「エリヤ」演奏会を終えて
鈴木 愼吾
失礼な言い方をお許し頂くなら、湘フィルの演奏会に来て下さるお客様のレヴェルはかなり高い。演奏中の客席の雰囲気からも勿論ですが、終ったときの拍手の表情にそれを強く感じます。一昨年の「ヨハネ」の後の、一瞬の静寂。昨年のデュリュフレとラシーヌの演奏後の反応の違い、そこには、たった今終った曲への思いが込められていました。
そして今年、音が消えた瞬間のあの拍手に、私は「エリヤ」演奏会の成功を確信することが出来たのです。
この「通信特集号」には、高橋薫子さんがブログに書かれた文章を転載させて頂きました。ご一緒させて頂いた歌手の方からの、これほどのお褒めの言葉は面映いほどです。また、皆さんの周りにも演奏会への誉め言葉が沢山届いているようですね。聴いて頂いた方に私たちからの確かなメッセージが届けられたことを素直に喜びたいと思います。
その上で、私たちが更に一皮剥けた演奏をするためには何が必要かを、これからの練習を通して充分考えていかなければなりません。
まず、今回の成功の要因は、当然ですが練習の積み重ねにあります。しかも、それはあの大曲をわずか10ヶ月で、あそこまで指導された松村先生を初めとする先生方の力に負っています。オケ合わせ直前、「一度目は出来なくて、どうして二度目なら出来るのか」との指揮者の怒りの問いかけは忘れられません、あれは緊張感の欠如と復習をしていないことの現れです。一度目は思い出すために歌い、二度目は「ああ、そうだった!」と多少マシになる。松村先生が就任されてから18年間、断ち切れなかった愚かな繰り返しを、もういい加減に切って捨てたいですね。 あの悔しさを各自の頭に叩き込み、これからの練習に臨みたいものです。
外国語の発音も永遠の課題。日本語(カタカナ)には常に母音が付いていること、子音だけの発音には母音を付けないとの意識を持つだけでも随分変わるような気がします。例えば「S」は「ス(su)」ではなく、「P」は「プ(pu)」では無いとの意識。「そんな初歩的なこと言って馬鹿にするなよ!」と皆んなから自信を以って言われるようになる日が来ますように。
これもまた永遠の課題、発声。斎藤先生はいつも仰る「若いときは普通に出来ることでも、もう皆さんは努力しなければ出来ない年齢なのです」と。近年、ますます体力筋力の落ちている私にも厳しい言葉です、でもこれは当然のこと。自分の発声法は万全なんて思っている人は、まさか居ないでしょうが、ヴォイトレの時間を、何の考えもなく、ただ声を出して過ごしているだけの人は居そうな気がします、指導者の指示通りにやろうとしているか、本当に出来ているのか、常に冷静に外から自分を見つめて見ましょう。
演奏会が成功して本当に良かったと喜びつつも、これらのことを自戒しつつ考えています。
プログラムにも書かせて頂いた松村先生の言葉『自分たちがどう歌いたいのか、というものが無ければ指揮者の仕事はありません。この曲に出会ったからには、偶然に、初めて演奏を聴くことになった人にも、その素晴らしさを伝えなければならない使命があるのです』を心に刻んで下さい。歌う人の心が伝わなければ、その音楽は死んでしまうからです。
演奏会への嬉しいメッセージが続々と寄せられていますが、まず、共演して下さったソプラノの高橋薫子さんからのメッセージを紹介しましょう。これは、薫子さんがブログに書かれたものです。インターネットの見られる方は、下記のアドレスにもアクセスしてみて下さい。
http://nobu-konohitorigoto.spaces.live.com/
これが、素晴らしい演奏会であった。
まず、曲がいい。数年前に初めて歌った時には必死だったあまりか、
他の人たちの歌や合唱のことがどうだったか何一つ記憶がない。
今回、こんなにも名曲だったのかと驚くばかり。
湘南フィルハーモニー合唱団というアマチュアの合唱団のコンサートだが、
ここがまた素晴らしい合唱団
いや、お世辞じゃなく。
こんな長い曲を仕上げるのは大変だったことだろうと思うが、繊細な響き、
ハーモニーを聴かせるかと思えば、
怒涛のようなパワーあふれる歌の波をも作り出せる。いや、驚いた。
実は昨年はこの合唱団とプーランクのグロリアを共演させていただいたが、
その時よりも印象は大きかった。
何度も涙ぐんでしまうほどのエネルギーを感じ、天の扉が開いたのを感じた。
いや〜。ありがたかった。
折りしも日曜日。教会には行けなかったが、
素晴らしい礼拝の時を持つことが出来た気がする。
いや、ほんと。
この曲は預言者エリアの生涯をソリストと合唱とで綴るドラマチックな作品だが、
