悪化しあえなく離婚。
僕は今喪失感で仕事も何も手に付かない有り様だ。
そして毎晩酒を飲みながらインターネットをうろうろして時間を潰している。ただ単に生きているだけという有り様だ。我ながら情けないが、やはり離婚は相当応えてるらしく自分でも不思議なぐらい何もする気が起こらない。いっその事このまま死んでしまったら楽なんじゃないかとも時々考える。
勿論酔っているだけなのだが、そう考えはじめるともうだめだ。どんどん落ち込んでいく。
自分は生きていても何の役にも立たないとか、暗くて迷惑になるから皆も僕の死を望んでるんだとか、そんなことばかり考えるよになる。果ては、自殺の方法を考えはじめるのだが、勇気が無いためにいつまでたっても次の日目が覚めてしまう。
そして又酒を飲みながら、チャットやらeメールやらで「つまらない、たいくつだ。」と愚痴をこぼすだけの無為な毎日が過ぎてゆく。外に飲みに行けば気が晴れるだろうって?外に飲みに行くとそこには1番見たくないものがあるんだ。そう、幸せそうな恋人達。この世の春という春、幸せという幸せを満喫し謳歌している彼らを見ていると、自分がどんどん小さくなっていくような感じがするんだ。小さく卑屈になっていく自分を見ていると思わず哀れみの涙が出てしまう。家でインターネットしているぶんには幸せ満開のカップルもいないし、次の日目覚めたら道路で寝ていたなんて事にもならないし安心して酔えるんだ。
それは、ごくたまには
「このままじゃいけない。何か自分のやるべきことがあるんじゃないか。」
とは思うのだが、それも今や小さなささやき声にしか過ぎない。
何もしないからつまらないという悪循環にはまりこみ、今はほんとに人生最悪の時なんだ。
空になったグラスに氷を入れ、マイヤーズのダークラムをなみなみと注ぎ、つかの間の幸せを感じながらMacの前に戻った。
いつの間にか、ぱんだからメッセージがきていたようだ。いつきたんだろう? この頃記憶が一時的に途切れることがよくある。途切れている間に自分がこの世からいなくなっていてくれればいいのに。
悲しいことに記憶の途切れは一瞬で、すぐにまた現実が舞い戻ってくる。
ああそうだ、ぱんだからのメッセージだ。もちろんぱんだというのは本名じゃない。そんな名前のやつがいたらお目にかかりたいもんだ。ぱんだというのはいわゆるハンドルネームというやつで、自分で付けるあだ名のようなもんだ。
インターネットの世界では、皆このハンドルネームという名前でしかわからない。本名を出しているやつなんてごくまれだ。おお、なんというお気楽な世界なんだ、インターネットは。誰でもなりたい人になって生きていける。自分のイメージどうりに自分を表現できる仮面舞踏会の場、それがインターネットだ。
聞いたところによるとネットおかまというのも居るそうだ。僕はまだであったことがないが、女のようなハンドルをつけて女言葉でしゃべればもう誰にもわからない。姿を見せないかぎりは。
文字だけの世界とはなんて楽なんだろう。こんなに酔っ払い自堕落な自分の姿を見せなくてすむなんて。
かくいう僕のハンドルは、藍 美麗、略して「あい」だ。でもネットおかまじゃないよ。男だってちゃんと言ってる。それでも間違えてラブレター送ってくるやつも居るのだが。
メッセージのフローターアイコンをダブルクリックしてぱんだのメッセージを開けてみる。
そういえば、僕はぱんだの本名をまだ知らない。結構永いつきあいだというのに。ぱんだとはどこかのMLで知りあい意気投合してからいままで、いろんな情報を流しあう仲。MLっていうのは、メーリングリストの略で、MLサーバにメールを出すとそのメールがメンバー全員のところに届くという、いわゆる情報交換の場だ。そのMLのメンバー同士が実際に街であって親交を深めるのがオフラインミーティング、通称オフ会だ。このオフ会でもぱんだに会ったことはまだ無い。いつもすれ違ってしまっているらしい。
というわけで、いまだにぱんだのことは男なんだろうということぐらいしかわからない。
でも、いいやつであることは確かなようだ、今のところ。
マイヤーズを一口飲み、ぱんだからのメッセージを読む。
「オンラインになってるって事は、まだ起きているみたいだね。どうせ又酔っ払ってるんだろうがね。
まだ時間があるんだったらチャットルームに来ないか? 面白いもん見つけたんだよ。」
マイヤーズをもう一口飲み、マルボロライトメンソールに火を付ける。
たばこを口にくわえたまま返信メッセージを作成する。
「ああ、いくよ。そんなに酔っちゃいない。」
メッセージをネットの海へ送りだし、チャットソフトを起動する。ぱんだのアドレスにアクセスしパスワードを入れルームにログインする。表示を待つ間にマイヤーズを一口。たばこの灰がキーボードに落ちる。
その灰を吹き飛ばしてモニターに目をやるとそこにはぱんだと美樹がいた。
ぱんだ:やあ、きたね。
美樹:ハイ>藍
あい:やあ。all
ぱんだ:まだ落ち込んでるそうじゃないか。いい加減に飽きないか? 落ち込んでる状態に。
美樹:もう3ヶ月も経つのよ、離婚から。なさけない。
どうも僕は、皆からも情けないやつだと思われているらしい。仮面舞踏会さまさまだ。
美樹:まあ、落ち込むのはあなたの自由だけど。
あい:酒がうまい。
美樹:ちゃんとご飯食べてる? 身体壊すわよ、そんなにお酒ばかりじゃあ(ーー
ぱんだ:女と違って男はデリケートなんだ。立ち直るのには時間がかかるんだよ。
美樹:だらしがないわよ。あたしがカツいれてあげようか?
