――わ〜い、お久しぶり〜〜〜。みんなのアイドル、ボボン……
だれがアイドルだ! 勝手にしゃしゃり出るな!
では、そろって。
――お久しぶりです。
お久しぶりです。今日の講義題目はですね。
――夏ということで、夏野菜を使った、なすとトマトのにんにく炒めをやってみましょう(※第15回をアップロードしたのは夏であった)。
はい、先生……って、違うだろ〜〜が!
◆プロットの3手法
3つは3つだ。
――ボクチン、わかんな〜い。
腹をよじるな! 気色悪い。
プロットの書き方には3つ方法があるのだ。
1つ。適当に当たりだけつけておいて書く方法。
――いきあたりばったり法。
おお、なかなかいいネーミングをするな。
次、2つ。文章形式でしっかり粗筋を書いてしまう方法。
――キッチリ粗筋法。
よくわからんネーミングだな。
最後、3つ。イベントやら事件やらを矢印でペーパーに書いていく方法。
――タイムテーブルに書く方法だね。ず〜っと紹介してきた方法だよね。
うむ。
――じゃ、タイムテーブル法と名付け。
お、そのネーミング気に入った。
――えへへえ、ボクチン電通に就職しようかな。
やめとけ、会社が暑苦しくなる。
――しどいわしどいわしどいわ。
◆書く内容が違うから3つある
なんでだと思う。
――いろんな人がいるから。
ふふふ。違うな。
ゲームの物語って、全部同じ量だと思うか?
――違う。
全部マルチエンドだと思うか?
――違う。
だろ?
書こうとするお話のボリュームやら道筋によって書き方も最適なものが変わって来るのだ。
――へ〜え。
実は最近気がついたのだがな。
――ボクチンは最初から知っていたね。
ばきっ!
――ぐはあっ……暴力だ……。
どうかしたか? 気をつけていないと丸太が飛んで来るぞ。
――腕って丸太っていうんだ。
どがっ!
――ぐはあ……足も丸太だった……。
◆いきあたりばったり法のプラスマイナス
――ねえ。
なんだ。
――いきあたりばったり法ってどういうときに使うの。
逆にどういうときに使えないと思う。
――マルチエンディング。
ぶぶ〜〜っ。おれ、『Fresh!』で使ったぞ。
――『ほたる』は?
ちゃんとプロット書いた。ああいう、緻密な話、謎が絡んで来るお話は難しいな。
――いきあたりばったりだと、細かいところでミスが出るから?
そうだ。だから、プロットが複雑じゃなくてキャラクターがしっかりしていて、ノリで書いていくような話には、いきあたりばったり法は向いているだろうな。いきあたりばったりってのは、テーマとキャラクターがしっかり決まってるときに、自分のなかのノリで驀進するためにあるようなもんだからな。
――そうか。じゃあ、真面目な話はあまり向かないね。
そうでもないぞ。自分がキャラクターにシンクロしてたら書けるぞ。書いているうちに道筋も見えてくるしな。
――ふうん。
あと、ある場所に移動して女の子に会って、どんどんフラグを立てていくゲームも、ある程度いきあたりばったり法は通じるかもな。『バチャめも』なんか、テーマとキャラクターだけだったもんな、決めてたの。もちろん、途中である程度のラインは考えたけど、チャートにもタイムテーブルにもしなかったもんな。
――ブループリントは頭の中。
そう。いきあたりばったり法って、結局お話のブループリントを頭のなかに置いとくって方法だからな。目的意識が明晰な場合は使えるよな。けど、長編にするとだれるな。
――いきあたりばったりじゃエネルギーが続かないから?
それもある。けど、頭のなかのメモリーって決まってるから、あんまり長くなるとオーバーしちゃうのよ。
――そうか。じゃあ、短いのには凄い適しているんだ。
それがよくないんだなあ。
――なんで?
小説もそうなんだけど、ショートストーリーって、すげえ無駄が少ないのよ。緊密に構成されてんのよ、お話が。
――いきあたりばったりで書いたら無駄ばっかりになっちゃう?
散漫になっちまうよな。ショートってのは、短いなかで工夫やら仕掛けやらが凝縮されたところに面白みがあるんだからさ、いきあたりばったりじゃなあ……ただの、その場のノリでやってるコントだよな。
――つまらない落ちになるのが落ちか。
◆キッチリ粗筋法のプラスマイナス
――ショートのお話を書くときは何がいいの?
そのショートってのは、一本道のショートな?
――うん。
おまえはどれがいいと思う。
――いきあたりばったりは中編クラスだよね。
そう。シナリオ容量で言うと、100KB〜180KBだな。原稿用紙換算でだいたい、130〜200枚ってところか。
――じゃあ、チャート法?
違う。
50KB〜80KBぐらいの、明らかに一本道のショートなお話を書くときには、新人賞に応募するみたいに、きっちり文章で粗筋を書いてやったほうがいいな。
――きっちり粗筋法か。中編には向かないの?
ちょっと苦しいかな。長いからプロット立ててるうちに疲れてくる。
――長編は。
250〜300KB以上の長編になると、もっとしんどくなるぞ。
――250以上って、総シナリオ容量がってこと?
いや、一人当たりだ。たとえば『Fresh!』の場合、ゆずかが300KB程度。舞が250KBぐらい。せせりが110KBぐらい。京香は100KBだったかな。総シナリオ容量は1MBだったかな。『プリズム・ハート』は1.7MBだな。
――うへえ。
フラグリストやら関連文書を集めると2MBを突破する。まあ、女の子多いからな。細々としたメッセージもあるし。
――ふうん。『あめいろの季節』って、一人当たり400KBだよね? あれではきっちり粗筋法は使わなかったの?
やらんかった。
――どうして?
