◆ものの言い方 99.11.7



 男女の喧嘩って、どうも果てしなくつまらんところで起こっている気がするのよね。

 たとえば。


 久々の休み。二人で遊ぼうと思ったら、男が釣りの約束をしてしまっていた。女は寂しい。

「なんで、そんな勝手に約束なんかするのよ」

「勝手って言ったって前からしてたんだからしゃあねえだろ」

「いいよ。ひとり寂しく家で過ごすから」

「なんだよ、その言い方」

「別にいいって言ってるでしょ」

「そう。じゃあ、おれ釣り行くから」

「勝手にどこでも行けば」

 そりゃ極端な例でしょ、と突っ込む人もいるかもしれない。

 もちろん、最大公約数的な例ではありません。でも、あながち珍しいとも言い切れないような気がする。


 上の話の場合。

 女は寂しいと感じていた。ほんとうはいっしょに休みを過ごしたかった

「寂しかった」

 素直にそう言えればどんなに幸せだったことだろう。

 でも、たいていの人って、変化球かけてもの言っちゃうのよね。男女間で気持ちを言うときには、球速は変えるとしてもストレートで行ったほうが楽で済むと思うんだけど、わざわざカーブやらシュートやらナックルやらフォークまでかけてしまう。

 求めたい結果は、彼/彼女からの優しい言葉なのに。

 結局得るのは、喧嘩/すれ違い/感情的摩擦、という自分の損することばかり。ああ、悲しや。


 同じ寂しいと言うのでも、いろんな言い方がある。

「せ〜っかく二人きりになれると思ったのに。あ〜あ」

 とため息をつくとか。

 あるいは、寂しいんだけど、なにも言わずに我慢しちゃうとか。でも、なんが口調がおかしいから気づかれてしまう。

 あるいは、

「あたしはずっと家でひとりだったのに」

 って恨みがましく言ってみるとか。

「**くんがいなかったから、つまんなかった」

 これぐらい言えればもう上等。でも、

「あなたのせいで休みはひとりで過ごしたわよ」

 こんな非難口調は最悪。彼女は、凄い寂しかったってことを伝えたい、それをわかってほしい、慰めてほしいだけなのだ。でも、「あなたのせいで」と言ってしまったがために、自分を被害者に仕立て上げてしまっている。被害者がいれば加害者がいるのは当たり前。加害者なき被害者など、陳腐。愚の骨頂。自分を被害者とすることで、言葉を発する相手に対して、「あなたが加害者よ」と無意識のうちにメッセージを送りつけてしまっているのだ。言われた男が気分よくなるはずがないそれで自分が求めている理解や慰めは得られるのだろうか? 相手が神様か仏様じゃないと無理だぜ。


 こういうことを言う女性というのは、いつも自分をかまってほしい人なのだろう。

 でも、恋愛は一方的に面倒をみてもらうことではない。あなたママ、わたし赤ん坊というのが恋愛じゃないんだから。

 相手の力になり、相手に支えられる。

 それが恋愛の姿。

 その人を好きならば、その人のことを考えてあげるのが本当じゃないの? その人のことを考えて、口調をもう少しやわらかくしてやる、なじらないであげる。好きなら、それくらいの思いやりを相手にあげてもいいんじゃないの?

 相手のことを考えてものを言ってあげれば、幸せになれるのにな、と思う。

「寂しかった」

 
そう一言、言ってしまえばいいと思う

 簡潔に、一言。

 つらかった、頭に来た、悲しかった、ショックだった。

 そう言えばいい。だからわたしはどうこうしたのよ、なんてよけいなことはいらない。大切なのは、ただ短い言葉で感情を伝えること。

 感情的問題を口にしなかったがために、こじれていくってのは、お互い本意じゃないはず。

「なんで言わなかったのよ!」

「なんで言わねえんだよ!」

 そうやって、すれ違いが増幅していくのって、悲しすぎる。誰だって別れの行進曲を演奏するために付き合ってるわけじゃない。

 素直に、ただ一言自分が感じたことをやさしく口にする。

 相手を追い込まないことが重要。それが一番お互いにとって楽で幸せになれる方法なのになあ。

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