あい:遠慮しとくよ。
ぱんだ:ところで、今日ネットしてたら、面白そうなサイト見つけたんだ。>あい
あい:どんな?
美樹:あいは、精神世界系のことに興味があったでしょう?
あい:それはもう昔のことだよ。
ぱんだ:そうか?それにしては普段言ってることは、それっぽいぞ(^^v。
あい:とにかく今はニューエイジとか、精神世界とかは興味がない。
美樹:人間変われば変わるもんねえ。あんなにニューエイジずっぽりだった人がねえ。
あい:とにかく今はあんまりその手のは興味がないんだ。
ぱんだ:そうか。気に入ると思ったんだがなあ。>あい
あい:あの、ワクワクだとかマイトレーヤについて行けば救われるだとか言うアメリカ産ニューエイジ特有の能天気さが鼻についちゃってね。チャネラーも今一信用できないし。
正直に言おう。昔は、そのニューエイジだの精神世界だのといったうさんくさいモノに魅かれていたことは事実だ。ずいぶん本も読んだし、瞑想のワークショップだのヒーリングスクールだのといった、一見素晴らしそうでいて、それにしてはなんの実感も効果もないくだらないものにもお金をつぎ込んだ。
特に興味があったのが「氣」というやつで、TVでの気功の実験などを見て
「これだ、これこそ本物だ。」
と思い込み、巷にあふれる気功師に会いに行ったり気功教室に通ったりした。
しかし、それらも何の実感もともなわず、ただひたすらにお金ばかりかかってしまうので、いつしかそういう世界から距離を置くようになっていった。
それが、ここ何年か興味が再び燃え上がり、今回はインターネットという心強い味方も得て、特に今回は”癒し”ということを中心に調べはじめていたところだった。
三ヶ月前に離婚するまでは。
ぱんだ:いままで、君の気に入らないところを紹介したことあったか?
おまえの好みはよくわかってるよ(^^
宗教嫌い、金儲け嫌い、押し付けられるの嫌い、ワガママ嫌いだろ?
あい:なんだいそのワガママっていうのは?
ぱんだ:自分の思う通りに生きろってやつのことさ。人のことなんか気にせずにってね。ワクワクする ことをしろとかさ。
人の言うなりにはなるのはやめましょうとかさ、いろいろあるじゃん。
美樹:いわゆる、アメリカ産ニューエイジの教えってやつでしょ?
あい:あの”教え”ってさ、ただわがまますればいいってもんじゃないとは思うんだけど。
でも、実際問題として、ただのわがままが正しいって事になっちゃっただろう?
自分勝手に生きて行くっていうことが正しいなら、他人なんていらないじゃん。
一人で無人島にでも住んでりゃいいんだ。
美樹:でていった元奥さんがそうだったんでしょう?
