BLUE  A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI  2004年3月12日発売

 
1. ダンスホール (Cocco) 7. LOVE WAY (大森洋平)
2. 僕が僕であるために (Mr.Children)       8. 街路樹 (山口晶)
3. 路上のルール (橘いずみ) 9. OH MY LITTLE GIRL (竹内めぐみ)
4. 十七歳の地図 (175R) 10.闇の告白 (斉藤和義)
5. I LOVE YOU (宇多田ヒカル) 11.Forget-Me-Not (槇原敬之)
6. 太陽の破片 (岡村靖幸) 12.15の夜 (Crouching Boys)
   
 
 いやあ、尾崎さんの音楽についてこうやって書くの、すごく久しぶりな気がするなあ。まあ彼の音楽に関しては現在でも
節目節目でベスト盤やライブ盤、そして映像集として形にされているわけですが、ボクにとってはそれほど興味がわかな
かったんです。オリジナルアルバム6作に10代最後のライブを収めた2枚組ライブアルバム、そしてアルバム未収録であ
る『太陽の破片』『街角の風の中』、彼の没後に発表された数点のアルバムだけで、もう十分でした。
 
 
 基本的にボクの中で尾崎豊の音楽は、彼自身が歌っていなければ成立しません。彼が歌ってこそその歌たちに命が
吹き込まれると思っているし、それは今でも強く変わりません。なので去年の春に発売されたこのトリビュート・アルバム
に対してもボクは興味ありませんでした。”尾崎豊対自分”・・・彼の音楽に対してボクの中にあるのはこれだけなんです。
 
 
 ところがホントにごく最近、あるきっかけによってこのトリビュート盤を耳にしました。上にも書いたことですが尾崎豊の
音楽は彼が歌わなければ成立しません。メロディーだけでも歌詞だけでもダメ。そのふたつに彼の歌声が吹き込まれて
こそ命が宿る。だけどもし尾崎豊をシンガーソングライターとしてではなく、ひとりの作家として見たらどうなるか?ひとま
ず彼の歌声は置いといて、彼が作詞・作曲した作品を他のアーティストが自分流にアレンジして歌ったらどうなるのか?
そこに興味がわきました。”尾崎豊の歌”ではなく”尾崎豊という作家の作品”と見て感じたことを書きたくなりました。
 
 
 ということで、上記の12曲を1曲ずつ尾崎豊の歌声にこだわらず、あくまで世間一般的な”歌”として書いてみます。
 
 
 
1. ダンスホール (Cocco)
 彼女のシングル曲はもれなく聴いてました。特に『Raining』『ポロメリア』はショックを受けるほど好きでした。
このトリビュート・アルバムの発表当時、彼女は活動休止状態であったにもかかわらず、このアルバムの参
加に導いたっていうところに、尾崎豊の不思議な力を感じます。しかしあの寂しげで悲しげな歌が、歌手とア
レンジが変わるだけでこうも華やかな作品になるとは驚きです。しかもボクはかなり好きなアレンジだな〜。
 
 
2. 僕が僕であるために (Mr.Children)
 我が道を行く彼らが他のアーティストのしかもトリビュート盤に参加するなんて、ほぼ皆無なのではないでし
ょうか?そんな彼らのこの作品ですが、正直言いまして桜井さんの声にこの歌詞は愚直すぎると思いました。
彼らの”どこか皮肉さを漂わせてる作品”に好きな曲が多いせいか、桜井さんの歌声にはストレートすぎるよ
な、この歌詞・・・って素直に感じた。もしオリジナルを知らなければMr.Childrenの曲として好きになったかも?
 
 
3. 路上のルール (橘いずみ)
 彼女の2ndシングル『失格』が発表された時「彼女は”女版・尾崎豊”と呼ばれた」って、この曲の「今日の一
曲」登場時に書きましたが、それはあながち間違いでもないなって彼女のこの”路上のルール”を聴いてさら
に思ってしまった!(笑)まるで尾崎さんの『誕生』をイメージしてしまうようなイントロ。オリジナル曲にかなり
忠実なアレンジだし、確かに彼女に合ってる曲だな。ある意味彼女のオリジナルと言われても違和感ない。
 
 
4. 十七歳の地図 (175R)
 う〜む、これパンクというんでしょうか・・・。正直言ってこの曲だけは飛ばしてしまいそうになりました(笑)。
いや、175Rのアレンジがどうこうじゃなくって、この曲自体のカバーって不可能なんじゃないかなってしまうほ
ど、この曲には尾崎豊という一個人の想いが染みこんでる気がする。彼以外の誰が歌っても違和感をおぼ
えるんじゃないかな。A君が一生懸命書いた作文を横で書くのを見ていたB君が朗読してる・・・そんな感じ。
 
 
5. I LOVE YOU (宇多田ヒカル)
 この曲を聴いて思ったのは、尾崎豊の作品って女性が歌った方が染み込んで来る曲もあるんだなってこ
と。この曲を尾崎豊以外の男性歌手が歌っていると正直言ってヘドが出る(笑)。これは自分も男だからそ
う思うのかもしれないけど、尾崎さん以外の男性が歌うと、なんだか自己陶酔の世界を感じてしまうんです。
でも女性歌手が歌うと不思議と聴ける曲ですねえ。これはボクの中で新発見だったことのひとつです。
 
