モーツァルトの教会音楽(K.341の事など)          B 鈴木愼吾
 
 
  ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜1791)が、生まれ育ったザルツブルグは、当時ローマ教会領でした。領主はローマ教皇から任命された大司教でしたから、その宮廷に仕える音楽家たちの日常は聖務が中心で、典礼音楽の作曲と演奏が主になりました。モーツァルトの父レオポルドは優れたヴァイオリン教本を残すなど、実直な音楽家でしたが、教育を第一に考え、子供を伴った旅行が多く、宮廷での地位は副楽長まででした。モーツァルトの少年時代の領主、ジーギスムント・フォン・シュラッテンバッハは、何事にも寛容な人物で、音楽にも深い理解を示しており、父子とも良好な関係を保ち、長期の旅行も認められていたようです。
 その少年時代の数多い逸話の中の一つに、13歳でのイタリア旅行の際、ローマのシスティーナ礼拝堂に伝わる、門外不出の秘曲、9声の二重合唱「ミゼレーレ」を聴いただけで書き記してしまったと言う驚嘆するような神童ぶりが伝えられています。教皇庁所属の歌手によって、その正確さが証明されると、ローマ教皇はその才能を賞賛して勲章を授けたと言うことです。
ザルツブルグの教会音楽は、長いものでも演奏時間が大体30分位と短いことが特徴です。 彼は先のイタリア旅行で教えを受けた、対位法の大家マルティーニ神父宛の手紙で、その決まりについて(…例えば、キリエ、グロリア、クレド、使徒ソナタ、オッフェルトリウムまたはモテット、サンクトゥスにアグヌス・デイまで全部揃って45分を超えてはいけないことになっているのです。)と記しています。
少年期の教会作品としては、15歳の作と言われる「洗礼者ヨハネの祝日のためのオッフェルトリウム」(Offertorium pro fest Sti Joanis baptisti) K72は以前からレコードCDなどで比較的よく聴くことが出来ました。余りに有名な「アレルヤ」を持つ、モテット「踊れ、喜べ我が幸いなる魂よ」(Exsultate jubilate)K165は、カストラートのために書かれた17歳の作。ベートーヴェンがその旋律を、かの「第九」に用いたのではないかとも思われる、オッフェルトリウム「主の憐れみを」(Misericorudias Domini)K222は19歳の時。21歳の作品グラドゥアレ(昇階唱)「天主の母、聖マリアよ」(Sancta Maria Mater Dei)K273は、まさに聖母を讃えるにふさわしい、美しい合唱曲。その他20歳までに「クレドミサ」K257、他ミサ曲10曲余りなど、多数の作品が残されています。
 
 1771年、父子が2度目のイタリア旅行から帰ったその日に、領主ジーギスムントが亡くなり、72年、新領主ヒエロニムス・フォン・コロレド大司教が就任しました。この人は非常に厳格で、先の領主のように父子揃っての長期旅行など容易に許可されませんでしたし、モーツァルトとは、最初から互いに馬が合わないと言う感じだったのです。1777年、21歳の彼は遂に大司教と衝突して解雇され、旅行が許可されなかった父に代わって、母と共に、就職運動のための、いわゆるマンハイム、パリ旅行に出発することになります。
 ミュンヘンを経て、マンハイムを訪れた彼は、音楽を愛する選帝候カール・テオドールの宮廷の、新しい楽器「クラリネット」を含む優秀で近代的な編成のオーケストラの響きに、すっかり魅せられ、楽長カンナビヒを始めとする楽員たちとも親しく交流したのでした。
 このマンハイムでのもう一つの出来事はアロイジア・ウェーバーとの出会いでした。彼女は、後に妻となったコンスタンツェの姉で、また、あの「魔弾の射手」の作曲家カール・マリア・フォン・ウェーバーの従兄弟にも当たります。
 彼は、この美しいソプラノ歌手に、すっかり夢中になってしまうのですが、結局、失恋してしまいます。
余談ですが、後、アロイジアの夫となった画家、ヨーゼフ・ランゲが描いた未完の肖像画は、日本でのモーツァルト論の草分けとなった小林秀雄の著書「モオツァルト」によって、すっかり有名になりました。
 さて、恋愛騒ぎでマンハイムに長逗留している彼に、父親は怒り、即刻パリに赴くよう手紙で督促します。しかし、そのパリは、いくつか成功はあったものの、かつて天才少年を大歓迎した時と打って変わり、冷たく彼を拒否したのでした。そればかりか長旅に疲れた母親は病に倒れ、パリ到着から4ヶ月後に、この世を去ってしまうのです。 この時、母の死を知らせる父親と姉、それに友人の神父宛に書かれた手紙では、モーツァルトの優しい気配りと、「死」に対する思いを窺うことが出来ます。
 こうして就職にも失敗し、厳しい試練の後、故郷に帰った彼は、父の奔走によって、心ならずも再び宮廷オルガニストとして宮廷に勤務し始めました。ザルツブルグとその大司教を嫌悪しながらも表向きは平穏な生活でしたが、先の旅行でなめた辛酸は、彼を人間的に大きく成長させ、またマンハイムでの充実したオーケストラ体験や、パリの洗練された伝統を知ったことによって、音楽的にも、もはや巨匠と言って差し支えない域に達していたのでした。
この時期の教会音楽の代表作には、ミサ曲ハ長調K317「戴冠式」。 ミサ曲ハ長調K337。ヴェスペレ(晩課) ハ長調K339など。また教会音楽以外の作品も名作と呼ばれるものが目白押しですが、マンハイムの影響が色濃い「協奏交響曲変ホ長調」1曲だけをあげておきます。磯山 雅氏が、この曲について書かれた文章を紹介してみましょう。《モーツァルトのこの作品においては、明るく積極的なヴァイオリンとふくよかで憂いを帯びたヴィオラがそれぞれ独立した個性を持ち、ほとんど人格的な存在感を漂わせながら、オーケストラと対峙している。とくにハ短調の第二楽章は、ヴァイオリンとヴィオラを二人の主役とする、ドラマティックな対話劇に接近したものと言えよう。そこで示された可能性は、ウィーン時代の諸作品において、みごとに花開く事になった。》
 