ぱんだ:ヲイヲイ・・・(^^;
そう、でていった元妻はそういう考えだった。もとはと言えば僕がニューエイジにのめりこんでいき、買てきた本を妻にも読ませていたのが原因なのだが。その中でもワクワクという考え方にいたく共感した彼女は、離婚して独り暮らしするということにワクワクを感じると言い出したのだ。
「おいていかれる僕はどうなる?」といったら、
「そうやって縛りつけようとするのね。」といわれた。
ワクワクすることは、僕だってしたい。そりゃだれだってそうだ。でも、したくないことはしなくていいなんて言ってたらこの世はどうなるっていうんだ。
ニューエイジ教に染まったやつらは、
「皆が皆好きなことをしてさえいたら、戦争もなくなるし幸せになれる。」
なんていうけれど、僕にはそうは思えない。やつらは考えが甘いと思う。
だってそうじゃないか、少し考えてみればわかる。
例えば、死体を洗うバイトがあると聞く。あまり遣り手がいないので大変高価なバイトだという。でもそれでも誰も来ないんだそうだ。そんな仕事は誰だっていやなんじゃないか?そして、そういうやりたくはないけど、やらねばならない仕事なんてたくさんあるだろう。だれもワクワクしてくれない、でも必要不可欠な仕事は誰がするんだ。
いやなことをやらなくていいならこんなに楽なことはないが、だからといって人生それでいいのかとも思う。
時にはつらく悲しいことがあり、それに耐えることを学ぶのも大事なことなんじゃないかと思う。
山あり谷有りでバランスがとれているのであって、人生楽しいことばっかりだったら・・・それは・・・そっちの方が楽しいか・・・。
ああちくしょう。
とにかく僕の妻は、ワクワク教になっちゃったんだ。
そして、”あなたと居てもつまらない。”といって出ていった。
おかげで残された僕は、もともと嫌いだったワクワクがもっと嫌いになった。
あい:人生楽しいことばかりだったら、こんなにいいことはないね。
美樹:藍みたくいつまでもいじいじ悩んでるよりはよっぽどいいと思うけど?
あい:うるさいよ。これでも気にはしてるんだぜ。
ぱんだ:オレ逃げよっと。
確かに今の僕は最低なのかも知れない。うだうだと愚痴を言ってるただの酔っ払い、それが今の僕さ。そんなことは自分でもわかってはいるのだが・・・。
美樹:どうしたの? 黙りこくっちゃって。
いいすぎた? ならごめん。
あい:いや、いいんだ。確かにその通りだから。
もうそろそろ寝るよ。教は飲みすぎたみたいだ。
おやすみ。
美樹:おやすみ。ごめんね。
ぱんだ:あとで、メールでURL送っとくからそのサイト行ってみな。
あい:ああ、わかった。
見に行くつもりは毛頭なかったが、一応友人に敬意を表してそういったまでだ。
あい:で、なんてサイトだっけ?
ぱんだ:@LOVE
美樹:あたしも見に行ったけどなかなかお薦めのサイトよ。
あい:わかった、明日にでも見に行ってみるよ。
じゃ、おやすみ。
ぱんだ:ばいちゃ(^^
美樹:おやすみー
@LOVEだって?
胸の奥底、はるかかなたにある記憶が揺れた。
次の日起きるともう午後1時だった。
どうやら酔った勢いでソファで寝てしまったらしい。身体のあちこちが痛んだ。ラム酒のいいところは二日酔いにならないところだ。二日酔いにはならないがまだ酔ってる。おかげで身体の痛みはそんなに気にならなかった。
さすがにお腹が空いていたので、大きめのパスタパンにお湯を沸かし、パスタを作ることにした。
塩を一掴みいれた沸騰したお湯にディ・チェコを一掴み放り込み、アルデンテに茹であげる。パスタがゆで上がるのを待つ間、あさりの水煮缶があったので、それを加熱しパスタソースを作る。
パスタを食べ終わると人心地がついた。
体全体が汚れきった感じがしたので、シャワーを浴びた。ボディソープを使い身体が真っ赤になるまで洗った。重苦しい気分を洗い流そうとしていたのかもしれない。しかし効果はあまりなかったようだ。
相変わらず落ち込んではいたが、それでも少しは気分が良くなった。
昨日使ったままだったグラスを洗い、氷を入れ、マイヤーズの瓶をつかみ・・・・それをまたもとに戻し、冷蔵庫の中にアイス珈琲があったので、それをグラスに注いだ。
いつもだったら、又酒を飲んでいたのだろうが、今日は何かが違っていた。
@LOVE
興味はないが何故か気になっている。いや、気になるのだから興味はあるのか。
自分でも何を言いたいのかよくわからない。何を動揺しているというのだ。いや、動揺なんかしていない。疲れているだけだ。そうだ、疲れているんだ。
動揺を隠そうとして
グラスを手に持ちアイス珈琲を一気に飲んだ。
手が震えて、グラスの氷が乾いた音を立てた。
その音と重なるようにして、澄美樹った鈴のような音が部屋に響き渡った。
キィーーーンーーーー。
な・なんだ?