 
6. 太陽の破片 (岡村靖幸)
 はっきり言ってこれは『太陽の破片』ではな〜い!(笑)尾崎さんの数少ないミュージシャン仲間の彼の作
品は、実はまだ一度も聴いたことがありません。渡辺美里さんの作品でしか触れたことがなく、いつか聴こ
うかなとは思っていたのですが、結局聴けずじまい。縁がなかったんでしょうねえ。そんな彼が歌ったこの作
品、メロディー崩しすぎだ!いや、メロディーいくら崩してもいいけど、クスリで身を崩すな!(笑・・・えない)
 
 
7. LOVE WAY (大森洋平)
 この方の歌声も今回初めて聴きました。でもあまり違和感は感じませんでした。っていうより、この作品自
体、歌詞がとても哲学的で、歌詞の中に尾崎豊の姿は見えてこず、どちらかといえば第三者的な視点で歌
われているからなのかもしれませんね。誤解を恐れず言ってしまえば、尾崎さん本人が歌うこの作品にも、
彼の内面から発する鬼気迫るものを感じるこそすれ、尾崎豊本人の姿が見えてこない作品なんです・・・。
 
 
8. 街路樹 (山口晶)
 な〜んか流してるように歌ってるなあ。気合入ってないなあ〜。っていうのがこの方の歌声の第一印象。
でもこの不思議な空気感が次第にボクをとりこにしていきました。尾崎さん本人のこの曲は、どこかキチッ
キチッと歌われているなっていう印象が強いのですが、この方のこのいい意味で気の抜けたようなボーカ
ルが、この曲の主人公のやるせなさをよく出してると思う。この山口晶さんの歌、今度探してみようっと。
 
 
9. OH MY LITTLE GIRL (竹内めぐみ)
 「5. I LOVE YOU」のところにも書いたんですけど、尾崎さんの作品、特にバラード曲って、女性歌手が
歌うとこうもハマるものなのかなあと、この作品を聴いて改めて思いました。以前この方の『何もない僕等
』という曲を「今日の一曲」のコーナーでも紹介しましたが、この曲と同様の世界観を感じます。希望と不
安の入り混じった若い世代独特の気持ちを、すごくよく表現してるよなあ。女性ボーカルって合うんだね。
 
 
10.闇の告白 (斉藤和義)
 オリジナル曲ではダイナミックなロックサウンドに彩られていたのが印象的な作品でしたが、彼はそうい
うダイナミックなものを全部取っ払って、歌声とアコギという最小単位の伝え方により、「この歌ってこんな
にもつらく悲しい歌だったのか!」ってことを思い知らしてくれました(笑)。反対に尾崎さんはアレンジをダ
イナミックにすることで、その悲しみを紛らわしたかったのかもしれないな、なんてことまで考えちゃった。
 
 
11.Forget-Me-Not (槇原敬之)
 意外というか何というか、この作品の持つ雰囲気と、マッキーの作品の持つ世界観って、実はすごく近
いところにあるんだな〜って、彼のボーカルによるこの曲を聴いてそう思いました。他のアーティストには
この曲の世界観は表現できないだろうと思ってたボクはすごくショックだったのと同時に、この曲マッキー
の曲としてイケるじゃん!と正直そう感じました。たとえ姿かたちは違えども(←確かにかなり違う(笑))。
 
 
12.15の夜 (Crouching Boys)
 尾崎さんの息子・HIROと、須藤晃氏の息子・TOMI YOの二人によるカバー・・・ということなんですが、
最後の最後で「何だかなあ・・・」という印象を持ってしまいました。ある意味これはカバーではなく、『15
の夜』にインスピレーションを受けたまったく違う作品のように思えます。まあこの曲を変に料理されな
くてよかった・・・というのが正直なところ。ただその反面、やっぱり残念だなあっていう気持ちも残る。
 
 
 

 以上、全12曲。”尾崎さんの歌声にこだわらず”と書きましたが、やっぱり十二分にこだわってしまいますねえ(笑)。

トリビュート・アルバムって、他のアーティストのものも実にたくさんリリースされていますけど、今回のアルバムを聴いて
良くも悪くも勉強になったなあって思いました。”尾崎豊の声じゃなきゃ”と聴くのを拒んできたこのトリビュート盤ですが
歌手やアレンジが変わるだけで、その曲はいくつもの顔を見せる。そして時にはオリジナルを凌ぎかねないものもある。
まあでもやっぱり尾崎豊の歌は、尾崎豊本人が歌ってこそ、というのはボクの中で変わらず揺らぎませんけどね(笑)。
 
 
 このアルバムが発表されると知った時、ぜひ聴いてみたいなあと思ったのは、尾崎さん本人が敬愛してやまなかった
浜田省吾・佐野元春というふたりのアーティストによる尾崎豊のカバーでした。でも一方でこの二人が安易にカバーして
しまったら、それはそれで何かイヤだなあ、とも思ってました。聴いてみたい!・・・でも聴きたくない・・・みたいな(笑)。
とにかく今回はっきりしたのは、やはりボクにとって尾崎豊というアーティストは特別な存在なんだってことですね。

(2005.10.17)

 

尾崎豊トップページへ