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自閉とは、日本国語大辞典によれば、
《精神分裂病患者にみられる基本症状。対人交渉を極力避け、願望や苦悩などを心に抱いたまま自分だけの世界に生きている状態》
今回の文脈では、自閉的とは、自分の内側にばかりこもっている、自分の内的世界にばかりこもっている、という意味で使用している。
自閉という概念を持ち出したのは、スイスの精神医学者ユーゲン・ブロイラー。元々早発痴呆と呼ばれていたものを精神分裂病と名付け、初めて精神分裂病という用語を作り出したその人である。
頭からすっぽりシーツをかぶって、人を避けて壁に向かって頭下げてる人を見かけることがあるが、ブロイラーはそういう重症の分裂病患者をモデルにして自閉という言葉を作った。
難しくは《内的生活の比較的あるいは絶対的優位を伴う現実離脱》と云う。わかりやすく言えば、現実という自分の外側の世界に触れないで、自分の内側へ過剰にこもってしまうこと。
自閉は、精神状態の基本障害になっている(ミンコフスキーになると、内的生活の豊富な《豊かな自閉》と内的生活の乏しい《貧しい自閉》なんてのもあるらしい)。
だが、後にこの自閉という言葉をカナーが転用して、幼児特有の発達障害を指す言葉として早期幼児自閉症と表現したために、《自閉》と《自閉症》の混乱が生じることになる。
早期幼児自閉症──early infantile autism──は一種の発達障害である。異論もあるが、自閉症は、次の4項目で診断されるようだ。
(1)生後30ヵ月以前に症状が現れる
(2)言語発達の遅れがある。または、尋ねられたときにオウム返しの返事をするなど、言語発達の異常がある。
(3)相手と目が合わせず、幼稚園や学校など集団行動に参加できないなど、人間関係成立の遅れがある。
(4)特定の事物に強い執着を示したり、物事の変化に強い抵抗を示したりする。
さらに日本自閉症協会は、
(1)言葉の発達が遅れる
(2)人との関わり方がわからない
(3)感じ方に一貫性がない
(4)知的機能が偏って発達する
(5)活動と興味が限定される
の5つを自閉症の特徴として挙げている。この見解が、恐らく一般に自閉症として広く知られているものである。
しかし、厳密な話をすれば、自閉症の意味は1つではない。日本国語大辞典も、
(1)3歳以前の幼児期に明らかになる発達障害。対人関係への希薄、言葉の発達が遅い、同じ行動を繰り返したり特定のものを同じままにしておこうとする執着的な行動を示す、などの特徴がある。中枢神経系を含む身体上の機能障害と考えられているが、詳しい原因は不明。
(2)「自閉」に同じ
と、2つの意味があることを説明している。精神科医・香山リカ氏もサイトで
《本来は、外界に意味を見出せず、空想的世界に生きる分裂病の症状を意味するが,現在,わが国では幼児特有の障害を指すことが多い》
と、本来的意味と現在流布している意味とを説明している。
世界大百科事典も、
《精神医学で扱う自閉症には二つの場合が含まれる。すなわち,(1)精神分裂病に多く現れる症状,(2)幼児・学童にみられる重篤な対人関係障害と特異な行動異常を主徴とする症候群,の二つである》
と解説している。
ブロイラーが提唱した本来的意味と、カナーらが位置づけた《早期幼児自閉症》としての意味。広義の自閉症と、狭義の自閉症。自閉症という言葉を扱う者は、この2つを忘れずにいたい。
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