思わずあたりを見渡した。
部屋の・・・
部屋の雰囲気が・・・・
変わっていた・・・・。
どこがどう変わったとはうまくいえない。
強いて言えば淀んだ空気が一掃されたとでも言おうか。
空気が澄美樹ったところで部屋の中を唖然と見ていると、突然、部屋の散らかりようが気になってきた。こんなごみ溜めの中にいままで暮らしていたというのだろうか。
ゴミの臭いに息が詰まるような気がして、窓と言う窓を全開にし、それだけでは足りずに窓から顔を突きだし息を吸った。
数回深呼吸を繰り返すと、頭の中が又少しすっきりしてきた。
少し落ち着いて窓の外を眺めると、そこは・・・・やはりごみ溜めのようだったが、それでも部屋の中よりはいくぶんましに思えた。
何故だか急に緑が見たくなってきた。
こんな都会の真ん中に、山だの川だのがあるはずもないが、そうだ中央公園に行けば木はあるだろう、いくらなんでも。
そう思うと居ても立ってもいられず、ごった煮のようになっているクローゼットから背中に大きなロゴのかいてある白いTシャツとジーンズを取りだし、それを身に付けると急いで外にでた。
外にでるのは久しぶりだった。
部屋の外の世界には喧騒が渦巻いていた。車がぎっしりと詰まった道路、ひっきりなしに聞こえるクラクションの音、店のスピーカーから流れるけたたましい音楽、そして道を行き交う人間達の無表情だがそれでいて不機嫌そうに見える顔、顔、顔。
ナンダ コノ イワカンハ
街の毒気に当てられ少しぼうっとしていたらしい。
怪訝そうな顔をこちらに向け、しかし立ち止まるでもなく足早に通り過ぎる歩く不機嫌達。
気を取り直して、中央公園に向けて歩きだす。足になじんだリーボックのエアロビックシューズが素足に心地よい。
歩く不機嫌達の流れに逆らって、緑を目指して歩みを進める。ささやかな反抗というところか。
中央公園は、ここら辺で1番大きな公園だ。公園の中には、たしか木に囲まれたベンチがあったはずだ。そう思うと自然と足も速まる。早く木の中に入りたい、緑のバリアーの中に。
もう9月だというのに、午後3時の太陽はぎらぎらと輝き、汗が出てきた。
途中で見つけたコンビニに入り、ミネラルウオーターを買い、歩きながら飲んだ。
汗は相変わらず出てくるが、不快感はない。かえって汗とともに身体の中の汚れが排泄されているような心地よい感じがした。
中央公園に入ると、何故かしらほっとした。
小さな森のような木立の中にベンチがあった。記憶の通りだ。ちょうどベンチが空いていたので、そこに腰を下ろしミネラルウオーターの最後の一口を飲み干した。
夕刻の柔らかくなった日差しが汗ばんだ身体に心地よかった。
@LOVE
ふっと心に浮かんだ。
心が騒いだ。
なんなのだろう?
はじめてみる単語なのに妙に懐かしい響きがある。
”アットマーク・ラブ”と、口に出してみる。
何だかほっとするような感じがした。
やっと出会えた、という感じに近いかもしれない。
ぱんだはいままでいろいろなサイトを発見しては僕に教えてくれた。
ぱんだ自身のお気に入りは、チャネリングのサイトだった。雑多なチャネリングサイトを教えてくれたが、どうも僕は、あのチャネリングというやつを信用できないでいる。多重人格の変種なんではないかと思っているのだ。
なぜなら
僕にはそんな声など聞こえてきたためしが無いからだ。僕は聞きたがっているというのに、巷のチャネラーは皆向こうから声を掛けてきたというんだ。そんなのありか?だったら僕に声を聞かせてくれ。
昔ニューエイジに凝っていたころ、瞑想のワークショップなどで、他の人は天使を見ただの、守護霊が話しかけてきただの、ハイアーセルフと語り合っただのという体験をシェアしていたが、僕にはなにもなかった。僕は、何も見ず、何も聞かず、何も感ぜずにただ座っていただけなのだ。
正直言って他の人がうらやましくなかったわけではない。そりゃそうだ、何か見えるだろう、何か聞こえるだろうと言う期待をもってワークショップを受講していたんだから。その期待に安くもない金を払っていたのだから。
