◆Dr.コパの風水 99.11.14



 風水、というとまやかしと思う人が多いかもしれない。ましてやDr.コパとなると、うさん臭いの極致。自分もそう思っていた。彼が登場する遥か前から風水に親しんでいた自分としては、うそくせえアマちゃんにしか思えなかった。

 が。

 売れてるものには理由がある。


 Dr.コパのよさは、まずそのテーゼの明確さだ。まずその1つ。

「貧乏は病気」

 これはひとつのターニング・ポイントである。貧乏は、多くの人間にとって宿命のように受け取られているからだ。だが、貧乏は不可避の問題ではない。病気なのだ。病気である以上、治療できる。だれでも、治療によって貧乏という病気・不健康からお金持ちという健康に戻れるのだ。そのための処方が風水なのだ。

 この、潔い言い切りは、バブル崩壊後の日本人にはさぞかし元気づけになったやろう。自分も貧乏になってからこの言葉に会って目が覚めた。


 Dr.コパのもう1つのエッセンスは、「すべての人は幸せになる権利を持っている」ことだ。

 内容はまるで人権宣言と同じ。あったりまえやん、と言いたくなる。

 でも、待てよ。

 日々、そんなこと意識してるか?

 答えはNOだ。日々の生活のなかで、なんのために生きているのか、ついつい忘れてしまう。そして受動のなかに埋没してしまう。おれがついてないのはまわりのせいじゃ、と

 でも。

 ハッピーになることは人間の権利なのだ。当然行使すべきなのである。ブータラ文句をかましている場合ではないのである。このメッセージは、言葉が持つ単純な意味以上に、実際的なインパクトがある。


 貧乏は病気である、人は幸せになる権利を持っている。この果敢なまでの言い切りがなければ、人の心は捉えれなかっただろう。

 折しも、インテリアブームが到来していた頃だった。

 あくせく働くことから、楽しむことへ切り替わりだした頃。インテリアブームはまさにその「楽しむ」ことへの意識の切り換えの象徴だった。Dr.コパはそこへ登場した。幸せになるためには、この方角にこの色を使いましょう、という明確な指示は、インテリアの文法を知らなかった女性には飲み込みやすかったことだろう。


 占いというと、運命を勝手に決められてしまう受動的な要素が強い。そう一般の人は思っている。

 が、宿命と運命は違う。

 宿命は決して自分の力では変えられない。この母親と父親の間に生まれた、という宿命は不可避である。

 でも、運命は変えられる。自分の意志によって、自分の力によって、貧乏という病を治し、金持ちという健康になれるのだ。

 Dr.コパは風水の入れ物を借りて、そのことを伝えたのだ。時代がリッチを約束してくれていたバブルが崩壊した後にあって、なおまだリッチになれる術を説いたのである。売れるべくして売れた、というわけだ。

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