囁き三部作の中で一番好きな話です。時間を忘れて
グイグイと引き込まれるように一気に読んでしまう作品に
時々出会いますが、この「暗闇」がまさにそれでした。
物語的に(この場合ミステリー的にと言った方がいいのかな)は
そんなに斬新な話だとは思いませんでしたが、非常に面白かったです。
田舎に休暇に来た主人公に可憐なヒロイン、美系の双子に
厳格な父親と人形のような母親、厭味なオバさんとドラ息子と
現実社会では非日常的、しかし
小説の中ではいたって普通の人たちが活躍します。
いってみれば今回の話は「王道」といえるありふれた構成を
しているように感じます。「王道」って話は作りやすいのだけれども
下手すると「陳腐」になってしまいます。王道を選ぶなんて
綾辻らしくないと感じる面もあったのですが、綾辻らしい
雰囲気で見事に
「陳腐」でなく「王道」の小説が完成しています。なに言ってるのか
自分でもよくわからなくなってきた…
とにかく、これは結構お気に入りの作品です。ラストも
僕的にかなり良い感じでした。エンドレスってかんじで。