さあ、シナリオを書くぞ。
さあ、書くぞ、書くぞ、書くぞ!
始める前にキャラクターのおさらいをしておこう!
0.佐野洋平(さの・ようへい)
主人公。帰宅部。美紀とは幼なじみ。何もせずぷらぷらしている。己の適性も未来もわからない宙づりの学生。
勉強熱心で活動的。帰宅部の主人公をふがいなく思っている。
1.高野美紀(たかの・みき)
ヒロイン。主人公の幼なじみ。柔道部。勉強熱心で活動的。帰宅部の主人公をふがいなく思っている。
2.神楽咲美(かぐら・さくみ)
森川学園3年。美紀の親友でバスケ部所属。活発で言葉より先に手が出る子。恋愛にはうとい。
3.エミリー・マークライツ
親(軍人)の配属で日本(森川学園)にやってくる。不慣れな日本語を話す。父親から格闘術のイロハを教わっており、たまに主人公を実験台にする。(悪気なし)性については開放的(非処女)。
4.今井章(いまい・あきら)
主人公の友人。普通の少年。主人公からの相談に対してはぽつりと警句的にもらす。音楽に萌えている。後に咲美に……。
5.皆本純(みなもと・じゅん)
主人公の同級生。
設定はすべて輝龍さんの通り(このキャラはいけてる! 設定がしっかりしているので大切にしたい。ヒロイン美紀のシナリオの鍵!)
6.草薙京介(くさなぎ・きょうすけ)
主人公のライバル。自分がいちば〜んという性格。護衛の女性に手を出す女たらし。エミリーに手を出そうとするが、……。
ファイルは開いたか?
――開いた?
よし! 行け!
――おお!
1時間後
――できた!
おう、見せてみろ。
【美紀】「洋平く〜〜〜ん!」
【洋平】「あ、美紀ちゃん」
【美紀】「おはよう」
【洋平】「おはよう」
【美紀】「今日早いのね。どうしたの」
【洋平】「いや、なんとなく目が覚めたから。美紀ちゃんは」
【美紀】「朝練」
【洋平】「柔道部だったっけ? レギュラーなんだよな、美紀ちゃんって。えらいよなあ。真面目だよなあ」
【美紀】「洋平くんが不真面目すぎるのよ」
【洋平】「ははは……」
【美紀】「宿題やってきた?」
【洋平】「なんの宿題」
【美紀】「もう忘れてる。洋平くんってたるんでるのよねえ」
【洋平】「美紀ちゃんも胸たるんでるんじゃない」
【美紀】「いや〜ん、ばか〜〜ん! えっち〜〜〜〜!」
【洋平】「あはははは。おっといけない、早く学校行かないと遅刻しちまう」
◆書き出しはヴィジュアルから考えよう
おい。
――なに? よく出来てるでしょ。ほめてほめて。
ばかも〜〜〜ん!
――うわあ、なんだよお。
おまえ、気づかんのか? CGの指示がないではないか! な〜んにもグラフィック出さんとプレイヤーにシナリオ見せる気か?
――うぐ。いや、その、あとでいいかなあって……。
ばかたれ!
シナリオを書くとは、ある意味シーンを創出することであ〜る!
CGの指示をせずしてシナリオとは言えん! そんなやつはシナリオ書くのやめろ!
――ぐすん。しどい。
しどいのはおまえだ〜〜! シナリオを放棄するな!
──うひぃっ!
よいか。
こいつは冒頭のシーンなのだぞ。大切な冒頭なんだぞ。どんな絵を最初に見せるんだ? どんな絵でゲームをスタートさせるんだ?
映画でも最初のシーンは重要だろ。漫画でもそうだ。小説でもそうだ。おおよそ物語と名のつくもので、冒頭のシーンをないがしろにしてよいものはな〜い!
――わ、わかったよ。書くよ。
よし。すぐやれ。
◆CG番号は必ず半角アルファベットと半角数字で!
――でも、CGの指示ってどうすればいいの?
