赤ん坊が親以外の者に囲まれたときのように、夢彦は無数の観衆を見回した。 大勢の人を前にするのははじめてではなかった。 だが、円形に四方八方をぐるりと取り囲まれ、視線に取り囲まれるというのははじめて だった。 押し寄せる人並みにもまれていたとき、控室で順番が来るのを待っていたときには感じ ていなかった無言の力が、意識せぬうちに夢彦の身体のなかに浸透しはじめていた。 「いい、緊張することなんかないのよ。いつものようにやればいいんだから」 お辞儀を済ませローブを脱いで裸になると、みどりはしゃがみこんで夢彦の顔を覗き込 みながら言った。 「安心してわたしに任せて。ほんの少しの間で済むわ。だから、わたしの言うとおりにし てね」 夢彦はうなずいた。 だが、あとで思い返してみるとうなずいた記憶がなかった。 唇を重ねながら夢彦はみどりの身体をまさぐり愛撫をはじめた。みどりも夢彦の身体に 手をはわせはじめた。 「だいじょうぶよ、緊張しないで。わたしと二人だけしかいないと思って」 愛撫をつづけながらみどりはささやいた。 やがてみどりは夢彦のものを口にくわえこみ、やさしく舌で包みはじめた。 すぐには夢彦をいかさないように、やさしくゆっくりと締めつけてくる。 みどりのやさしい舌技に夢彦は身体をふるわせはじめた。 だが、どこかがぎこちなかった。 どこかが浮ついていた。 まるで、怯える男をを女がなだめているようであった。 ふいに男がふるえたかと思うと、女の喉のなかに白い濁流を放っていった。 唐突な放ち方であった。 みどりは顔をあげた。 夢彦の目がそこにあった。 うつろな目だった。 明らかに早く放出したことに対してとまどっていた。 「いいのよ」 みどりはにっこりと微笑んだ。 「ごめんなさい」 「謝ることなんかないのよ。緊張していたんでしょう」 「ごめん」 「なにを謝っているのよ。変な子ね」 みどりは夢彦を乳房に押しつけた。 「いつもの鏡君らしくないわよ。いつもだったら、わたしのおっぱいばっかりさわるくせ に」 「だって、おれ」 「いいの。だれだってそうなんだから」 「そうじゃないんだ。こんなみんなが見ている前でおれ」 「わかってる。できないって言うんでしょう?」 「ごめん」 「謝るのはまだ早いわよ」 「でも、おれもう立たない」 「心配しないで。立たなくても、わたしのおっぱいぐらいはさわれるでしょう? それと も、わたしのおっぱいももみもみできない?」 みどりはいたずらっぽい笑顔を向けた。 「おっぱいさわって。うんと強くもみもみして」 みどりは強く乳首をこすりつけた。 そのまま夢彦にもたれかかり、押し倒した。 「もみもみしてくれないと、こうしちゃうから」 みどりは顔に乳房を押しつけた。 胸をゆすり、乳房をゆさゆさとゆらせて顔にこすりつけた。 「早くもみもみして」 甘い声をささやきながらみどりは乳房を押しつけてきた。 それだけでなく、乳房をゆらせて夢彦の頬を打ちはじめた。 あまりにも子どもじみたねだり方に、夢彦は思わず微笑みをもらした。 「早く先生のオッパイもみもみして」 みどりは豊かな乳房をゆらしながら腰をくねらせ、甘い声でおねだりした。 「ねえ、お願い。オッパイもみもみして」 「もみもみしたらなにかくれる?」 みどりの顔がぱっと明るくなった。 夢彦が元通りになったことを知ったのだ。 「なんでもしてあげる」 「じゃあ、もみもみしてあげる」 「早くもみもみして」 みどりは乳房を押しつけてきた。 夢彦は両手にしっかりと握りしめ、ぎゅうっと揉んだ。 張りを増したみどりの豊かな乳房を揉みしめ、何度も揉みまわした。 「そう、そう、もっとオッパイもみもみしてえっ」 みどりは子供のように叫び、おねだりをくりかえした。 その声に励まされて夢彦はいつものリズムで乳房を揉みはじめた。 すぐにバスト全体に掻痒感に似た快感が広がりはじめ、みどりは身体をくねらせはじめ た。 「まだおっぱい揉んでほしい?」 「もっと強くもみもみして」 「まだ?」 「もっと」 「まだ?」 「もっとオッパイもみもみして」 「みどりさんのおっぱいっていやらしいな。こんなにつんと突き立っちゃって」 「だって、鏡君にもみもみされるとほんとに気持ちいいんだもん」 「じゃあ、もっと気持ちよくしてあげる」 「もっと気持ちよくして」 夢彦の愛撫にみどりは本気で喘ぎはじめていた。 バストから広がりだした掻痒感まじりの快感が身体中を駆け巡り、秘部を潤わせていた。 濡れた太腿は自然によじり何度もこすられ、腰は激しい一突きを求めてふるえ、夢彦に押 しつけられた。 夢彦は手を滑り込ませ、一時の欲望をいなした。 みどりは一瞬にして果てた。 だが、それで満足するわけではなかった。 乳房への果てし無い愛撫にみどりの欲望はますます激しくなって蘇り、夢彦のものを求 めてみどりは強く腰を打ちつけた。 夢彦は乳房を揉みつづけながらみどりのなかに激しく突き入った。 荒々しい突き方であった。 だが、みどりは悦びの咆哮をあげ、何度も何度も嬌声を響かせた。 夢彦のほうも、みどりの張りのある乳房とあたたかな肉ひだの感触に夢彦も気持ちよく なって、荒々しく息をもらしはじめた。 やがて、みどりの身体にうっすらと汗が光りはじめた。 オーガズムの接近を示す汗であった。 夢彦の腰の動きがすばやくなり、みどりの声が小刻みにふるえ、途切れ途切れに響くよ うになった。はじめ夢彦のかたさに胸の痛い思いをして見ていた観客は、知らず知らずの 間に二人の艶姿に見とれていた。 やがてみどりの背中が激しくそりかえった。夢彦が強く乳房を握り、乳首をつまんだ。 ブルッと白い裸身がゆれ、みどりは大きく声をあげた。恥丘を激しく夢彦に押しつけ、し がみつき、ヒップをふるわせた。夢彦は、腕のなかに沈んでいくみどりを抱きしめながら 、ふいに激しく身体をうちふるわせると、荒々しい腰のうねりとともに白い怒濤をうち放 っていった。 電光掲示板が目まぐるしく動き、静止した。 一瞬、沈黙があった。 そして、その沈黙のあと、どよめきが爆発した。 示されていたMAXは、八〇〇を越えていたのだ。 興奮した観客が次々に立ち上がり、声をあげた。拍手の嵐が二人に舞った。だが、二人 はひとつになったままいつまでも抱擁のなかにとけあっていた。