補講第1回 「CGの枚数ってあとで意識したらだめなの?」


 つ、つつつつつ、ついに第一回目の質問が来た〜〜〜〜っ!

 その勇気ある人は、輝龍さんである! みなさん、拍手を!

 おかげでFAQが誕生です。このFAQは補講のようなものにしたいと思いま〜す。

 では、早速質問行ってみよう!

> テーマの次にCG枚数を意識しなさいということなのですが、そうなると
> CG枚数に気を取られ、全体的にシナリオが浅くなるのではないのでしょうか?
> 全体的なシナリオを作成し、印象的なシーンをCGで起こすというやり方では
> まずいのでしょうか?

 いい質問です! この問いに対する答えには、シナリオのエッセンスが含まれている。

 お答えする前に整理しておきましょう。

 輝龍さんのご質問は、

(1)テーマの次にCG枚数を意識すると、シナリオが浅くなるのでは?

(2)全体的なシナリオを作成してから印象的なシーンをCGで起こす方法はどうか?

 この2つですね。


◆CG枚数を意識してしまうと、シナリオが浅くなる?

 1キャラに対して10〜15枚がイベントCG(エッチも非エッチも含む)としてある場合は、浅いシナリオにはなりません。深みのあるシナリオが書けます。

 でも、逆にイベントCGの枚数が少なかった場合。

 具体的に言えば、1キャラ6枚以下の場合、シナリオは浅くなっちゃうでしょうね。

 イベントCGがあまりにも限定されてしまうと、ドラマもシーンもこしらえきれず、薄っぺらい話になってしまうのです。

 たとえば、『Fresh!』を見てみましょう。舞も、琴も、ゆずかも、10枚以上ありますね。『リエゾン』でも、ヒロイン2人には10枚以上のイベントCGが用意されています。彼女たちにはそれなりのシナリオが用意されています。

 でも、『リエゾン』の詩織。

 『ほたる』のカオル。

 『Fresh!』のせせり先生。

 彼女たちはCGが少ないです。詩織は3枚程度、カオルは5枚、せせりも5枚。

 もちろん、彼女たちのシナリオにはそれなりの味があります。でも、深みのある感動系のお話かというと、違う。枚数が少ないと、深みをつけることが出来ないのです。

 シナリオの深さを決めるのは、イベントCGの枚数です。

 ゲーム内の時間とも合わせて考えると、深みのあるシナリオを書くには10枚以上が目安です。

 もちろん、多ければ多いほどいいってわけじゃないですよ。30枚も40枚もあっては、お話がイベントのオンパレードになってぐっちゃぐちゃ、「ごちゃごちゃあった」話になってしまいます。ストーリーを味わっているのではなく、圧倒的なボリュームのイベントを吸収させられている気がします。

 こうなると悲惨です。何十種類も料理を腹に詰め込まれて、心から満足できますか? 料理を楽しめますか?

 「いっぱい食ったけど、なんかわからん」

 料理ならそうなります。ゲームも同じです。

 総枚数が120〜150枚クラスのゲームでは、多くても20枚以内に留めておくほうがよいでしょう。イベントのオンパレードにならなくてすみます。

 ちなみに、実際にシナリオを書く場合には「イベントCG10〜15枚」みたいに幅を持たせると、作るときに窮屈さを感じなくてすみます。


◆シナリオを作成してから印象的なシーンをCGで起こしたほうがいい?