物語が長いとな、狂うのよ。
――え? いつも頭おかしいじゃん。
ばき〜〜〜〜〜っ!
――ぐはあっ!
その狂うではない! 物語が狂うのだ!
たとえばだ。
『あめいろの季節』の場合、会社に提出したプロットでは、2月までの話になっていた。
――そのまま書けばいいじゃん。
そう思うだろ?
だがな。
テンポコントロールというのがあるのだ。
――テンポコントロール?
後半とか終盤になってクライマックスが近づいて来るだろ? そういうときに、お話のテンポを変えるんだよ。お話のリズムをぐんぐん上げていくんだ。
――ほほう。テンションを高めていくのね。
そうそう。
で、『あめいろの季節』の話。10月に入って2月まで話を書こうとしたら、全然テンポがあがらんのよ。すげえ散漫。10月、11月、12月、1月、2月って、ぽ〜んぽ〜んぽ〜んって話が等分に飛んでハイ、終わりって感じ。
――(裏声で)こんなエンディングにつきましたけどお……って感じ?
そう。そんな一律のテンポのお話、ドキドキするか?
──全然。
だろ? なぜか。話のテンポが同じだからだ。それで、12月終了に変えたのだ。
――ふうん。それとプロットの方法とどう関係があるわけ。
なあ。文章でしっかり粗筋書いたらよ、前後入れ換えるときどうする? 1月で発生するイベントを11月に発生させて、話自体を12月終了にするとき、どうする? どうやって書き直す?
――うぐ。
しんどいだろ? 作業大変だろ?
――うん……きっと大変な作業になっちゃうよね。
それでリズム狂わせたくないわけよ。
だとすると、矢印でつながっているやつのほうが簡単なわけ。こいつをここに持って来ればいいんだって、図解で出来ちゃう。
――ああ、なるほど。それでチャート法のほうが書きやすいんだ。
そういうこと。
◆タイムテーブル法のプラスマイナス
――じゃあ、タイムテーブル法で全部やっちゃえばいいじゃん。長いのも短いのも。
そういうわけにはいかんのだよ。
――どうして?
タイムテーブル法ってな、粗があるのよ。キッチリ粗筋法に比べれば、粗があるのよ。ほんと、大雑把な流れしか書いてないのよ。
――よくわかんない。
じゃあ、前々回の講義を引っ張ってくるか。
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12月 1月
クリスマス 正月
高野美紀 美紀がクリスマスケーキを 着飾った彼女とお参り
持ってきてくれる。 彼女にどきどきする
神楽咲美 (他の二人と約束がないときだけ) ひとりで神社に出かけると偶然再会
イブに一人の咲美と会う。
ディナーに誘う
(少し咲美うれしそう)
エミリー 強引に誘われる 着物姿のエミリーが押しかける。
そのまま、羽根突き大会イベント。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――前の3人の女の子との話だね。
そう。すげえ荒っぽいだろ?
――うん。
これで50〜80KBのショートストーリー書いたらどうなる?
――どきっ。
ショートストーリーって、結構しっかりしたプロットが必要なのよ。プロットって、お話の設計図みたいなもんだからな。プラモデルの組み立て図といってもいいかな。
――50〜80KBの少ない量だと、設計図としては荒すぎるってことか。
そう。でも、マルチで女の子がいっぱいいて、その女の子のためのシナリオを何本も書かなくちゃいけなくて、おまけにシミュレーションみたいにお話の時間が凄い長くて……っていうときには向いているよな。
お話の時間が少ないなら、いきあたりばったり法でやってもいいんだけどな。
――お話の時間が長くなると、頭がもたないか。
そういうこと。分量が長くなるとオーバーメモリーになってしまう。実際『ばちゃメモ』って12人女の子いるけど、一人あたりの量って50〜70KBで、120KBがヒロインの香織ただ一人って感じ。おまけに香織シナリオは後輩シナリオといっしょだったしな。
◆プロットの注意点
まずプロットを考えやすい環境をつくること。汚い机の上なんてのはもってのほかだ。自分の仕事場の整理整頓ができないクリエイターは雑魚であると心得よ。
──ぐさっ。
環境という意味では、音楽をかけるのもいいな。今(2002年現在)自分も必ず好きな音楽をかけながらプロットを立てている。
──じゃ、ボクチンは演歌をかけよう。
それから、プロットを立てるときにはとにかく書いてみること。2つ考えが浮かんでしまったら、書いてしまう。漠然としていたら、少しでもイメージがある部分だけ書いてみる。それが必要だ。
とにかく、1時間ほど粘ってみること。物書きになるような人は、集中力が2時間はつづくようにしなければならない。
──それはまたどうして?
クリエイターとサラリーマンの違いは何かわかるか?
──わからない。
集中する時間だ。頭脳労働の側面が強い分、クリエイターの方がどうしても集中する時間が長くなる。ということはだ。シナリオを書こうと思う者は、ある程度「持続する集中力」を持っていた方がいいということになる。
──なるほど。ボクチン、エッチのことだったら10時間でも集中できるよ。
それは煩悩じゃ、馬鹿者。
──おやつは食べてもいいの。
300円以内ならな。
──バナナはおやつに入りますか。
入りません……って、なんでや! おのれは小学生か! 話をそらすな!
今回の講義で話したことは、あくまで「原則的」なことだ。あくまでもこういうふうにしている、こういう問題があるという話であって、絶対にこうしろという命令ではない。そもそもプロットの立て方というは、ある意味スタイルのようなところがあるのだ。自分なりのプロットの立て方というのをつくっていくというところがある。そこを勘違いしないことだ。
──若い人には、ハウツーと理論を勘違いする人がいるからね。
ものをつくる者、人の意見をどれだけ取り入れつつ、おのれのスタイルをつくっていくかが要諦だと心得よ。
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