聖書の記述では活字を読むことで想像する世界が、
実際に目の前に映像として立体的に存在していたように感じた。
まさに飛び出す絵本状態
私といえば、周りが風邪引きばかりでビクつきながら過ごしていたが、
なんとか持ちこたえ、歌いきれてよかった。
ドイツ語を何箇所かかんじゃったが、それは秘密
昔、、1999年だったが、その時に比べたら落ち着いて歌えたかもね。
ボチボチな進歩でもいっか。
また何年かして歌うチャンスがあるといいな〜。
もっとうまく歌えるようになってやる〜〜〜〜
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以前に演奏会のプログラムの解説を書いて下さっていた、旧団員の大沢さんからのメールです。
演奏会が終わって、鈴木さんはじめ湘フィルの皆さま、きょうはまだ興奮醒めやらぬというところでしょうか。私も印象のはっきりしているうちに、感想を述べなくてはと思います。
出だしから、ハーモニーがきれい、パートごとの声が整っているなと感じました。これは、歌っていると自分の周囲の声だけが大きく聞こえるので、ご自分たちにはよく判らないと思いますが、私の経験からも実感することです。きれいでした。
「エリヤ」はドラマですから、表現がなにより大切。第11曲のバアルを拝む人々の叫びはもっともっと熱狂的なものだっただろうと思いつつ聴いていましたが、第15曲16曲と進むにつれ、体の芯まで響いてきました。ふと見ると、隣の席でハンカチが・・・。エリヤを物語としては百も承知の夫が感動していて、「ええーっ!」と思いました。
このあたりが本当に素晴らしい表現だったと思います。
第2部でエリヤの悲嘆のモノローグとチェロの掛け合いは、心に沁みる演奏で感動的でしたね。後半は神と人間の間に立つ預言者の孤独をしみじみ感じる、かなり内容の宗教的・哲学的な部分が多いところですから、引っ張っていくのに力が要ったことでしょう。オーケストラが大編成ならもっと迫力があったでしょうけれど、それは難しいのですね。
発音のこと。先生も以前からよくおっしゃっていましたが、子音があまり聞こえません。ドイツ語を理解しない聴衆であっても、しゃべりがはっきりするともっとドラマティックになったと、それがちょっと惜しく思いました。
ピアノ曲とは全くと言うほど異なるメンデルスゾーンの別の魅力を充分聴かせていただきました。演奏会の成功、おめでとうございます。
大沢栄子
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¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶ 会 場 ア ン ケ ー ト よ り ¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶¶
◆ 字幕が出ていることもありましたが、それだけでなく音楽からその情景が浮かぶようでした。 指揮者の手から鳥(?)や火車が駆け抜けたあとの風が見えました。決して歌と楽器の音だ けでなく、歌劇というか、映画を見ているかのようで、すばらしかったです。
□ 迫力があってすばらしかった。メンデルスゾーンの曲も変化に富んでいてよかったと思う。 さすがに18回の経験をふまえて、堂々たる演奏会だった。
■ 感動的でした。迫力あり、荘厳さありで、久々に聖霊体験したかな。魂が生きる力をもらっ たという感じです。茅ヶ崎カトリック教会のクリスマス・チャリティーコンサート、是非ご 案内下さい。素晴らしかったです。第26曲アリアの背後に流れるセロの哀愁のあるメロデ ィーが美しい限りでした。天使の歌声もです。来年の演奏会も楽しみです。
(別のコンサートの時にパンフを目にして…初めて湘フィルを聞いて下さった方です)
◇ 大変素晴らしい演奏で感動しました。長い曲で、かなりの難曲。練習が大変だったでしょう。 全体のバランスも良く、ドイツ語もはっきり聞き取れました。次回は同じ舞台で歌わせてい ただきたいのですが…。(MMホールのスケジュール表を見て来られた方です)
■ ステージ横にあった字幕のおかげもあり、全てが美しい演奏でした。非常に感動し涙が出ま した。指揮者が素晴らしい。(初めて湘フィルを聞いて下さった方です)
□ 大曲を立派に歌い込んで仕上げたご努力に敬意を表します。男声が少ないですが、テノール はまとまってよく通りました。時折「地声」あり。ベースは少し弱いのが惜しまれます。
