木下貴雄

雇用契約書の作成

従業員を採用するときは、労働条件をキチンと伝えていますか?

雇用契約書や労働条件通知書などの書類を渡していますか?

従業員とトラブルになる会社は、たいがいこの労働条件をあいまいなままで採用しているようです。

労働基準法第15条

従業員を採用するときは、賃金や労働時間などの労働条件を明示することが、労働基準法第15条で義務付けられています。

また、一定の事項については、書面で明示しないといけないことになっています。

よくもめる例を挙げると、「試用期間中の給料が聞いていた金額より低い」、「残業はないと言っていたのに残業させられる」、「思っていたより休日が少ない」等です。

このような言った言わないのトラブルを防止するためにできた条文です。

書面で明示しないといけない事項

雇用契約書などの書面で明示しないといけない事項は次のとおりです。

  1. 雇用契約の期間(1年など。期間を定めないときは定めないことを記載する)
  2. 勤務地、仕事の内容(採用直後のもの)
  3. 始業及び終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、交替勤務に関する事項
  4. 賃金の決定、計算及び支払いの方法、締切日、支払日
  5. 退職に関する事項(解雇の事由、退職の事由、定年年齢など)

「有給休暇を取らせたくない」、「残業手当を払いたくない」と言っても、記載は省略できません。記載しなくても、労働基準法どおりの内容が適用されます。

例えば、雇入れから6ヶ月が経過して8割以上出勤していれば有給休暇を取る権利は自動的に発生しますし、残業させれば残業手当を払わないといけません。

法律以前の問題

法律がどうこう言う前に、従業員との間に信頼関係を築くことは大切です。信頼できない会社のために、社員が一所懸命になって働くはずがありません。手抜きの方法を覚えるだけです。

会社が雇用契約書の記載内容を省略したり、嘘を記載するということは、会社から信頼関係を築くことを拒否しているようなものです。情報は簡単に手に入りますので、社員には会社の意図がばれます。

採用時に、どういう条件で雇い入れるのか、雇用契約書に正直に記載して、ハッキリさせておきましょう。信頼関係を作り上げる最初の出発点となります。

雇用契約書の作成

労働条件の明示の方法については、2つ注意点があります。

雇用契約書として会社で一部を保管する

労働基準法では、「書面で明示すること」が定められていますので、法律的には会社から一方通行で、「労働条件通知書」として本人にこれを渡せば十分です。

しかし、後になって従業員から「そんなの、もらってない」と言われても困りますので、労働条件通知書ではなく「雇用契約書」として、従業員が承諾した旨のハンコをもらって、1部は会社で保管しておきましょう。

証拠として雇用契約書を残しておくという趣旨なのですが、いきなり新入社員を疑ってかかるようで気が引けるかもしれません。しかし、トラブルが起きないようにするためには、トラブルが起きにくい仕組みにしておくことが大切です。

その仕組みの1つとして、雇用契約書を取り交わすことをお勧めします。

雇用契約を更新する際は、その都度、雇用契約書を取り交わす

もう1つの注意点は、有期雇用の場合です。書面で明示する事項として、「雇用契約の期間」が挙げられています。このときに、最初に契約した期間で終了する場合は、問題になることはないでしょう。

問題になりやすいのは、最初に契約した期間以降も引き続いて勤務する場合です。雇用契約の期間が過ぎたにもかかわらず、改めて雇用契約書を交わしていないと、「期間の定めのない雇用」に切り換わったと判断される可能性が高いです。

そうなると、辞めてもらう場合は、解雇予告の手続きが必要になります。また、この解雇には、正社員を解雇するときと同程度の正当な理由が必要とされ、認められない(解雇できない)可能性が高くなります。

雇用契約を更新するときは、自動更新とするのではなく、その都度、必ず、雇用契約書を取り交わしてください。

その際、次回の雇用契約を更新しない可能性があるときは、その理由や条件を提示して事前に納得してもらうことが大切です。雇用契約の終了間際になって、「今回で雇用契約は打ち切ります」と不意打ち的に行うのはトラブルの元です。

トラブルを防止するためには、雇用契約の更新をできるだけ期待させないことが重要です。

雇用契約書のサンプル(雛形)

従業員を採用するときは、トラブル防止と信頼関係の構築のため、雇用契約書を交わしましょう。

「雇用契約書」のサンプル(雛形)とその書き方をダウンロードできるようにしました。ファイルはWord2000です。

(2003/12作成)
(2014/5更新)