最近、アメリカの大手金融機関の破綻などをきっかけとして、世界中に経済的な不安が蔓延しています。日本でも、輸出産業、特に自動車sん行などの製造業の業績不振がつづいています。今年度末までに3万人もの非正規雇用者が、職を失うといわれ、労働環境をはじめとして、私たちの生活そのものが厳しい状況に追い込まれつつあります。このことは、これまで進められてきた、いわゆる経済主導のグローバリゼーションが行き詰まりを見せていることの表れでもあります。経済の自由化という耳障りの良い言葉を名目にしながら、実際には世界各国で、貧富の差を広げ、格差社会を生み出しています。社会の価値がマネー一色に染められていくことがこれほど危険なこととは思いませんでした。財政難を理由に、医師不足を放置したことによる医療崩壊、消費者の安全さえも犠牲にして利益を追求した食品偽装、人のつながりの欠如を感じさせる犯罪も目に付くようになりました。「富める者は、より豊かに、貧しいものは、より貧しく」といった現実がそこには横たわっているのではないでしょうか。アメリカのオバマ大統領は就任演説で「大きな政府か小さいな政府かが問題なのではない。市場が有効か有害かも問題なのではなく、それが豊かな社会をつくるかどうかが問題なのだ。」と語りました。アメリカはようやく格差社会の弊害に気づき、国民皆保健をめざしています。すべては、自己責任という新自由主義路線との決別を意味すると解するべきです。日本もこうした抜本的な改革に着手するべきであり、そのためには地域社会をいかに再生させるかであります。その一つのヒントとして、地域第一主義、ローカリーゼーションというものがあります。地域で力を高め、食べ物やお金、エネルギーなど私たちが生活するうえで必要とされるものすべてを地域内で循環させていこうという理念です。欧米では、エコヴィレッジと名づけられた小さなものが各地で生まれ始めています。どうして注目されてきたかと申しますと、地域の人が喜怒哀楽を共にし、勝ち負けのない平等で穏やかな生活を送りたいという願いがあります。多くの人たちが経済的な豊かさを追い求めるのではなく、精神的な豊かさを実現しようと動き始めています。それは、小欲知足の生活にも結びついていて、自らの欲望を制御し他者と恵みを分け合いながら自然と共に生きていこうとする人間としての理想の形ではないでしょうか。会長談話を終わります。ご静聴有難うございました。
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