マルベリーは素晴らしいです。発声が、きちんとできてます。お若いし!!まさに天使の声。 オケ、合唱、ソロのバランスも上手にまとまっていました。大曲であるので、聴く方も少々 疲れます。お疲れ様でした。〈追記〉チェロのソロ美しくひびきました。格好よかったです。 (初めて湘フィルを聞いて下さった方です)
◆ 表現力豊かな合唱の真摯なアプローチともども作品の魅力を十二分に伝えていました。パン
フレットを見て思ったのですが、めずらしい曲を数多く演奏されているようですが、ぜひ、 今後も、演奏機会の少ない曲を聴かせて下さい。(前回の演奏会で知って来て下さった方)
◇ オラトリオの素晴らしさをはじめて知った。前回と同様、コーラスを聞いて、何の楽器より も勝る人間の声と思った。
■ このコーラス(今回のような)は初めてでした。後半は全く引きこまれて、毎月おまいりに 行くお寺のお香みたいな香りを体験してしまう不思議さでした。友人が今年で最後かも…と 言っていましたが、まだまだ続けてほしいと思います。素晴らしい2時間でした。
□ とても美しいハーモニーでした。ソリストの方々もすばらしい。何よりも毎年、大曲の演奏を続けていらした団員の皆様の努力に敬服します。よい指導者を得て幸せですね。
(初めて湘フィルを聞いて下さった方です)
◆ 100点満点。合唱もオーケストラも素晴らしかった。マルベリ、ソリストの皆さんも。
□ すばらしい演奏でした。大曲を劇的に演出されて感動しました。指揮者に拍手。いい曲を取り上げられました。積み重ねをたたえます。
■ 神の福音を、平安を、招きを宣べ伝える素晴らしい演奏でした。列王記のできごとが、演奏とともに、歌声とともに頁をめくるように迫ってきました。メンデルスゾーン、すばらしい!!!またエリアを生でききたいです。(初めて湘フィルを聞いて下さった方です)
◇ 男声が少ないのにがんばっていられるのに感心しました。最初はfでソプラノが強く、バランスが気になりました。グロリア室内オーケストラが聞く度に安定してきたと思います。ソプラノ、アルト、チェロのソリストが素晴らしかった。マルベリ・クワイアを聴きたかったのですが、やはり素晴らしいですね。オーボエもよかったですね。
■ 母のラストコンサートに娘達とそのだんなを連れて初めて来ましたが、主人はこんなにレベルの高い合唱団とは思っていなかった様で満足していました。
Elias感想集
濱口 様
演奏会、ご成功おめでとうございます。じっくり聞かせていただきました。やっぱり上手ですね。難しい曲と聞いていますが(まだ私は歌ったことがないのでどれだけ難しいかはわかりませんが)、見事に歌いこなせていました。気のせいか、ソプラノの声質が少し若くなっていたような気がしました。皆さん、オケに負けず、よく響いていました。強いて言えば、テナーはよく聞こえていたのですが、バスが少し弱い感じがしました。それでも、男性の人数は我々のところと対して代わらないと思うのですが、合唱は人数ではないですね。でも、大変な曲ですね。長時間、ほとんど歌いっぱなしで、しかもフォルテが多いので、相当エネルギーがいると思います。
ソリストも、福島さんはさすがでした。我々も、サントリーホールで演奏したブラームスのドイツ・レクイエムの時にソロをお願いしましたが、安心して聴けますね。アルトの森山さんも、なかなかよかったと思います。
来年は、ドヴォルザークの「レクイエム」とか。楽しみにしています。
本日は、お疲れ様でした。
長嶋
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Subject: ありがとうございました。
武村です、お早うございます。
昨日演奏会を聴かせていただきました。「エリア」は、恥ずかしながら始めて聴く曲でしたが、大変楽しく聴かせていただきました。さすがのメンデルスゾーンさん、良い旋律のオンパレードですね。大曲ですが、最後まで声が出ていましたから、歌う側にとっても気合いのこもる楽曲なんだろうなと感じた次第です。
ソプラノの方が、エリアと「若者」の掛け合いの時にパイプオルガンの横で歌ったり、マルベリー・クワイアが参加したりで演出も興味深く拝見しました。
テナー・バスのソロの方が、合唱団に煽られたのか、声が裏返ってしまいましたね。やはり、女声は強いなと変な感心の仕方をしてしまったり・・・・。
柴田氏が、出張の予定変更で来ることが出来なかったのが残念ではありましたが、良い演奏会にご招待いただき、あらためてお礼申し上げます。
武村
Subject: ありがとうございました