■■■G000 洋平を殴る美紀
としておけばよいだろう。こいつは例えばの例だ。他にも表記の方法はある。要はぱっと見、CG表示だってわかればいいのだ。
――■■■ってなに?
逆に聞くが、おまえ、のべ200個を越えるCG、あとでどうやって探すわけ?
――逐次。
ばかもの!
文明の利器を使え! 「検索」機能を使用するのだ!
――ケンサクって、 森田健作?
バッキ〜〜〜〜!
──ぐっはあぁ……
くだらぬだじゃれを言うなあ! 竹刀でどつかれたいか〜〜〜!
――じょ、冗談ですっ。
よかろう。
■■■としておくと、あとで「■■■G」となってる部分だけを検索すれば、CG表示を順次たどっていけて便利なのだ。別に「●」でもいいんだけどね。
――なるほど。
あと、CG番号は必ず半角を使うこと!
――全角はだめなの?
ならぬ! 絶対ならぬ!
プログラムのときって、半角数字と半角アルファベットでCGとかPCMとかSEとか管理してんのよ。全角なんかでやっちまったらバグの元になる。
さらに1時間後
――できたよ。
見せてみろ。
■■■G030 通学路(背景CG)
【美紀】「洋平く〜〜〜ん!」
■■■G000 美紀制服(背景CGに重ね処理)
【洋平】「あ、美紀ちゃん」
【美紀】「おはよう」
【洋平】「おはよう」
【美紀】「今日早いのね。どうしたの」
【洋平】「いや、なんとなく目が覚めたから。美紀ちゃんは」
【美紀】「朝練」
【洋平】「柔道部だったっけ? レギュラーなんだよな、美紀ちゃんって。えらいよなあ。真面目だよなあ」
【美紀】「洋平くんが不真面目すぎるのよ」
【洋平】「ははは……」
【美紀】「宿題やってきた?」
【洋平】「なんの宿題」
【美紀】「もう忘れてる。洋平くんってたるんでるのよねえ」
【洋平】「美紀ちゃんも胸たるんでるんじゃない」
【美紀】「いや〜ん、ばか〜〜ん! えっち〜〜〜〜!」
【洋平】「あはははは。おっといけない、早く学校行かないと遅刻しちまう」
◆最初の会話でキャラの印象が決まる!
――どう?
まあ、絵としては可もなく不可もなしというところだな。書き方としてはよい。
しかし。
――しかし?
シナリオが陳腐だ。
――え? なんで? ぼくちんの処女作だよ。結構自信あるのになあ。
このうつけ者!
おまえ、設定がわかっておるのか!
――設定?
美紀は、幼なじみだよな。
――うん。
では、会話を見てやろうか。
【美紀】「洋平く〜〜〜ん!」
【洋平】「あ、美紀ちゃん」
【美紀】「おはよう」
【洋平】「おはよう」
【美紀】「今日早いのね。どうしたの」
【洋平】「いや、なんとなく目が覚めたから。美紀ちゃんは」
――問題ないじゃん。
どあほ!
美紀と洋平は幼なじみだぞ! 幼なじみが、なぜ「洋平く〜ん」「あ、美紀ちゃん」なんて気恥ずかしい会話を交わすんじゃ? 他人じゃねえんだぞ、他人じゃ。設定を忘れるな! 人間関係と人間的距離は会話に反映させろ!
――うっ。
女の子が幼なじみの相手に向かって「くん」なぞつけるか! 呼び捨てだろ、呼び捨て。
――うぐ。
「〜のね」なんてのも幼なじみ相手に言わんぞ。「〜だね」だろうが。観察不足だ。
――うぐぐ。
洋平も洋平だ。幼なじみ相手に「ちゃん」なんかつけるか。「あ」なんて気恥ずかしいこと言うか。
――うぐぐぐぐぐ。
主人公があるキャラクターと初めてしゃべるときってのは、すげえ大切なのだ。その会話で女の子のタイプと女の子への距離がわかるのだ。
――ううむ……。
おまえの書いたやつでは、ただのクラスメイトだぞ。しかも、洋平は美紀に対して「女の子」って意識しておる。どこが幼なじみだ。
――わかったよう。でも、どうすればいいの?