そして、ウィーン時代に入る訳ですが、ここで、私たちの「キリエ ニ短調」K341について触れてみることにします。
先に記したマンハイム宮廷のカール・テオドールは、バイエルン選帝候となって、多くの楽員共々、ミュンヘンの宮廷に移っていました。1780年、このミュンヘンからの依頼を受けたオペラ「イドメーネオ」K366の作曲と上演のため、モーツァルトは勇躍、彼の地へ出発したのです。
 ところで、キリエ ニ短調に、ケッヒェルが最初に付けた番号はK341。これは前述のヴェスペレK339にきわめて近い時期に作られたと、ケッヒェルが考えたからと思われますが、後の研究者は作曲年代を、上記の「イドメーネオ」上演の時期とし、その理由を、この曲の楽器編成から、特にヴィオラとクラリネットの存在だけでも、ザルツブルグでの演奏は不可能であり、ミュンヘンの(旧マンハイムの)優秀なオーケストラを念頭において作曲されていると思われる。またザルツブルグを嫌っていたモーツァルトが、ミュンヘン宮廷に、歌劇の上演と一緒に就職の機会を狙い、教会音楽における自分の能力を示す見本としてミサ通常文の1曲を作曲したのだ、と述べています。
この魅力的な説は、19世紀の研究家O・ヤーンから20世紀のA・アインシュタインにも支持され、(K368a)と修正番号が付けられたのです。
しかし、1956年モーツァルト生誕二百年に始まった新全集の編纂を期に、全作品の見直し研究が行われた結果、この説は否定されてしまいました。元々、自筆譜が存在せず、一部、未完であった箇所が、誰かの手によって完成された可能性さえあり、上記のヤーン=アインシュタイン説も推量でしかない。ウィーン時代は教会音楽を3曲しか作らなかったという従来の固定観念を離れ、晩年、無給ではあったけれどシュテファン大聖堂の副楽長であったことも考慮すべきだし、管弦楽は充実したモーツァルトの後期の特徴を現している。
さあ、これも楽しい説ですねエ。しかし、これも推論です。となると、なんのためにミサの一曲目だけが作られたのか?ひょっとして大きなミサ曲を作るつもりだったのか?謎が増えてしまいました、けれど、あのニ短調の傑作たち、ピアノ協奏曲K466、「ドン・ジョバンニ」、そして「レクイエム」。この作品が、これらを間近に臨む位置にあるとすれば、これから湘フィルが練習を重ねる中で、それを感じとる楽しみが出来たとも考えられます。                                
                                                           (つづく)
   演奏会のソリストが決定しました>
     
              ソプラノ: 澤畑 恵美さん
                    馬原 裕子さん
              テノール: 田中 誠さん
     
  以上の皆さんです。詳しいプロフィールは、資料が届き次第またお知らせします。
お楽しみに。
 
明治公民館の駐車場ご利用について   
 
 以前からお知らせしていますように、明治公民館の駐車場利用は1団体4台までという決まりがあります。湘フィルは団員数が多いということで、多少大目に見てもらってきた経緯はありますが、決まりは決まりですので、こちらの誠意が見られないとなると規制がさらに厳しくなり、明治公民館の使用自体が許可されなくなる恐れがあります。
どうぞ事情をご理解いただき、極力車での来館を控えていただきますよう、再度お願い申し上げます。      
 