昨日の夜の演奏会 ありがとうございました。メンデルスゾーンは旋律がきれいなので 楽しめましたが大作でしたね〜 体力がいるのではないかと思ってしまいました。
まずは御礼まで
渡辺
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Subject: ELIAS素敵でした
濱口 様
昨夜は有難う御座いました。恥ずかしながら曲名は知っていましたが聞くのは昨夜が初めてでした。
今回は貴兄が最前列で、愚妻がいち早く目に留めてくれました。なんですか男性が少なくなった感じでしたが去年・一昨年とプログラムを引っ張り出してみましたが、それほど変わってはいないのですね?。お名前を拝見してみますとけっこう入れ替わりがある様に思いましたが・・・?。
今回は舞台袖の両側に字幕が表示されて歌詞の意味が判り、無学の老生もプログラムを見なくても劇?の流れがつかめて助かりました。愚妻にも大好評でした。
有難う御座いました。
村田
鵜飼 様
頂いたチケットで聞かせていただきました。馬力は確かに要りそうですね。休憩前にはかなり疲労が出ていたように聞こえました。 それでも心配した程ではなく、最後まで歌えて良かったですね。かなり良かったと思いますよ。
聞いていただけの私でもかなり疲れましたが、鵜飼さんは『今日はお疲れ休み?』それとも、『晴れ晴れ会社で仕事?』僕は“こだま”が無くなるので、直ぐに飛び出して帰ってしまったけど、休憩の時間には、誰かさん達と歌はやっぱり筋力と体力だよね〜。それだけじゃないだろうけど。などと話していました。
12月にお会いできるのを楽しみにしています。まずは お礼まで
村田 ****************************************************************************
鵜飼 様
昨夜はお疲れさまでした。
今回は、遅刻したら途中入場できないから、3分前に必死で会場に滑り込みました。
「エリヤ」は本当に良い曲ですね。長いけれど、退屈しません。28曲の重唱からが大好きです。
昨夜はソリストも良かったし、湘フィルの演奏も安定していて良い演奏だと思いました。松村先生もご満足だったのでは?
石田さんと濱口さんにも、どうぞよろしくお伝えください。
会場で渡辺ご夫妻と村田さんにお目にかかりました。
また、12月のOV会で。
安井
指原 様
21日のエリヤはすばらしい演奏でした!
ありがとうございました!
合唱もソロも良かったですよ。
第29曲目「見よ、イスラエルを守り給う者は」
の合唱部分の音楽の内容と演奏が
私は特に気にいりました!
それにしても松村努氏はいい指揮者ですね!
カトリックのクリスチャンのようですね?
本当にありがとうございました!
あれだけの聴衆が
潜在的求道者だと思うと
嬉しくなってきました!
ではまた!
鈴木団長へ
指原です。
小生の尊敬する、海老原先生からの感想を転送します。
併せて、海老原先生からの感想で刺激された小生の感想も付け加えます。
「宗教音楽は 祈りの中から生まれ、祈りによってのみ 生きています。」
(グレゴリオの家のゲレオン神父様の言葉)
まさしくその音楽を作曲した人、奏でる人、聴く人も、本人が意識しているかどうかは別として、祈りの中で神様に出会い、呼び集められ、神様を賛美するように選ばれているのだと思います。
宗教音楽が生きるとは、宗教音楽が人を生かす力があるということでしょう。更に神を賛美するという意味では祈る言葉を加える必要があります。 「エリヤ」の29曲(見よ、イスラエルを守り給う方は)はその典型で詞(詩121:4,138:7)「見よ、イスラエルを守り給う方は/まどろむこともなく、眠ることもない/たとえあなたが不安のうちに歩むとも/主はあなたを元気付けて下さいます」がメンデルスゾーンを通して合唱曲としてメロディーがつくことで生き生きとした躍動感が与えられ詩を口ずさむことができるようになります。
特に「エリヤ」の練習を積んできた私達合唱団一人一人にこそ、松村先生の言葉通り出来ない悔しさや、ついに歌えた時の記憶がそれぞれの練習の場面場面と重なり思い出せ、Siehe,der
Huter ...という言葉はきっと一生忘れることはないでしょう。
今回の定期演奏会を終えても、定期演奏会でこの曲を歌ったことを思い出す毎に、私達を超える何者かが私たちを見守っていて下さったから定期演奏会でも十分歌えたという実感が私達一人一人を捕らえたと思うのです。まさしくこれが宗教音楽が生きている証しを私達こそ与えられ聴衆の方にも共感していただけたのではないでしょうか。