木下貴雄

就業規則を守れない

  • 就業規則の内容を守ることができないのですが、どうすれば良いでしょうか?
  • 少なくとも、見掛け上は就業規則(労働基準法)を守るようにすることが大事です。

就業規則を守ることができない理由

就業規則を守ることができないというのは、労働基準法で定められている部分と思います。よく相談を受けるケースで言うと、次の2つが多いです。

  1. 残業手当を支払うことができない
  2. 年次有給休暇を与えることができない

残業手当を支払うことを前提にしていない、年次有給休暇を取得することを前提にしていないで、採用時の賃金額を決定していることが、そもそもの原因です。

求人の募集を行う際に「他の企業と比べて見劣りするから」という理由で、無理に高い賃金額を提示して、後になって困ってしまうことになります。

対策1「採用時の賃金を見直す」

今後は、残業手当を支払うことを前提にして、年次有給休暇を取得することを前提にして、年間の支払額が同じになるように、採用時の賃金額(基本給)を低くすることを検討されてはいかがでしょうか。

支給される金額は同じでも一方は法律違反をしている会社、一方は法律をキチンと守っている会社で、会社に対する信頼感が大きく異なり、仕事に対するモチベーションにも大きく影響します。当然、成果も違ってくるでしょう。

確かに提示できる金額では他の企業と比べて見劣りがして、応募者が減るかもしれません。しかし、減ったとしても応募者がゼロになることはないでしょうし、入社して誠実な企業と分かれば離職率も抑えられます。

長期的な視点で見れば、賃金を低く設定して法律を守る方が企業にとっては得になると思います。現実にそのような企業は私の周りに何社も存在しています。

対策2「賞与を減額する」

この対策2は、賞与の金額を予め定めていない場合に限ります。就業規則や雇用契約書等で、予め○ヶ月分や○万円など、賞与の支給額を具体的に定めている場合は、そのとおりの賞与を支払わないといけません。

残業手当の支払

賞与は支払っているのに、残業手当を支払っていない企業があります。

残業手当の支払は労働基準法で定められていて、これを支払わないと労働基準法違反になってしまいますが、賞与を支払わなかったとしても労働基準法違反になることはありません。

賞与を減らすかゼロにして、残業手当を労働基準法(就業規則)に基づいてキチンと支払うのが賢明な方法です。

年間の支給総額としては同じ金額を支払っていたとしても、残業手当として支払うのか、賞与として支払うのかでは、法律的に雲泥の差があります。

年次有給休暇の取得

年次有給休暇の取得についても同様です。

社員から年次有給休暇の請求があったときは、基本的に会社は取得を拒否することができません。

したがって、社員の請求どおりに年次有給休暇を与えて、その分を賞与から減額する方法が考えられます。

ただし、注意点として、勤務態度などの評価をした結果、賞与を減額するのであって、年次有給休暇の取得を理由として減額するのではないということにしておかないといけません。年次有給休暇の取得を理由にして不利益に扱うことが、労働基準法により禁止されています。

対策3「見掛け上は就業規則を守るようにする」

残業手当の支払について、基本給の中に残業手当を含んでいるという形に変更することも可能です。

ただし、この場合は社員にとっては不利益な取扱いになりますので、個々の社員から個別に同意を得ることが欠かせません。

また、残業手当としていくら支給しているのかを具体的に区別しておく必要があります。例えば、基本給20万円のうち、5万円を定額の残業手当として支払っている等です。

就業規則(賃金規程)でも、そのように規定しておく必要があります(金額まで明示する必要はありません)。

そして、定額の残業手当が5万円で、実際の残業時間に基づいて計算された残業手当が6万円だったときは、差額の1万円の支払義務が残ります。

このようにすれば、残業手当の支払が抑えられ、見掛け上は就業規則(労働基準法)を守ることができるようになります。

この方法は会社にとっては都合の良い制度ですが、社員にとってはサービス残業ではないかという不満を抱かせやすく、信頼関係を壊しかねないので、積極的にお勧めできる方法ではありません。

賞与を切り詰めたり、経費を削減したりしても、どうしても残業手当が支払えない場合の最後の手段として、労働基準法を遵守するために仕方なく採用するものと認識しておくべきです。


対策として、3つお伝えしましたが、最初にお伝えしたように、残業手当を支払うことを前提にして、年次有給休暇を取得することを前提にして、採用時の賃金額を見直す方法(対策1)が会社にとっての最善の策と言えます。

既に在籍している社員については、昇給を抑えて、いくつかの方法を織り交ぜながら対応することになるでしょう。

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