数あるワークショップの中から、パンフレットの”受講生の体験”を比較し、ああこの人なら何か見せてくれるかもしれない、感じさせてくれるかもしれないという淡い期待を抱いて受講するのだから。最初のうちは自分が未熟なせいで感じないんだと思った。だが、だんだん数をこなすにしたがって、ちがう面が見えてきてしまったのだ。
そう、金儲けだ。
どんな商売だって金がかかる。それは、こういう業界だって同じなのだ。会場費、パンフレットの印刷、人件費、その他諸々。それはしょうがない、必要経費だとしよう。
だが、あのばか高い値段は何なのだ。たったの2時間のセミナーで8万円というのもあった。いくらなんでもぼり過ぎってもんだろう。
まあそれに気づくまでにはずいぶんと時間とお金を使ってしまった。
何年にもわたるセミナーとワークショップの結果は、借金の山だった。
それでも、何かわかれば、何か変わればまだ良かった。何もわからず、何も見えず、何も聞こえず、何も感じない、僕自身は何も変わらなかったのだ、受講前も受講後も。
他の受講生が、興奮に顔を輝かせ、自分の体験を皆にシェアしている間中僕は自分の番が来たらどうしようかと思ってドキドキしていたんだ。なにしろ何もないのだから・・・。
僕が鈍感なだけか、それとも他の人がおかしいのか。僕は自分が鈍感なのだと思うのはあまりに悔しかったので、他の人がおかしいのだと思うことにした。
みんな、さみしいから、そんな幻覚を見ているのだと。そうだそうにきまっている。なんだそうか。
・・・一番さみしいのは僕だった。
いつの間にかあたりは夜に移行することにしたらしい、暗くなってきていた。
ふと目を上に向けると、木立の間から夕焼けが、僕を優しく包んでくれていた。
急に涙が出てきた。
自分がとてつもなく小さく感じられてきた。
夕焼けはこんなに小さな僕を、やさしく、あたたかく見守り、包み込んでくれている。
あとからあとから止めどなく涙が流れ出してきた。離婚したときでさえ泣かなかったというのに。
涙を流すというのは気持ちがいいもんだと思った。心のしこりが涙と一緒に流れ出し、溶けていってしまうようだ。
又少し涙を流した。
あたりはすっかり暗くなり、空気もひんやりとしてなかなか心地よかった。まだ寒いというほどではなかった。
僕は、あのごみ溜めのような部屋に帰りたくなかったので、そのまま公園のベンチに仰向けになった。
星が瞬いていた。
都会のスモッグに遮られて、その輝きは切ないほど小さく弱々しかったが、それでも確かに僕には、その輝きが希望のように思えた。
そう、夜空には希望が瞬いているのだ。
いくらそれが小さく微かだとしても。
夜空の希望は、数えきれないぐらいたくさん瞬いていた。
目の前の明るさに目が覚めた。
いつの間にか眠ってしまったらしい。
僕は、公園の中の木立のベンチにいた。
起き上がってみると、まだ周りは薄暗かった。まだ夜が明けたばかりなのだろう。空気は、凛として澄み渡り、気高いばかりの雰囲気を漂わせていた。
小鳥達の声が聞こえる。
あたりはだんだんと暗やみから姿を現し始め、輪郭がようようとはっきりしだし、現実世界が姿を現しつつあった。
小鳥達の歌がだんだんと活発になり、僕のまわりじゅうに小鳥の存在が感じられた。
しあわせだった。
そう、突然にして僕は、幸せのまっただ中にいる自分を発見した。
空気の中にさえ喜びが満ちあふれている感じがした。寂しさなどみじんも感じなかった。
ただ僕は、喜びの中に鎮座ましましていたのだ。
そろそろ街が動きだしたようだ。少々騒がしくなってきた。
僕は、木立のベンチをあとにする。
部屋に帰る途中に見つけたコンビニでゴミの袋のパックを買った。
部屋に入るなり目に付くものを片っ端からゴミ袋に入れて行く。うまい具合に今日はゴミの収集日なので、いっぱいになったゴミ袋を集積場までもっていった。又部屋に戻り、さっきの作業の続きをする。
いらなくなったもの、役に立たない物体、古い感情、つらい思い出、そんな雑多なものを全部ゴミ袋に食べさせ、そして捨てた。