    江の島一日強化練習“打ち上げ”のご案内     
 
                 日 時 : 4月18日(日)
                     17:00 〜 19:00(多少のズレあり)
                 会 場 : 貝 作(3F)
                         藤沢市江の島1−3−20
                         5 0466−22−3759
                 会 費 :4〜5,000円(会場にて徴収)
                   申し込み〆切:4/10(土)
 
                  充実した練習のあと、眺望のすばらしい会場で美味しい磯料理と先生方を交えた
                  楽しいおしゃべりをお楽しみ下さい。
                  夕日の入りから夜景がとってもキレイ…です。 
  
           車ご利用の方へ・・・ご注意>
・ 女性センターは17:00で閉門となります。以降は他駐車場をご利用下さい。
      (公共駐車場 800円/2時間)
・ 4/15にリニューアルした江の島水族館がオープンします。休日はかなりの混雑が
  予想されますので、極力乗り合わせ下さるか、公共機関のご利用をおすすめします。
 “貝作”提携の駐車場もありますが、数が少ない為、入場できないこともあります。
    ご注意下さい。(提携駐車場「観光協会」 400円/時間)
 ♪新入団員の方にアンケートに答えていただきました。
  @湘フィルを知ったのは? A湘フィルの印象、感想。B自己PR or 湘フィルへ一言。
 
(S)U.Yさん
 
 @ 団員に誘われて
 A 大きな合唱団ですが、よく練習する
   団だと思いました。表現力豊かな
   ヴォイストレーナー、斎藤先生の
  「表現」も楽しみ(?)のひとつです。 B 人生の半分位は合唱を楽しんできました。あとどれぐらい唄えるでしょうか。久しぶりの混声を楽しみたいと思います。
(S)K.Hさん
 
 @ 団員に誘われて
 A 見学させていただいた時は、未経験の私はついて行けるのか> と言う
   不安を大きく感じました。が、先生方や団員の皆さんの明るく、優しい雰囲気に
   、勇気をいただきました。
入団出来て幸せに思っております。
 B いつも先生がおっしゃるような
   品のある声に一歩でも近づけるよ
  うに頑張っていきたいと思います=
 
(B)S.Kさん
 
 @ 前に入団していたので。
 A オーケストラと共に合唱できるのが魅力です。
 B 足を引っ張らないよう頑張ります。
 
  (A)H.Mさん
 
 @ 「スタバト・マーテル」の演奏会を 聴いて & HPを見て。
 @ 先生方の指導がとても素晴らしく、 運営体制もしっかりしていると感じました。
   練習も充実していて効率的です。この内容なら、団費4,000円はお得かも…。
 B 入団時に役員(委員)の方のお名前等書かれた組織図を頂けると有難いです。
讃歌はとても素敵な曲なので是非歌ってみたいと思いました。曲に
ふさわしい歌声に近づけるようがんばりたいと思います。歌以外
に好きなことは“おいしいもの”を食べることです。
 
(T)M.Tさん
 
 @ 団員に誘われて
 A すごい練習量で驚いています。 ついていけるか…と。難しい曲がだんだんできあがる慶びを感じます。   ピア    ノがすばらしい。
 A 原語の発音と意味を教えていただければと思います。
 
           2004年 4月&5月の練習日程
3月  27日(土)  玉縄学習センター    18:15 〜 21:00
4月   3日(土)  玉縄学習センター    18:15 〜 21:00
     10日(土)  明治公民館      ☆ 18:15 〜 21:00
     17日(土)  明治公民館      ☆ 18:15 〜 21:00
     18日(日)  かながわ女性センター(江の島)ホール9:45集合
            10:00 〜 10:30 発 声
            10:30 〜 12:00 全体練習
            12:00 〜 13:30 昼 食
            13:30 〜 15:00 分奏(男声は2F視聴覚室
            15:00 〜 16:30 全体練習
            ◇昼食は各自ご用意下さい。食事室は2F研修室です。
             センター内、また周辺にもレストラン等はあります。
             練習後に‘打ち上げ’を予定しています。自由参加。
              かながわ女性センターの地図は別頁参照
            
     24日(土)  玉縄学習センター   18:15 〜 21:00
5月   1日(土)  玉縄学習センター  18:15 〜 21:00
      8日(土)  栄公会堂 (ホール)  18:15 〜 21:00*
     15日(土)  明治公民館     ☆ 18:15 〜 21:00
     22日(土)  明治公民館     ☆ 18:15 〜 21:00
     29日(土)  栄公会堂 (ホール)  18:15 〜 21:00*
 
   グループ・ヴォイトレがあります。(17:00 〜 18:00 )
     15日(土)のみ17:40〜。  パートリーダーからの連絡にご注意下さい。
   * 21:30までの延長練習の可能性がありますのでご承知おき願います。