◆32回の連絡 2000.11.15

 兄から聞いた話である。

 普通のビジネスマンは、1日32回連絡(コミュニケーション)を取ると、仕事がうまく行くそうだ。

 32回?

 それ、多いんじゃないの? と思うかもしれない。

 確かに、やってみると多い。普通にやると、10回ほどしか行かない。

 たとえば、ソフトハウスにいた頃。

 原画の指定を原画家さんに連絡。これで1回。さらに、そのことをスタッフに連絡。これで1回。プログラムのことでプログラマーに連絡。これで1回。

 こんな調子でやっていると、2ケタに行くのが関の山。

 その倍以上コミュニケーションを取る必要ってあるの? と思う人だっているかもしれない。

 ところがである。
 
 仕事の情報というのは、とかく伝わらないのだ。連絡したのに、情報を共有すべき人たちに伝わっていなくて、あとで、「え〜〜っ!」と思うことが何度あることか。上司も、「そんなの聞いていないよ」なんて言っちゃって、こっちはますます大慌て。突き当たるのは、自分とごく少数の人間が情報を共有しているという寂しい事実ばかり。

 イライラ、ムカムカ。

 なんでやねん。

 そう思った経験は、みなさんも一度ではないはずだ。

 連絡というのは、一人に済ませればいいわけではないのだ。仕事の情報は、それを共有している人たちが多いほど、自分の負担も軽くなり、仕事もスムーズに運ぶ。何人にも個人ベースで連絡を取るのは面倒くさいが、その分の見返りはある。

 ところが、人というのはとかく自己完結したがる。ある部署の一人に連絡すれば、ちゃんと伝わるだろうと思い込みたがる。そうやって、いわばコミュニケーションに対して手を抜こうとする。

 だが。

 仕事に以心伝心は存在しない。

 関連している一人に連絡してあとは放りっぱなし、では駄目なのだ。情報は、トイレのように、ボタンを押せばきれいさっぱり、じゃ〜〜っと流れて伝わるわけではない。

 自分の脳と他人の脳は違う。たとえ面倒くさくても、いちいち伝えてやらなければ伝わらない。伝えてやれば、結果的に自分が楽になる。まわりも楽になる。

 にもかかわらず、仕事上の情報の連絡ということに対して、我々はなんといい加減に振る舞うことの多いことか。

 32回という数が、本当にコミュニケーションがうまく行く数なのかどうかはわからない。だが、仕事がうまく進んでいないときというのは、連絡をおろそかにしていることが多かったりするものだ。無理矢理コミュニケーションに力を入れると、意外とうまく進み出してくれたりする。

 1日の連絡32回という、一見無茶な回数は、我々がコミュニケーションに対して怠惰になりたがるのを戒める数字なのかもしれない。

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