ゴミが片づくと、続いて部屋の掃除をはじめた。部屋がきれいになるにつれ、こころなしか部屋の中が明るくなったような感じがするもんだ。
部屋の隅、家具のすき間に淀み固まっていた古い感情が掃除が進むにつれ、ひとつ又ひとつと無くなっていく。
お次は洗濯だ、クローゼットの中のごった煮のような衣類を洗濯機にぶち込み、洗濯をはじめる。洗い終わった衣類を、太陽の光に当てて干す。気持ちがいい。
あらかた掃除と洗濯が終わったところで、昨日から何も食べていないことに気づいた。
ふと思い立ち、むかし精神世界かぶれだったころに行きつけだった自然食レストランに久々にいってみようと思った。もう何年も御無沙汰している店だった。
その店まではマウンテンバイクで15分ほどの距離にあった。結婚した当初は、よく妻とどっちが先に店に着くか競争したものだ。いつも僕が負けていたが、妻の傍若無人な運転にはいつも冷や冷やさせられていた。
久しぶりのバイクは気持ちが良かった。心なしか行き交う人々の顔も穏やかに見える。道路も空いているし、いつも殺人的雰囲気を漂わせている自動車も今日に限っては大人しかった。
昨日とはなんという違いだろう。
バイクは風を切って疾走する、しあわせのなかを。
ちょっと心配だったが、店はまだ同じ場所にあった。店構えも変わっていない、昔の記憶のままだった。
エル・ヴィエント・・・風という意味なんだそうだ。
スペインのリゾート地風の作りで、白い漆喰の壁が妻のお気に入りだった。
僕は、バイクのスタンドを立てて、店の中に入る、まるであの頃のように。
チリーン。
ドアに取り付けてある鈴がきれいな音で僕の訪れを知らせた。
「おやおや、こんなに早くから誰かと思ったら。ずいぶんお久しぶりじゃないか。」
店のマスターが、熊のようなヒゲ面に温かいほほ笑みを浮かべながらやって来た。
手を差し出してくる。お客さんとは必ず握手するのが彼のポリシーなんだ。
僕は、彼の大きく温かい手を握り返した。彼の手に触れていると安心が伝わってくる。
まるで優しい父親のような。
妻はこの店に来るのが好きだった。マスターに会うのが楽しみなんだといつも言っていた僕は、ちょっと嫉妬していたが、でも、今は妻の気持ちが良くわかった。
涙で視界がぼやけた。
「ほんとに久しぶりだ。何年ぶりだろう?いつも一緒に来ていたあのカワイイ奥さんはどうしたんだい?
今日は一緒じゃないのか?まさかお前さんが競争に勝てるわけはないからなあ。」
「離婚したんだ。三ヶ月ほど前だったかな。何だか今日はここに来たくなっちゃってね。」
マスターは、手を握ったまま僕の目をのぞき込む。何も見逃さないぞとでもいうような目だった。
心の中まで見透かされているような、それでいてあたたかく優しい目。こんな目をしてるのは彼以外に僕は知らない。
長らくマスターのこの目の事を忘れていた。今こうして彼の目に見つめられていると、過去の様々な思い出が心の隠し場所から浮かび上がってくる。
涙でさらに視界がぼやけてくる。彼の目も今ではぼんやりした墨のようにしか見えない。
彼は何も言わずに右手を僕の胸にそっと当てた。
彼の手のひらの温かみが胸の中に直接入ってくるようだ。胸の中の方からじんわりと温かくなってきた。
「ここが・・・・・からっぽだったね。つらかっただろうに。」
涙は今やぼろぼろと流れ落ちていた。
「泣きたいときは泣く。男だからって泣いちゃ恥ずかしいなんて思わないで。
泣くのを我慢しすぎると心が死んでしまう、そして何も感じなくなっていく。
そういう人はたくさんいるよ、心の死人だ。
いいね、泣くのを我慢しないこと。」
彼は僕の肩に手を回し、オープンキッチンの周りにしつらえてあるカウンターのスツールへと導いた。
「ここ何ヶ月か、ひどい状態だったらしいね。心が空っぽだったよ。
でもつい最近、ほんの微かな、小さいけど何か希望のようなものが生まれたらしいね。違うかい?」
「昨日の晩、夜空を見ていたら星が輝いていたんだ。ほんとに小さくて微かだったんで注意してみなければ見えないような星だったけど、希望なんだってその時思ったよ。」
「いくら小さくても無いよりはあったほうがいいさ、希望は。
