近くのコンビニに行った。
昼飯代わりのサンドイッチを買って、窓に向けて置かれた雑誌コーナーで立ち読み。
『海賊』とかいうグラビア誌をぺらぺらとめくりながら酒井若菜の肢体を見ていると、視界の右端にとびきりちっこい立ち読み客がやってくるのが目に入った。
そろり、そろり。
抜き足、差し足。
あまりにもスロー。
あまりにもスモール。
いや、小さすぎるなんてものではない。ガキの背丈どころではないのだ。赤ん坊よりも低く、まるで地面にへばりついているようだ。
おまけに、その服装。
てかてかの真っ黒なのだ。
はっと首をやって、初めて怪しげな立ち読み客の正体を知った。
ゴキブリであった。
ほうほうのていで匍匐前進すること分速5センチ。
通路を横切りたいらしいのだが、旋回している。薬にやられたのか。
立て。
立つんだ、ジョー(笑)。
見逃すか、叩きつぶすか。
自分の部屋なら、真っ先に叩きつぶしている。だが、ここはコンビニ。床の上。
考えているうちにゴキブリは床の上を進んでいく。
キャプテン・ハーロックはこう言った。
――男には、やらねばならぬときがある。
1分後、歓迎されざる
闖入者は、ティッシュペーパーにくるまれ、ごみ箱へと消えていったのであった。