続いての質問は、ひおりんさんです! みなさん、拍手を!
では、早速質問行ってみよう!
キャラクターの立ちポーズCGの数え方についてなんですが、教室ではキャラクターで
服装の違いごとに「1枚」と数えています。
ゲームでは、同じ服装の立ちポーズでも表情が変わって、場合によっては顔だけでな
く手とかも動いたりしますがこれは枚数に数えなくてもよいのでしょうか?
また記号のフリで、助手さんが第11回で「A000A照れた美紀」と表記しているところがあ
りました。これは「照れた美紀」が「普通の美紀」のCGと区別するためだと思うので
すが、なぜA000にAを付け足した記号を使うのかを教えてください。
では、早速整理しよう。
今回の質問は、
(1) 表情やポーズ違いを枚数としてカウントしなくていいのですか?
(2) なぜ表情違いは「A」などというアルファベットを付記するのですか?
です。
枚数とは、お金の問題なり
◆表情パターンはX枚で1枚
枚数としてカウントする/カウントしないには、実は凄く切実な、そして重要な問題があります。
何だと思いますか?
お金です。
原画家さんにお仕事を依頼する時、たとえばグロスで今回のお仕事150万円みたいな頼み方をする場合もあります(あくまでもたとえばの金額です)。でも、通常は1枚あたりの単価を決めて、総枚数×単価の合計で支払う場合が多いようです。
全然初めての新人の方の場合はたとえば1枚5000円とか、そうでなくてある程度名のある方ならたとえば1万5000円とか(この金額もたとえばの話)。
仮に単価1万円で原画100枚を頼んだ場合、1万×100で、支払う金額は100万円になります(勿論、10%の税金は抜きます)。
さて。
グロス(枚数をひとつひとつ換算するのではなく全体ひっくるめてという形)ではなく、単価を決めて総枚数に対して支払う形の場合、問題となるのがパターンです。
つまり、表情パターンや服装パターン。
これをどうお金の問題として扱うかです。表情パターンにもお金を出すのか、服装パターンにもお金を出すのか。
もし、単価1万円で原画100枚、そして表情パターンが50だった場合。
表情パターンも通常の1枚絵と同じようにカウントするとなると、150万を支払うことになってしまいます。
そんなの払っちゃえばいいじゃない! というあなたは相当コスト意識がないか相当のお金持ちかのどちらかです。時間とお金には限りがあります。
表情パターンや服装パターンのカウント方法は、会社によって異なります。自分が見聞した限りでは、
・服装違いは、1枚としてカウントする
・表情違いは、表情3つで立ちポーズ1枚分としてカウントする(あるいは表情5つで立ちポーズ1枚としてカウントする)
という感じのようです。手の動きが違うものなどは、表情パターンの変形と見なして、表情違いとして換算します(たとえば、「バーン!」と手を銃がわりに向けているのも、表情パターンの1つとしてカウント)。
一目でわかるようにファイル番号をつけよ
◆明晰ならざるもの、番号ならず
なぜ末尾に「A」なぞをつけるのか。
知らない人は、普通の立ちポーズがA000なら、照れた表情はA001でもいいじゃないかと思ってしまうかもしれません。
でも──本当にそれでいいですか?
たとえば、美紀の制服がA000だとします。
照れた表情がA001、笑ったのがA002、怒ったのがA003……とします。普段服がA004ぐらいに来て、A005が普段服の照れたバージョン。
具体的に書いてみましょう。
《美紀》
A000 制服
A001 制服照れたバージョン
A002 制服笑ったバージョン
A003 制服怒ったバージョン
A004 普段着
A005 普段着照れたバージョン
《裕子》
A100 制服
A101 制服笑ったバージョン
A102 制服怒ったバージョン
A103 普段着
A104 普段着怒ったバージョン
A105 普段着泣いたバージョン
こんなふうに番号をつけていって、すぐ思い出せますか?