そうか、昨日の晩ねえ。昨日の晩は曇ってたはずだが・・・まあ、お前さんが見えたっていうんだからそうなんだろうよ。」
マスターは、ちょっと考えながらいった。
「ところでハラもへってるんだろ?スペシャルランチなんかどうだい?」
僕の返事も待たずに彼はキッチンに入り料理をはじめてしまった。
「できるまでこれ飲んでてくれ。
無農薬のグアバジュースだ。力湧いてくるぜ。」
グアバジュースがジョッキになみなみとつがれて出てきた。
この店は何でも豪快なんだ。マスターの性格なんだろう。ちまちましたもんは嫌いなんだ。
グアバジュースを一口飲んでみた。
うまい。とろりとした甘味のあるエネルギーの塊のような液体が、喉を通り、胃へと流れていく。なんだか力の塊でも飲み込んだような感じだ。
「これ、うまいよ、マスター。ほんとにうまい。グアバジュースがこんなにうまいもんだなんて知らなかったよ。」
「食べ物は何でもうまいんだよ。手塩をかけて愛情込めて育てられ、愛情あふれる料理人に調理されれば、まずいもんなんてあるはずがない。いつもいってるだろ。」
僕はグアバジュースをもう一口飲んだ。
うまい。
「でもこれはほんとうにうまいよ。」
マスターはにやっと笑うと、宮廷の道化師のような大げさなお辞儀を返した。
僕は思わず笑ってしまった。
「お、やっと笑ったな。
ほれ、できたぞ。本日のスペシャルランチだ。」
でっかい皿の上に乗ってたのは、特大のチーズバーガーだった。なみのハンバーガーの優に四倍はあるだろうと思わせる大きさだ。大きいのはいいが、いったいどうやって食べるのだろう。
「なんだいマスター、これは? これじゃチーズバーガーのお化けだよ。」
「文句は食ってからいえ、食いもんがでたら温かいうちにさっさと食う、それが礼儀ってもんだろう。」
それはわかってはいるが、実際に食べるとなると戸惑ってしまった。手で持つには大きすぎるのでナイフで十文字に切り込みをいれる。ホットケーキを切るときの要領だ。
四分の一の大きさになり、やっと持てるようになったその扇型のチーズバーガーにかぶりつく。
うわ、これは・・・
「マスター! これ、うまいよ! うん、うまい! 今まで食べた中で最高のチーズバーガーだよ。」
マスターは得意げに笑ながらいった。
「お前さん、ボキャブラリー少ないねえ。’うまい’しかないのかよ。まったりとして、とか言えよ時には。まあいいや。
バンズはウチで焼いた自家製、中の野菜もバンズも無農薬有機栽培のもので、ミートはモノホンの肉だ、今日のはな。いつもの大豆加工肉じゃない。北海道で自然放牧されて大事に育てられた牛の肉だ。もちろんその牛のえさも100%無農薬。チーズはその乳牛から取ったもんだ。
俺が自分の目で確かめてきたんだから間違いない。」
「肉? この店で初めて肉を食べたよ。」
「今のお前さんには肉が必要なのさ。普段は出さない。
今日たまたまあったこの肉が、何だかお前さんに食べられたがってる気がしたもんでな。
だからスペシャルだと言っただろう。」
マスターがしゃべってる間に、皿の上はきれいに何もなくなっていた。
おいしいものをお腹一杯食べて僕は幸せだった。
「マスター、ごちそうさま。本当においしかった。ありがとう。
いくら払えばいいのかな?」
「おいおい、久しぶりに来たと思ったら食べるだけ食べてすぐお帰りかい。さみしいねえ。
いいよ、今日のスペシャルランチは、俺のおごりだ。久しぶりに店に来てくれた旧友への気持ちばかりのプレゼントだと思ってくれ。」
「えっ? 悪いよそれじゃあ。」
「そのかわりひとつ約束してくれ。」
「何?」
「簡単なことだ。ちょくちょくこの店に顔出してくれればいい。」
「ああ、来るよ、ごめん。何だか離婚してからどこにも行く気がしなくって。又通わせてもらうよ。」
「それともう一つ。」
「うん?」
「@LOVEってサイト知ってるか?」
なんでマスターがその名前を知ってるんだろう?
僕は昨日ぱんだから初めて名前を聞いたばかりだというのに、マスターはその名前を僕の記憶から拾い出したとでもいうんだろうか?
