2010/01/05更新

「全心協ニュース No.61」巻頭言

風雲急!
国家資格創設に向けて心理学界がひとつに!



平成21年12月

全心協会長  宮脇 稔

ニュースレターNo60において、国家資格の経過報告を掲載しましたが、今回はその続きをお知らせします。
6月以降11月3日までの動向を経過に沿って簡潔にお知らせします。


現況

 まず、7月以降は1資格1法案をまとめるために心理3団体それぞれが資格に対する団体内の意見調整や具体案の検討を重ねて、その内容を3団体会談(第4〜6回)で確認、検討、調整してきました。

 11月3日現在で医療心理師国家資格制度推進協議会(以後医療心理師側と称す)と臨床心理職国家資格推進連絡協議会(以後臨床心理職側と称す)はそれぞれ「大学および大学院での養成カリキュラム」を検討し、11月3日開催の第6回3団体会談において一本化に向けた調整を行いました。
 それぞれの主張は医療心理師側が学部教育を重視し、臨床心理職側が大学院教育を重視したカリキュラムになっており、活発な話し合いでカリキュラム一本化の可能性も見えてきたところです。
 同時に国家資格に関する要望書の検討も基本コンセプトを核として少しずつまとまってきています。

 なお3団体会談とは以下の3団体の代表による話し合いを意味しています。

○ 医療心理師側=織田正美(会長)、宮脇稔(副会長)
○ 臨床心理職側=鶴光代(会長)、奥村茉莉子(事務局長)
○ 日本心理学諸学会連合(以後日心連と称す)=市川伸一(理事長)、野島一彦(資格委員長、副理事長)


経過報告

 以下に6月以降の全心協、医療心理師側(推進協議会)および各団体の動きをお伝えします。

☆2009年6月7日:日心連の理事会開催(要旨)

 日心連理事会では、4月29日の第3回3団体会談の要旨および医療心理師側と臨床心理職側の団体による「資格関係要望書」(6月7日付)の報告を受け審議した結果「日本心理学諸学会連合は、国資格の早期実現を図るべく、2資格1法案を起点・ベースとして、それを統合する形の新しい方向性を模索するために、心理系、医療系各団体との折衝を継続する」ことと決定した。

 要望書における法案骨子の要点は以下の4点。

○ 心理職としてひとつの資格(領域汎用性の資格)。
○ 資格名は、○○心理士、心理士(心理師)等を検討。
○ 学部と大学院が連動した教育システムとする。
○ 医療機関においては医師の指示を受ける資格とする。


☆7月17日:臨床心理職側(連絡協議会)
 「1資格1法案に向けて検討する」ことに一部の慎重論はあるも決定。「2団体調整による資格関係要望書」を追認。養成カリキュラムを検討し原案を作成中。


☆7月26日:全心協役員会

 2団体要望書基本骨子を承認。
 役員会では全心協が考える法案骨子案を検討。

○ 名称:医療心理師、臨床心理士に拘らずに汎用的な名称とする。
○ 医師の指示:医療・保健といった保険制度と結びつく領域で、傷病者に対しては医師の指示のもとで業務を行う。
○ 教育:4年制大学での心理学専門教育を基本とし、その後現場にて一定期間研修(有給)を受けるか大学院教育を受けて受験。1種、2種といった2階建ての資格とはしない。
○ カリキュラム:基礎心理学科目を尊重する。最低限必要な医学・福祉教育および多職種によるチームアプローチや集団・地域活動での心理学を重視する。また、実習・研修システムの充実を図る。
○ 主務官庁: 厚労省を主務官庁とする。


☆8月11日:第4回3団体会談開催(要旨)

1)国家資格の早期実現に向けての報告
○ 臨床心理職側:7月17日の第10回連絡協議会の内容報告。
○ 医療心理師側:9月25日の臨時総会で基本コンセプトを説明し承認を求める予定。

2)資格の基本コンセプトの検討
○ 心理職としてひとつの資格(領域汎用性の資格)。
○ 資格名は、○○心理士、心理士(心理師)等を検討。
○ 学部と大学院が連動した教育システム とする。
○ 医療機関においては医師の指示を受ける資格とする。

3)カリキュラムの検討
○ 臨床心理職側、医療心理師側それぞれから、2資格1法案で作成されたカリキュラム案を配布して、資格現実化のために重要であるカリキュラムについて、ブレインストーミング的に意見交換を行った。
○ その結果、カリキュラムについて意見調整を図るために、3団体によるカリキュラム意見交換会を開催することにした。

4)要望意見作成について
○ 2資格1法案を起点・ベースとした3団体協議による1資格1法案に盛り込む基本的内容の原案を作成することとした。


☆9月12日:3団体による養成カリキュラムに関する意見交換会開催(要旨)

 医療心理師側、臨床心理職側、日心連の代表で集まり意見交換を行った。
 意見交換会では授業科目のくくり、科目数、実習のあり方、大学院カリキュラムのあり方などが話題に上り、それぞれが具体案を持ち寄ることとなった。


☆9月13日:日心連の常任理事会で、3団体会談で資格の基本コンセプト、カリキュラムのたたき台の作成、要望意見のたたき台を作成する方針が了承された。医療心理師側および臨床心理職側が提出するカリキュラム案を11月8日の常任理事会で検討することを決定。


