大横綱「白鵬」もイマダモッケイタリエズ
大鵬45,千代の冨士53の連勝記録を超え、双葉山の69連勝に挑んでいた白鵬関だが、九州場所二日目の取り組み前頭筆頭「稀勢の里」に敗れ63連勝で止まった。これまで対稀勢の里戦は10連勝であり、誰の目にも64連勝は堅いとかんじられていた。しかし昨日までの白鵬の横綱相撲とはまるで違っていた。気迫に満ち猛然と突っ張る稀勢の里に押し返されたあたりから、どっしりと構え、受けて立つ土俵でなく、小手先の、横綱らしくない相撲で寄り切られた。支度部屋で「もう一つ連勝を伸ばしたいというところにスキがあった」と振り返った。
安藝ノ海に連勝を止められた双葉山は、知人に「われいまだもっけいたりえず」と電報を打った。(昭和14年1月15日)。木鶏は木彫りの闘鶏。どんな敵にも動じない泰然とした本当の強さを物語る中国の故事。白鵬の理想像も「木鶏」だという。泰然自若、無の境地、勝とうと思うな、思えば負けよ。(白鵬著「相撲よ」角川書店より)
双葉山の連勝記録を止めた安藝ノ海に挿話がある。師匠(出羽海親方)がさぞかし喜んでくれるかと、意気揚々と部屋に戻ったところニコリともしないで「勝って騒がれる力士より、負けて騒がれる力士になれよ」と諭されたとか。(第37代横綱となった)
連勝がストップしたあと、土俵を下がる白鵬は、露骨に悔しい態度をとるわけでもなく、淡々として立派であった。一方の稀勢の里も、勝ち誇った態度を見せるわけでもなくこれまた淡々とした態度であった。白鵬25歳、稀勢の里24歳まだ若い。国技大相撲を建て直してほしい。
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