『魔羅の肖像』

【読み】 まらのしょうぞう



 魔羅、というのはペニスのこと。平たく言えば、おちんちんです。

 梵語maraの音訳だそうです。元々、梵語での意味は《障害》でしたが、やがて僧侶たちの間で《ペニス》を指す隠語として使われるようになりました。

 ――というわけで。

 『魔羅の肖像』とは、ペニスについての本です。著者、松沢呉一。

 新潮OH!文庫。

 天下の新潮社からの出版です。

 450頁以上のボリュームに圧倒されますが、堅苦しくはない。饒舌ですが、ノリのいいおしゃべりで、ばりばりペニスについて語り進んでいきます。

 いい魔羅とは?

 悪い魔羅とは?

 短小は、本当によくないのか。長いのがいいというのは、神話なのか。

 自ら出資して集めた大量の文献と、風俗嬢らセックスワーカーへの取材との両面から、一般的通説の誤謬を問い質していきます。その態度は、真面目というより、怒り。論文というよりは、文句。

 でも、その真摯な情熱は、素晴らしい。

 セックスほど、人それぞれ、つまり、個別的であるものはないわけで、にもかかわらず、一般化してものを言う輩が多い。それに対して、筆者は容赦なく怒りをぶつけます。
 
 怒りに勃起する筆者。

 話は、魔羅から逸れて膣へと移っていきますが、個別論を一般論と取り違えている男性にも女性にも、読んでほしい内容です。


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