がはは、見せてやろう。
手直し例
【美紀】「洋平〜〜!」
【洋平】「おう、美紀か」
【美紀】「今日早いじゃん。どうしたの」
【洋平】「いや、なんとなく目が覚めたから。おまえは」
――わ。活発。
呼び捨てにすることで人間的な距離の近さが出ておるだろう。言葉は関係の深さ・二人の距離を表すのだ。
――ううむ。奥が深い。
◆説明口調になるな!
では、続きを見ていこう。
【美紀】「朝練」
【洋平】「柔道部だったっけ? レギュラーなんだよな、美紀ちゃんって。えらいよなあ。真面目だよなあ」
【美紀】「洋平くんが不真面目すぎるのよ」
【洋平】「ははは……」
【美紀】「宿題やってきた?」
【洋平】「なんの宿題」
【美紀】「もう忘れてる。洋平くんってたるんでるのよねえ」
【洋平】「美紀ちゃんも胸たるんでるんじゃない」
【美紀】「いや〜ん、ばか〜〜ん! えっち〜〜〜〜!」
【洋平】「あはははは。おっといけない、早く学校行かないと遅刻しちまう」
おい。一言言っていいか。
――なに?
幼なじみだろ? 洋平って、当然美紀が柔道部にいること知ってるよな。
――うん。
なのに、「柔道部だったっけ?」なんて言うか?
――うぐ。
うつけ者!
彼女が柔道部にいることをプレイヤーに知らせるために、わざと台詞を言わせたことが見え見えではないか!
――ひい、お許しを。
説明口調を入れるな! やるならわからんようにうまくやれ!
――ひいい。
「不真面目すぎるのよ」もいかんな。なんで「のよ」なんて幼なじみ相手に言うんだ?
「不真面目すぎるんだよ」だろ。「たるんでるのよねえ」もそうだ。「たるんでるんだよなあ」だろう。
――うぐぐぐ。
あと。
美紀って真面目だよな。
――うん。
真面目なやつが性的ジョークに身をひねって反応するのか?
――うぐ。
「いや〜ん、ばか〜〜ん! えっち〜〜〜〜!」って、そんなこと言う真面目なやつがいるか! 性格と台詞が矛盾しとるだろう!
――サービスのつもりで……。
そういうのは別のキャラクターでやれ!
シーンのために勝手にキャラクターの性格をねじ曲げるな!
――ひいい……怖いよお。
あと、もう一つ。
――ぎくり。
朝早いね、なんて言っとるくせに、なんで「早く行かないと遅刻」するんだ?
――あ。
矛盾しとるぞ。
――うぐぐ……。
◆冒頭が大切な理由
よいか。
冒頭というのは、まずプレイヤーに絵を見せるという意味で大切なのだ。
たとえば、『ワーズワース』。
98版・TOWNS版では「空」になっておった。あとでこの意味がわかるのだが、ストーリー性が高いものの場合、きわめつけ冒頭のCGは大切だ。
冒頭のシーンではどういう絵でゲームをスタートするのかを考えること。
普通っぽく日常的にいきたいのなら、日常の背景からでもかまわん。
――うん。
次、冒頭が大切な理由2つめ。
たいてい、冒頭のシーンではキャラクターとの会話が入る。その会話で、そのキャラクターとの距離・関係の深さがわかってしまうのだ。
――うん。
真面目な先生が、しょっぱなから「は〜〜い、わたしのプリチーな生徒諸君〜〜! げ〜〜んき〜〜〜! あそこもっこり勃ってる〜〜〜!」なんて言ってみろ。
どこが真面目なんだ、どこが。
――100%飛んでる。
そうだろう。全然設定と違うキャラになってしまう。するとだな、せっかくデザインしてもらった絵と合わなくなってしまうのだ。
――さすがにそれはまずいか……。
キャラの第一印象を決めるという点で、冒頭は大切なのだ。
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