 いい質問です。この問いに対する答えには、シナリオを書くという行為のエッセンスが詰まっています。

●理論的な問題

 シナリオを書くというのは、CGでストーリーを見せるということです。つまり、シナリオを書くことは、ヴィジュアルの創造なんですね。

 みなさんご存じのように、美少女ゲームというのは、常にCGが表示されています。画面がになるのは、主人公が倒れたときとか、フェードアウトのときのように、ほんの少ししかありません。使われてせいぜいコンマ五秒です。

 ですから、常に「どんなCGを出そう」ということを考えながらシナリオを書かなければいけないんです。

 シーン(CG)を作ることとシナリオを書くことって同じなんです。いっしょにやるもんなんですよ。

 だから、「あとでCGを起こす」「あとでCGを考える」っていうことは、シナリオのエッセンスたる「ヴィジュアルの創造」を放棄することになっちゃうんですよね。ある意味で「あとでCGを考える」というのは、小説を映画化するための作業です。それはシナリオではありません

●実際的な問題

 さらにこんな問題もあります。

 シナリオを書きながら「今何枚になってるかな?」って確認しないと、枚数がわからなくなるんですよ。

 だって、たとえば150枚のCGのゲームを作る場合。いくつものシナリオのなかにCGが150枚も転がってるんですよ。しかも、それはのべ換算ではない場合の話。のべ換算にすると、200、300は超えるでしょう。

 数百のCGの海の中、重複している部分を整理しながら、ひとつも間違えずに150個に分類・番号つけするとなると……うぎゃあ! もう大変です。

 もう少し好意的に考えて、イベントCG50枚だけを捜すとしても、カウントしないで作ってしまうとその倍近くの100枚は存在することになってしまう。

 それを連続で集中的にやるつらさ、しんどさといったら……うぎゃあ……。

 さらに。

 あとでCGを起こそうとすると、何枚かは絶対削らなくてはならなくなります。すると、そのシーン自体も削らなきゃならないんですよ。

 うご〜〜〜、つらい〜〜〜っ!

 削るとどうなるでしょう。

 前後関係狂います

 そのシーンが他のシーンにもつながっていたりすると最悪です。いもづる式にシナリオを直す箇所が増えてしまいます。バグの温床です。シナリオも損なわれます。これは、あまり上手な方法とは言えません。

●結論

 「シナリオを完成させてからCGを起こす」というのは、勧められません

●助言

 イベント枚数を決めるとき、がっちり決めることはないですよ。

 幅を持たせましょう。「12〜15枚」とかね。で、4人いるなら4人で合わせて50枚になればいい。そうやってやりくりするんです。一人16
に行っちゃったから、別の子を減らそう、とかね。なんだか家計を工面しているみたいだなあ。

 和泉も『Fresh!』でやってました。せせりのイベントが少ないのはしわ寄せが来ちゃったからなのよ、グスン。


◆和泉の経験

 実は、和泉も似たような方法でやったことがあります。

 『Fresh!』のゆずかのシナリオ。彼女については枚数を換算せず、自分でもイベントCGが何枚なのかわからないままシナリオを書き進めました。

 もちろん、シナリオを書きながらCGの指示はしましたよ。「Gゆずか公園で悲しむ」とかね。ヴィジュアルの創造は放棄しなかった。でも、枚数はカウントしなかった

 で。

 いざ、完成してみたら、CG20枚。他のキャラは10枚ほどだから、多すぎ。

 削れなかったあ……。難しかったんですよ。CGとストーリーのつながりが強くて、ほとんど1枚も削れなかった。

 それで、出来上がったゆずかのシナリオが最高だったかというと、ちゃんとCG枚数を決めて書いた「舞」や「京香」のほうが、ずっと密度が高かった

 あとでCGを起こす、あるいはCG換算を後回しにすると、かえってシナリオが薄まるんです。変に削ってシナリオが中途半端になったりね。多すぎて話の締まりがなくなったり、テンポが悪くなったりね。

 味噌汁の具と同じです。多すぎると何がなんだかわからなくなる。

 枚数がこれだけしかない。そのなかでどれだけのドラマを作るか。

 そこに、傑作が生まれる

 限られた枚数のなかでどうやってドラマを書くか、もがく。それが大切なんです。そのほうがお話の密度って高くなるんですよ。

ご質問等はこちら

次の補講に進む
前の補講に戻る
講義一覧に戻る
トップページに戻る