美紀の制服の笑ったバージョンは何番だったっけ? 普段服は? 裕子の普段着は?
違う表情だからといって、次々とA100、A101、A102……とつけていると、法則性もなく、見た目わかりづらい、という状況になってしまいます。何番が怒りだったか、何番から普段着だったかも一目ではわかりません。現在のゲームでは立ちポーズをかなり使います。表情変化も多くなっています。全キャラあわせて立ちポーズだけで20〜30は当たり前です。そういう状況では何番から普段着だったかなんて覚えられません。自分が書いたシナリオなのに、自分が番号をつけたはずなのに、いちいちリストを見て探しまわる、という愚かな罠にはまってしまいます。そしてそれは、立ちポーズ違いというバグの温床につながります。
問題はまだまだあります。表情パターンがいくつあって立ちポーズがいくつあって、というのをすぐ算出できますか? 算出できないのでは、原画家さんに正確な金額をお支払いできません。
明晰でないファイル番号は、ファイル番号ではありません。ファイル番号というのは、常にプログラマーとディレクター、シナリオライターにとって管理しやすいものでなければなりません。
明晰ならざるもの、ファイル番号ならず。
一目で把握できてこそ、ファイル番号。
ファイル名は管理しやすいように、一目で把握できるようにするのが基本です。
たとえば、
A000 美紀・制服
A000A 制服照れたバージョン
A000C 制服笑ったバージョン
A001 美紀・普段着
A001A 普段着照れたバージョン
A100 裕子・制服
A100C 制服笑ったバージョン
A100E 制服怒ったバージョン
A101 普段着
A101B 普段着泣いたバージョン
A101E 制服怒ったバージョン
こうあると、どうでしょう。
末尾に「A」がつくと照れ、「B」がつくと悲しみを表すこともわかりますし、A000とくれば美紀、A100とくれば裕子というのが一発でわかります。また、A001とA101がそれぞれのキャラの普段着であることも、容易にわかります。
またこのようにしておけば、「A200 勝美」というキャラクターが出てきても、同じ法則性を当てはめて管理することができますし、シナリオライター自身も、間違えないで表情パターンを扱うことができます。
参考に、自分の場合、
・末尾にAがつくもの……怒り
・末尾にBがつくもの……悲しみ
・末尾にCがつくもの……よろこび
・末尾にDがつくもの……困惑・驚嘆
・末尾にEがつくもの……照れ
として固定し、たとえばA000_1Aのように管理しています。「_1」という数字がつくのは、いくつか怒りのパターンがあったりするからです(ちなみにAが怒りなのは「angry」から、Bは「blue」から、Cは「Cheer」から、Dは「depressed」から取ったためです)。
明晰ならざるもの、ファイル番号ならず。
管理しづらいファイル番号は、番号にあらず。
一目で把握できてこそ、ファイル番号。
これは背景CGについても、イベントCGについても同じです。
たとえば、
B000 学校
B001 学校夕方
B002 学校夜
B003 自宅
なんてしてしまうと、何番が夕方なのかわからなくなってしまいます。グラフィッカーも混乱します。
また、背景CGを外注に出す時、何番と何番が必要なものなのかわからなくなってしまいます。
B000 学校
B000EVE 学校夕方
B000BL 学校夜
B001 自宅
とした方が一目で区別できます。
イベントCGについても同じです。よく、キャラクターの名前で管理してあるものがありますが、イベントCGには有効でも、立ちポーズやフラグに対して統一性や法則性がなく有用とは言い切れません(通常イベントCGならG、エッチCGならH、立ちポーズならAで始まる……というように最初のアルファベットを必ず固定して管理している場合、それを元にしてプログラムの方で何らかの操作を施しやすくなる)。
明晰ならざるもの、ファイル番号ならず。
管理しづらいファイル番号は、番号にあらず。
一目で把握できてこそ、ファイル番号。
わかりづらいファイル名をつける人は、シナリオライター失格です。
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