☆9月23日:臨床心理職側(連絡協議会)で、「1資格1法案(1種類の資格)を実現する方向で検討する」ことを、賛成多数で承認。カリキュラム案検討継続中。


☆9月25日:医療心理師側臨時総会開催(要旨)

 資格の基本コンセプトについては、資格名称と受験資格者について修正意見が出たが、反対はなく、3団体会談で話し合いを進めることを承認。カリキュラムのたたき台は心理関係団体の代表で検討することになる。


☆9月26日:第5回3団体会談開催(要旨)

 国家資格の早期実現を目指して

1) 各団体の経過の報告

2) 資格の基本コンセプト
 各団体からのフィードバックをもとに「資格の基本コンセプト案(Ver.2)」を次のように修正(受験資格者として大学院修了者と学部卒業者を並列に表記するように修正)。

資格の基本コンセプト案(Ver.2)
○ 資格の名称:○○心理士、心理士(心理師)等が考えられる。
○ 資格の性格:領域汎用性の資格とする。
○ 医療機関においては医師の指示を受ける資格とする。
○ 受験資格者:
 @ 学部卒+大学院(修士)修了者。
 A 学部卒で○年間の実務経験をした者。

3) カリキュラムについて
 3団体の各団体は、<3団体会談によるカリキュラムのたたき台>を検討し、11月3日の第6回3団体会談ですり合わせを行う。

4) 要望意見について
 「資格の基本コンセプト案(Ver.2)」をもとに、<要望意見のたたき台>を検討した。
 尚、要望意見書のタイトル・体裁・前文等については次回検討予定。


☆9月28日:日心連常務理事会開催


☆10月3日:臨床心理士関係4団体(日本臨床心理士会、日本心理臨床学会、日本臨床心理士資格認定協会、日本臨床心理士養成大学院協議会)会議


☆10月4日:臨床心理士会臨時理事会

 資格に対する7項目の基本的「考え方」を採択


☆10月12日:心理臨床学会理事会

 「1資格1法案(1種類の資格)を実現する方向で検討」の決議に至らず。


☆10月24日:医療心理師側のカリキュラムワーキンググループで学部および大学院カリキュラム検討。学部教育における基礎心理学を重視。大学院は指定大学院でない大学院からの受験も可能となるように配慮。


☆10月25日:全心協役員会開催

1)資格の基本コンセプト案(Ver.2)を承認。
○ 資格の名称:○○心理士、心理士(心理師)等が考えられる。
○ 資格の性格:領域汎用性の資格とする。
○ 医療機関においては医師の指示を受ける資格とする。
○ 受験資格者:
 @学部卒+大学院(修士)修了者
 A学部卒で○年間の実務経験をした者。

2)この間の経過報告および今後の方針を確認。
 12月23日の日心連総会で基本コンセプト、カリキュラム、要望書等を検討予定。承認されれば、心理学界総体として医師の関係団体との国家資格創設に関して調整を行う予定。


☆11月3日:日本臨床心理士会代議員会

 さる10月4日の理事会で決議された資格に対する基本的「考え方」7項目が代議員会においても決議される。


☆11月3日:第6回3団体会談

 @ 各団体からの経過報告
 A カリキュラムの検討
 医療心理師側、臨床心理職側それぞれが持ち寄ったカリキュラム案を検討し、日心連からの意見および提案を受けながらカリキュラム案の1本化を図る。それぞれの長所を活かしながら大枠については意見の一致にいたる。科目については課題が残る。


今後の予定

☆11月8日:日心連資格委員会、教育委員会合同会議
 カリキュラム一本化の最終段階の検討を行う予定。

☆11月8日:日心連常任理事会
 基本コンセプト、カリキュラム案、要望書等の検討

☆12月23日:日心連理事会(39団体約60名による総会)
 カリキュラム案および要望書の承認を図る


まとめ

 全心協から宮脇、藤本、松野の3名が医療心理師国家資格制度推進協議会の役員として、医療心理師側のカリキュラムに現場の心理職の声を反映させています。
 臨床心理職側は9月23日に全会一致で4つのコンセプトを基本とした1資格1法案を進めることを承認し、それを受けて臨床心理士会は11月3日の社員総会での7項目の決議にまでこぎつけました。心理臨床学会での活発な論議も現実認識に立つ建設的方向に進んでいるようです。
 医療心理師側は9月25日の総会で、4つの基本コンセプトを一部修正して1資格1法案を進めることを医療団体も含めて承認しました。この医療心理師側の修正意見を反映して、9月26日の3団体会議では基本コンセプトを前述のように一部修正しました。
 2009年12月23日に予定される日心連総会において養成カリキュラムや国家資格のための基本骨子を含めた要望書等が承認されれば、心理学界が一丸となって国家資格創設に向けて進んでゆくことになります。
 その後は、心理学界総体として日精協、日精診、精神神経学会などの医療関係団体と正式に資格創設のための協議を行います。
 医師団体との協議が成立すると、ここで初めて国家資格創設のために政府および政党に対して「心理職の国家資格創設」への働きかけを正式に開始することになります。
 この日を2010年の早い時期に想定して、3団体は全力で慎重かつ精力的に努力を重ねているところです。
 会員各位の今後一層の協力と支援をお願いする次第です。


<全心協事務局>

〒 130-0013 東京都墨田区錦糸2-6-10
錦糸町カウンセリングルーム

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