おれは振り袖が好きや。

　店に飾ってあるのを見るのが好きってわけやない。振り袖着ている女の子たちを見るのが好きなんよ。ただ店に飾ってあるのを見ても面白くない。人間が着ているのが好き。襟の周りが白くふわふわで、そのやわらかい触感と華やかの色彩のギャップに、ハッと目を見開かれるんよね。いつも新鮮な気持ちがする。

　振り袖って、東アジアの人間だけが着られる特権的衣装やな、って思う。

　金髪のお方には残念ながら似合わない。

　なんといっても服装が華美すぎるもんやから、あまりに目鼻だちがはっきりしているとしっくり来ない。アンバランス。

　起伏が少ないほうがいい。

　目も、茶色系がいい。

　ああ、日本の美やなあ、と思う。


　でも。

　人が着てへん振り袖見るのはつまらんのよ。人が入ってへんとおもろうない。
　
　こんなことを言うと、振り袖女性がおまえの好みなんか、と聞かれたりする。

　ご冗談を。

　おれは振り袖フェチでも、振り袖女性をナンパしたいわけでもありません。

　振り袖女性が好みやって言うときって、振り袖に対してフェティシズム入ってるわけでしょ？　けど、おれにそういうフェティシズムないのよ。巨乳にはあるけど

　おれはただ眺めていたいだけ。

　振り袖を着ている女の子たちを見て、ああ、あの子、きれいな色着てるな、あの子似合ってるなぁ……とその色彩を楽しみたいだけなんよ。

　つまり、魚を見るのが好きな人と魚を釣るのが好きな人の違い。おれは見るほう。鑑賞してるだけ。釣ってるわけやない。

　でも、これが振り袖の話やなくて制服の話になると完璧に誤解される。

「都内市立１５０のうち１００校の女子高の制服を見た」と言うと、間違いなく変態扱いされる。

「おまえ、女子高生襲うなよ」

　なんて危ないことを言われたりする。

　おい、待て。

　おれは制服少女と付き合いたいわけでも、制服プレイしたいわけでもない。付き合うなら、精神的に大人の女性がええし、制服プレイはセーラー服への冒涜と思ってるから、制服プレイなんか真っ平御免や、と思ってる。でも、そう力説しても、にやにやと笑われるだけ。

　うおお。

　信じてくれえ。おれは安っぽいセーラー服が許せへんだけなんや、制服も振り袖も、ひとつの風物として楽しんでるだけなんや。