そうとしか考えられないようなタイミングだった。
「・・・いや、まだいったことないんだけど・・・。」
「そうか。じゃあ、早いとこ行ってみてくれ。約束だぜ。」
「実は、昨日、友達からもその名前を聞いたんだけど、そのサイトってそんなに有名なのかな?」
「いや、まだできてから二・三ヶ月のサイトだ。まだそんなに有名ってほどじゃない、まだな。」
「ネットサーフィンしてて見つけたの? マスターは。」
「いや、そうじゃないんだ。
これが又面白い話なんだが・・・・
俺はこういう自然食レストランをやってるだろう? そうすると来る客も自然とニューエイジャーが多くなってくる。まあ、昔からそう言う精神世界ってのは好きで自分でも勉強したが、今は店に来る客からも情報が入るんで、本買ったりセミナー行ったりしなくてすむんでありがたい。一石二鳥ってやつだ。
”@LOVE”もそういう客からの情報さ。
でな、その情報をくれた客もお前さんのことを店で見かけて憶えてたんだな。
最初はお前さんに教えなきゃって思ったんだそうだ、そのサイトを見たときにな。
でも名前も知らない、店で見かけただけのおまえさんにどうやって連絡を取っていいかわからんし、第一そんなこといったら変だと思われるんじゃないかと思ったんだな。
あたりまえだ、見ず知らずの人間に向かって”@LOVEがあなたを呼んでいます”、なんて言ってみろ、はだしで逃げ出されるぜ。
で、迷った揚げ句、店に来て俺にお前さんのことを尋ねてきたんだ。何年か前にこれこれこういう人をこの店で見かけたんだがマスターのお知り合いですかってな。」
「なんだかテレビのドラマみたいだねえ。」
「だろ? 俺もそう思って話を聞いてみたらそういうことだったんだよ。事実は小説より奇なりってな。
それが昨日の話だ。俺も昨日そのサイトに行ってみたんだが、確かにお前さんの事が頭に浮かんできたよ。もう何年も来てくれない連れない客なのになあ。」
「悪かったよ。これからちゃんとまた通わせてもらうよ。」
「そうしてくれ。
俺もその客もお前さんのことを知っていた。そしてそのサイトに行くとなぜだかお前さんのことが頭に浮かんできた。これは偶然なんかじゃない。なにしろ、俺はその時酒を飲んで酔っ払って何のURLだか思い出せなかったんだからな。その客のことは勿論お前さんのことも頭ん中にはなかった。
こういうのは、わけがわかんなくて気持ちが悪いもんだ。で、今日お前さんに連絡しようと思っていたら、なんと、お前さんが店に入ってくるじゃないか。
もうこうなったら、必然としかいいようがないだろう。シンクロニシティってやつだよ。
俺はこれがどうなっていくのか知りたい。この物語の結末が知りたいんだ。」
「僕も昨日聞いたばかりなんだ。あとでいってみるよ。」
「ああ、是非そうしてくれ。このままじゃ気になってしょうがない。
絶対に何か起こるぜ、あるいは何かが起こる前兆なのかも知れん。」
僕はマスターに改めて礼を言って、店をあとにした。
バイクを漕ぎながらそのサイトのことを考えた。
@LOVE
はるか遠くから、心の琴線に触れてくるものが在った。
昨日今日とその名前を続け様に人から聞いた。シンクロニシティ・・・か。
僕はあまりこのシンクロニシティというのがよくわからない。今までの人生の中にもあったんだろうが自分ではまるっきり気がつかなかったんだろう。
この世の中に偶然はないとするなら、すべて起こることは必然であらねばならない。
とすると、シンクロニシティというのはもはや当たり前のことであって、特に騒ぐほどのことではないのかもしれないじゃないか。なのになんで皆はシンクロニシティが起こったとかいって喜んでるのだろう?
皆、この世の出来事が必然であるとは信じられないんだろう。だがそれを信じたくてシンクロニシティが起こると喜ぶのだ。そしてやっぱり世の中に偶然はないと思いたいんだろう。
途中のコンビニで、アイス珈琲のパックを3つほど買い込むと、急いで部屋に帰った。もう秋だというのにまるで春のようにうららかな、気持ちの良い午後だった。
部屋の中は、もう以前のようにごみ溜めのようではなくなっていたので、暗い淀んだような感じすらない。
買ってきたアイス珈琲のパックををひとつ開け、洗ってぴかぴかのグラスに注ぐと、残りのパックを冷蔵庫にしまい込んだ。グラスをもってMacの前に陣取り、起動させる。
起動を待つ間、アイス珈琲を飲みながらたばこを一服する。
@LOVE、遥とおい昔の思いでのようだ・・・。
デスクトップが表示された。
昨日、ぱんだがDMでサイトのURLを送るといっていたな・・・。
僕は、メーラを立ち上げ新着メールのチェックをする。
来ていた。
ぱんだはあれからすぐ送ってくれたらしい。義理堅いやつだ。
他にもメールはあったが、とりあえずぱんだのメールを開けた。
”例のサイトのURLを送る。
是非いってみてくれ。失望はさせない。
http:www.@love.com/index.html”
URLをネスケにドラッグ&ドロップし起動させる。
つながった。
ページの読み込みをはじめている。
サイトが表示された。
僕は食い入るように見入っていった。